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  • ビジネスモデルをつかむ~未来予想図を描くⅠ~

2014.01.31

[企業審査人シリーズvol.18]

「毎日、危ない会社を見分けて取引を止めたり縮小したりする仕事が多いですけど、中谷さんは、いい会社を見分けて取引を後押しすることも大事にしたいって言ってましたよね?」

 5回目の個別レクチャーのとき、青山は課長の中谷に聞いた。
 「そうよ。そういう動きもやっていないわけじゃないけど、まだまだね」中谷はそう答えた後、青山に質問した。「青山はいい会社ってどういう会社だと思う?」
 「そうですね。まずはお金を持ってる会社ですね」
 「今持っていればいいの?」
 「いや、稼ぎを続けることが大事ですよね」
 「そうよね。つまり儲けを続けられるビジネスをしているかどうか、ということよね」

 「それって何で見ればわかるんでしょうね?」青山の右斜め上に「?」が浮かんでいる。
 中谷は答えを用意していたかのように、淀みなく答えた。
 「大きく2つあると思うけど、まずベースとなるのはその会社のビジネスモデルをしっかり把握することじゃないかな。その会社がどういう市場を相手にどういう商売を営んで、何を得意として商売を続けてるのか、というところを正確につかまなきゃ」
 「それって当たり前のことですけど、難しいですよね。僕も営業のときはよくわからないときがありました。工務店と一口に言っても、公共事業がメインのところと住宅専門のところじゃぜんぜん違いますし」
 「住宅だって注文住宅とマンションじゃ、違うしね。東京の会社と埼玉の会社でもマーケットが違う。施工技術に強い会社と監理に秀でた会社でも違うわよね」
 「そうやって見ると、なかなか面白いですね」青山は知的な刺激に思わず唸った。

いい会社を見抜くとは

 「焦付きを防ぐ」という旧来の審査の使命に特化すれば、「危ない会社を見落とさない」というところに審査の力点が置かれ、資金繰りや財務といった部分に焦点を当てがちです。しかし中谷が目指している「将来も安定的な収益を確保できる取引先を見分ける」となると、見るべきところが多少変わってきます。

 会社の将来性を見極める上でまず重要になるのは、中谷が言うようにその会社のビジネスモデルを正しくおさえることです。例えばメーカーとひとくちに言っても、自社で製造設備を持っている企業もあれば、製造はすべて外注に委託して企画力と生産管理を主体としている企業もあります。
 前者であれば製造ノウハウや工程管理、技術力にノウハウがあり、後者の場合は企画力や生産管理能力にノウハウがあることになります。
 またリスクという点で見ても、前者であれば設備投資の成功・失敗や技術者の確保状況、工場の労務管理などがリスク要因となり、後者の場合は企画者の育成や協力会社の管理がリスク要因となります。

取引先の生命線を見抜く

 こうしたことは、中谷が言うようにその会社のホームページを見ただけではわらかないことが多いものです。アパレルや化粧品、健康食品などのメーカーはホームページで自社の商材をアピールするが多い半面、生産体制についてはさほど触れていません。工場の写真が掲載されていても、実は協力会社の工場だった、といったことはよくあることです。

 業態だけでなく、「何で儲けているか」という部分をつかむことがさらに重要です。例えば食品加工会社であれば、得意とする加工技術を活かして競争優位性を持っている分野では儲かっていても、他は薄利であったり赤字であったりします。その会社の業績はこうした凹凸の合計になるわけですが、業績の先行きはひとえに競争力があって収益に寄与する分野のウエイトを拡大できるか否かにかかっています。したがって、売上高は総額だけでなく事業別の構成比率をつかみ、どの分野がその会社の収益の生命線を握っているのかをおさえることが、その会社の将来性を見極める上で極めて重要になるのです。

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