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  • 代表者その1【プロフィール情報】~報告書の読み解き方-8~

2014.08.08

[企業審査人シリーズvol.45]

調査会社・横田によるレクチャーは代表者のページに進んだ。

「ヒト・モノ・カネって言いますけど、ヒトは大きいですよね」
「そうですよ。中小零細企業の命運は社長が握っています。ところで、この代表者のページに載る人が誰か、もうわかっていますね?」と横田が質問した。役員のところで説明したはずである。
「はい。代表取締役、でしたね。社長となっていても、代表権がある人のほうが優先だと聞きました」
「正解です。青山さんはこのページで、何をよく見ますか?」
「審査に来たばかりの頃は、それまでの習性というか、出身校や出身地、生年月日から見ていましたね」
「それは営業の習性ですね。同窓・同郷は関係作りに役立ちますからね」と横田は笑ったあと、「生年月日は昨今の事業承継の問題に絡むので、とても重要ですよ」と付け足した。 
「確かに最近、事業承継という言葉はよく聞きますね。やはり高齢化社会だからですかね」
「そうです。同族企業では代表者が高齢の場合、後継者の有無を確認する必要がありますね。仮に後継者がいても、経営者の交代は営業方針や取引関係の見直しなど、変化が起こるきっかけになりますから、どちらにしても経営者の交代というのは取引先の管理において重要な意味を持ちます」
「社長が若い場合はそういう心配はないですけど・・・」と若い青山が言った。
「若い経営者の場合は、逆に経営経験の少なさをどう見るかというのが重要です。若い経営者の活力が経済を動かしている側面もあるのですから、若さを一概にマイナス評価すべきではありませんが、景気の波風の中で逆境を乗り越えてきた経験が、経営者の力量になるのも事実です。中小企業の力量は経営者の力量とイコールですから、その見極めはやはり重要です」

代表の現住所

「代表者の現住所は、よく情報がとれるなあと思っていつも見ています」
「代表者の住所は商業登記事項でもあり、公な情報という側面があります。ただ、引っ越した後に登記の情報を更新していないとか、現住所を公開したくなくて登記上は会社の住所を掲載している、といったケースもあります。現住所と商業登記上の住所が違うときは、自宅付記欄に説明するようにしています」
「たまに代表者の自宅と会社が通勤できないと思うくらい離れている場合がありますね」
「東京の大会社から地方の生産子会社の社長になって赴任した、といったケースはそうですね。東京の自宅を現住所としているような場合です。ただ、そういう事情ではなくて、社長がほとんど現地に顔を出さず、他の実権者が仕切っているというような場合は注意を払ったほうがよいと思います」
「自宅については、所有者とか面積が書いてありますが、ここは何を読み取るべきでしょうか」
「自宅の所有状況は基本的には資産背景を計る情報ですね。個人としての蓄財があると、いざというときに会社にお金を入れることができますし。ただ賃借の場合も住所や面積は参考になることがありますよ。まだ小さいベンチャー企業の社長の住んでいるマンションだけ立派、といったことも情報になります」
「なるほど。六本木の高層マンションとかですね。一生縁がなさそうだな・・・」と、青山は遠い目をした。  

代表の自宅から見えること

 代表の自宅については所有状況と不動産登記の確認・未確認をマーキングで示し、自己所有や社有、関係者所有で不動産登記を閲覧している場合を中心に、面積・所有者を掲載しています。自宅以外に個人所有の不動産が判明している場合は、その旨を付記に掲載することがあります。
 横田が説明したように、代表者の自宅所有状況は、主に担保資産の有無や個人資産の保有状況を見る材料となりますが、賃借の場合も住所や面積によって代表者の資産状況や経営姿勢を窺い知ることができます。都内一等地の高級マンションを借りているといった場合は、会社の格がある、羽振りが良いという見方ができる一方、役員報酬による社外流出が多い、自己顕示欲が強い、という見方もできます。逆にアパートの一室といった場合も、経営が苦しいと見ることができる一方、住まいに執着がなく「清貧」を旨としている、という場合もないとは言えません。複合的な分析が必要です。 

後継者と事業承継問題

 会話の中には登場しませんでしたが、「後継者」という項目には、後継者の存在を「いる(誰)」「未定」「いない」「未詳」の4パターンで掲載しています。ヒアリングに基づいていますが、「未定」と「いない」の判別は難しく、「いない」については調査先が認めなければマーキングしづらい事情もあるため、実態としては「未詳」の中に「いない」ケースが相当数含まれていると考えてよいでしょう。
 事業承継の問題はもはや高齢化先進国・日本の重要な経営課題です。昨今、廃業が「隠れ倒産」などと言われることもあるようですが、その背景には事業承継の問題があります。自分の代で商売を畳んでしまおう、という経営者が多いのです。
 後継者不在と倒産が頭の中で結びつかない方もいらっしゃるかもしれませんが、中小企業においてはすぐに商売を畳める資金力を持っている会社は少なく、借入金返済のために事業を継続せざるをえないという会社も数多くあります。
 こうした会社の経営者に「もしも」のことがあった場合、後継指名による混乱や内紛、相続問題の発生など、企業経営が揺らぐ可能性があります。仮にM&Aで他社が受け皿となっても、取引先にとっては経営方針に変化やそれによる取引打ち切りなど、一定のリスクが生じます。代表者の年齢と後継者の有無を確認し、気になる場合は営業パーソンを通じてモニタリングしましょう。 

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