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  • 登記・役員・大株主その4【その他の情報】~報告書の読み解き方-4~

2014.06.20

[企業審査人シリーズvol.38]

「登記のページって、役員と資本金と株主と・・・決算公告URLか。あまり見たことがないですね」 調査会社の横田による、青山への報告書レクチャーが続いている。
「商業登記に決算公告や電子公告を行うURLが登記されている場合に、そのURLを掲載していますけど、電子公告を行う中小企業はまだ稀です。公告している会社は情報開示姿勢を評価できますよね」
「免許番号も載っていますが、あれも参考として見る程度でしょうか」
「工事業者や人材派遣業等、事業を行う上で許認可が必要な業種について、許認可の種類や番号を掲載しています。世の中には飲食店の営業許可とか、許認可番号は山ほどあり、とてもすべてを把握できないので、所轄官庁で資料を閲覧できるといったものを主体に掲載しています。最近はISOやプライバシーマークなどの認証も、取材しうる範囲で掲載していますね」
「与信管理ということでは、あまり使えるイメージがないですが・・・」と青山がぼんやりとした顔をした。
「そうですね。直結はしませんが、本業の裏付けにはなる情報だと思いますよ」 
 「そういえば、債権譲渡登記についてもこのページですね」青山が報告書の見本を見ながら言った。
 「債権譲渡登記は与信管理上、重要な情報ですが、これは説明が必要ですか?」横田が聞くと、
 「いや、これは課長の中谷からかなり丁寧に教えてもらったので、大丈夫だと思います」と青山は答えた。
「じゃあ詳細は省きますが、債権譲渡登記・質権設定登記・動産譲渡登記については、お客さまから確認を指示された場合と、過去の調査で登記があった場合だけ登記を確認する形になっています。それ以外だと『未確認』となるので、新規取引とか調査先の信用状態が思わしくない場合は、調査を依頼されるときに必ず取得を指示してくださいね。債権譲渡登記があるからといって信用に問題があるとは限らないので、譲受人が誰なのか、反復的なものか否かといった、中身の確認が大事ですよ」と横田が補足した。
 「はい。かなりいろいろお話をうかがいましたが、これで全部でしたっけ?」青山が報告書見本に目を落とす。
「保険加入状況があります。火災保険・企業年金保険・自動車保険などの加入状況を取材して掲載していますが、強いて言えば『リスクに対する備えをしているか』を見る材料にはなります」 

公告と許認可番号

 「公告」とは政府や自治体が広く一般に知らしめることですが、株式会社は法令上の義務に基づいて合併や決算の公告を行います。「どこに公告するか」は商業登記の登記事項であり、「官報」または「日刊新聞(地方紙を含む)」を用いるのが一般的で、掲載料の安い官報を選択している会社が多いようです。公告については平成17年の商法改正によりインターネット上のホームページに公告することが認められており、これが電子公告ですが、官報や日刊新聞を含め、決算公告を行う企業はまだまだ少ないのが実情です。
 許認可はその会社の事業運営の裏付材料であり、建設業であれば許認可の種類によって営業エリアや受注規模・範囲が、宅建業であれば更新回数(カッコ内の数字)によって業歴がわかります。また建設業や宅建業、建設コンサルタント・測量業などでは所轄官庁で決算資料等を閲覧できるので、許可番号は閲覧申請時にも役立つ情報です。
 許認可があるから信用があるとも言えませんが、与信管理上はISO認証やプライバシーマークの取得が企業のコンプライアンスや事業管理に対する姿勢や受注競争力を示していると見て、目利きをしましょう。
 なお建設業許可については国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可があり、二つ以上の都道府県に営業所を設置する場合は国土交通大臣許可が必要です。また(般)は一般建設業、(特)は特定建設業を指し、発注者から直接請け負った1件の工事代金につき3,000万円(建築工事業では4,500万円)以上の下請契約を締結する場合は特定建設業の許可が必要です。
 ISO認証は国際標準化機構(ISO)による認証であり、ISO9001(品質管理及び品質保証)、ISO27001(情報セキュリティマネジメント)、ISO20000(ITサービスマネジメント)、ISO22000(食品安全マネジメント)、ISO14001(環境マネジメント)などがあります。昨今は取得が取引要件となることも多いため、取得する企業が増えていますが、一度取得したものの更新しない会社も多いので、ホームページに掲載があっても現況を確認する必要があるでしょう。

債権譲渡登記のおさらい

 債権譲渡登記についてはこのコラムでも触れたことがあるので、おさらいにとどめますが、債権流動化を目的として、第三者への対抗要件を具備できるよう設けられた制度です。当該債権の譲受人や金額が登記され、かつては商業登記上に掲載されていましたが、現在は情報開示が制限され、第三者は譲渡人の本店管轄法務局にて「現在事項証明書(債権譲渡登記事項概要ファイル)」と指定して閲覧申請します。ただ、閲覧申請をしても、債権譲渡登記がない場合はその旨、登記がある場合でも譲受人の名前程度の情報しか入手できません。「債権譲渡登記があったら危ない!」との誤解がありますが、実際は資金繰りの一環として反復利用している場合と、取引先の債権保全として利用されている場合があり、数としては前者のほうが断然多いと言えます。
 とくに金融機関・ノンバンクは債権流動化の一環として反復利用することが多く、これらは信用上の危険信号ではありません。反復利用ではなくスポットで登記している場合や、会社の経営が悪化している会社が登記している場合は、内容を精査しましょう。 

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調査報告書の読み解き方コラムシリーズ

役員・大株主と企業との関係を捉える<登記・役員・大株主>
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