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  • 銀行取引・資金現況その4【運転資金分析とは】~報告書の読み解き方-20~

2014.11.07

[企業審査人シリーズvol.58]

「あれ?さっき、マーキングの『資金需要動向』を飛ばしてしまいました」と、青山が項目を指さした。
 「そうでしたね。そこは、事業拡大のための設備投資とか、売上の増加に伴う運転資金需要といったものを『前向き』、不良在庫負担や赤字補填といったものを『後ろ向き』として、マーキングしています」
 「資金繰りって、自分が経営者じゃないからか、経理の知識がないからなのか、まだぼんやりとしかわかっていない気がします。資金需要というのも、人に説明できるほどわかっていないような・・・」
 「青山さんは、決算書付きの調査報告書に載っている『運転資金分析』を見ていますか?」
 「必要運転資金が載っているところでしたね。見たことがある・・・程度です」
 「必要運転資金って、どうやって計算するのかご存知ですか?」
 「売上債権に在庫を足したものから、買入債務を引いた額・・・ですよね」と青山はゆっくり答えたが、日頃疑問に思っていることを横田に聞いてみた。
 「ただ、その額をどう見るべきなのか、頭が整理できていないんです。現金預金と比べて、足りているどうかを見る・・・・というのも変ですよね?」
「なるほど、じゃあ、私が理解していることを説明しましょう。運転資金と一口に言っても、実はいろいろ見方があります。広くとらえれば、賞与資金とか決算資金、納税資金など、会社を経営するのに必要な資金を指すこともあります。しかし、ここで扱っている運転資金は、もっと狭い意味ですね。つまり、在庫を仕入れて、それを売って、入金を待って、その間の支払いを待ってもらって、というやりくりにかかる資金のことを指しています。『所要運転資金』とか、『経常運転資金』とか言われることもあります。この金額が大きいことは、商売を回すのにより多くのお金が必要である、つまり資金負担が重い、ということになるのは、わかりますよね?」
 「ええ。現金が商品になって、売掛金になって、手形になって、現金になって帰ってくるまでが長いと大変だ、というのは概念的にわかります」
 「貸借対照表の現預金というのは、そういう運転資金を負担した上で現預金がこれだけ残っている、ということを意味しているので、単純に運転資金額と現預金を比較することにあまり意味はありません。運転資金はその規模の大小とか、増減を把握することのほうが大事だと思っています」
「なるほど」と、青山がようやく深くうなずいた。

運転資金分析は資金繰りを見る材料

今回は「資金現況」の番外編として、基礎的ですが『運転資金分析』の話に脱線します。ご存知の通り、決算書が添付される報告書には、財務諸表分析の一部として運転資金分析のグラフが添付されます。
 倒産リスクを最小化する「守り」の与信管理において、取引先の資金繰りの状態は一番気になるところです。そこで、財務分析において着目されるのが運転資金分析です。会話の中に出てきたように、運転資金需要は「売上債権(受取手形+売掛金)+在庫(棚卸資産)-買入債務(支払手形+買掛金)」の式で計算されます。
 企業の販売活動は、現金で在庫を仕入れ、在庫を売って入金を待つという流れになりますが、この①現金→②在庫→③売掛金(→④受取手形→)①現金、という流れ(営業循環)は、「現金が現金になって戻ってくる」までの間、「お金を立て替えている」のと同じ状態になります。したがって、立て替え期間が短く、量が少ないほど、資金負担は軽くなります。一方、企業は在庫を仕入れるときにも、その場でお金を払うわけではありません。買掛金や支払手形という形で、支払先に支払いを猶予してもらいます。したがって、前述の「立て替えた分」から「立て替えてもらった分」を差し引いた額が、運転資金になるのです。

運転資金は負担の大小とその変化を見る

この運転資金負担は、大きいほど資金繰りが難しくなり、倒産リスクも高まるわけですが、審査においては、これが同業者に比べて過大でないか、あるいは前期に比べ増えていないか、という着眼点でチェックしましょう。
 過大な場合や増えた場合は、①回収において(長いサイトなど)不利な条件にある(になった)、②不良在庫が多い(増えた)、③支払いにおいて(信用が低く短期現金など)不利な条件に置かれている(置かれた)、という3つの理由が考えられます。①については、回収の長期化が不良債権に起因している場合があります。売掛金や受取手形を確認し、数期にわたって業界平均より多い状態が続いている場合は、表面化していない不良債権が隠れている可能性が疑われます。
 企業が運転資金需要を減らす手段としては、①回収を短期化して売上債権を減らす、②在庫を減らす、③支払いを延ばして買入債務を増やす、という3つがありますが、①は相手との力関係において、③は資金繰り悪化の対外的なシグナルとなる点において、中小企業にとっては、どちらも容易ではありません。ですから、なおさらその変化は重要なのです。
 なお運転資金分析では、上記の通り「売上債権+棚卸資産-買入債務」で運転資金を算出していますが、他に運転資金負担を減らすものとして前受金(建設業では未成工事受入金)があります(逆に前渡金は負担を増やします)。弊社の分析では技術的な制約上、これらが加味されていませんが、これらも加味することでより実態に近い分析となります。

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