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  • 現況と見通し【最新期の業績と最近の動向と見通し】~報告書の読み解き方-23~

2014.12.05

[企業審査人シリーズvol.62]

 「現況と見通し」に入った報告書のレクチャーは『最新期の業績』に進んでいる。
 「『最新期の業績』は、その時点の最新期の業績を説明している部分ですね」
 「そうです。決算が確定した最新の期の業績を、ここで説明しています。期が更新されると、この部分の内容が業績のページの『業績特記事項』に蓄積されていきます。業績は、事業内容で説明したビジネスをしていて、特色で説明したような強み・弱みを持つ会社が事業活動を営んだ結果、どういう結果がもたらされたか、を示しているものです。どんなビジネスモデルも特徴も、業績成果に照らして良否が決まることになります」
 「売上動向はやはり気になるところで、とくにその理由はいつも気になります」
 「そうですよね。調査員も、どうしてその結果になったのか、という理由をつかむように意識しています。そこでその会社にとっての需要動向や業況のトレンドがつかめれば、その会社のその後も見通しやすくなりますから」
 「利益のほうは取材状況によって、わからないこともあるようですが・・・」
 「ええ。業績数値の入手は、決算書をいただくのと同様に調査員が一番力を割くところです。把握できないといろいろ推測を重ねなければならず、お客さまをがっかりさせるのはもちろんですが、調査員にとっても時間がかかって生産的ではありません。なので、粗利益率の動きや販管費の動きを軸にしながら、額が大きい営業外損益や特別損益の中身をできるだけ具体的に把握するよう、努めています」
 「営業外損益や特別損益は、中身がわからないと気になりますよね」
 「そうです。少し前までは、多額のデリバティブ損失が倒産の引き金になったりしていましたし、そこに隠れていることをしっかり把握することは、とても重要ですよ」
 「次の『資金現況と調達力』ですが、ここは『銀行取引・資金現況』のページでだいたい説明しましたね」
 「はい。ここは飛ばしていただいていいと思います」と、青山が横田に応じた。
 「では、『最近の動向と見通し』に行きましょう。未確定の業績を占う部分なので、取材が難しいところですが、目標値や計画値がある場合はそれをベースとして、実際の進捗を多面的に聞きながら、見込みを導くようにしています。目標値や計画値の実現可能性に難がある場合は、その理由も説明するよう努めています」
 「調査員のみなさんは、見通しを書いた後で結果が出てみたら違っていた、ということもあるんでしょうね」
 「ええ、残念ながらそういうことも経験しています。そういうときは、反省しきりですよ。将来のことは不確実ですから、調査報告書というサービスは、私たちの見立てを信用していただけるか、が肝です。見立ての確実性を高めるために、売上や利益の構成要素をひとつひとつ確認していきますが、とくに利益についてはその会社のスタンスや方針が反映されるので、長年調査をしていれば、ある程度読める部分もあります」
 「見立て、と言えば、このページの最後に結論のような部分がありますね」
 「この結論の文章はそれまでに説明してきたいろんな要素を総合した結論なので、当然ながら評点との整合性を意識して書いています。ご覧になってわかると思いますが、『現状維持に支障はない』といった文末の場合、評点はたいてい51点以上ですし、『当面の動向には留意を要する』といった文末なら50点以下です。そうした結論の根拠を、SWOT分析の観点でプラス要因とマイナスの要因を整理して書くようにしていますが、その並べ方によってニュアンスを表現するといった、神経を使うところでもあります」 

業績は流れを見る

 業績のページで触れましたが、業績は期間損益の変動要因を押さえ、中長期にまたがるトレンドをつかむことが重要です。1つの決算期の変動要素を確認出来れば、それぞれがどう動いていくのかという予測もしやすくなるからです。
 そういう意味で、「最新期の動向」と「最近の動向と見通し」で説明されている「前期」と「今期」という連続する2期の動きを関連づけ、流れをつかむことが大切です。『前期は○○向けの売上が低迷したとあるが、今期は回復に転じたということか?』とか、『前期までは材料原価の高騰で粗利益率が低下していたけど、今期は一服したのかな?』とか、流れを読むことで、次の決算期の予想を立てやすくなります。 

結論の文章は評点と整合

 横田が説明したように、このページの最後の文章はその会社の信用状態に関する調査員の結論が示された部分であり、評点と整合する形で書かれています。評点の根拠がここに示されている、ということになります。
 基本的には、そこまでに書いてきたことをSWOT分析の枠組みで整理し、文章にして記述します。SWOT分析とはご存知のとおり、その企業の強みや弱み・外部環境を、内部の強み(Strength)・弱み(Weakness)、外部環境の好要因(Opportunity=機会)・悪要因(Threat=脅威)の4象限で整理する分析手法です。
 結論はできるだけすっきりと伝えたいと思っていますが、中にはプラスの要素とマイナスの要素が拮抗し、調査員の判断の迷いがそこに表れていることもあります。また、評点はその時点での信用判断ですが、評点にも「上り基調」と「下り基調」があり、とくに新しい会社の評価については、評点だけで表現できない判断がここに示されていることがあります。
 結論の記述はある程度パターン化されていますが、「この場合はどう読んだらいいのか?」といったケースがあれば、出入りしている調査員にお問い合わせください。

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