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  • 推定キャッシュフロー計算書~報告書の読み解き方-29~

2015.02.06

[企業審査人シリーズvol.70]

「最後はキャッシュフローですね。ここは3ページ・・・ありますね。キャッシュフローの考え方自体は先日教わりましたが、普段は最後の分析表しか見てないですね・・・」と青山が少しバツの悪そうな顔をしたが、小滝は興味津々という顔をしている。
 「財務諸表分析表と同じで、分析表から入るというのは手順としてよろしいかと思います。1ページ目はキャッシュフロー計算書そのもので、数字も多いですから。分析表ではどこをご覧になっていますか?」
 「上司に教わったとおり、まずは『推移分析』のところの営業CF・投資CF・財務CFの内訳を見ています。営業CFがマイナスの場合は要注意、ということですよね」
 「そうですね。本業の営業活動でお金が減っていく状態なので、2期以上続くようだと危険信号と言われます。そのページの下の分析比率のところの『営業収支比率』と『経常収支比率』が100%を割り込んでいることも、同じようにキャッシュの不足が生じる状態を示しています。営業収支と経常収支の内訳は、その前のページの『経常収支の内訳表』をご覧いただけばわかる形になっています」
 「ここの営業収支と経常収支の違いというのは、損益計算書の営業利益と経常利益の違いとイメージしておけばいいんですよね?」
 「そうです。営業収支に営業外収支を加減したものが経常収支ですから。ということは、営業収支がプラスで経常収支がマイナスというのは、どういう状態だかおわかりですか?」と、小滝が青山に質問を投げると、リラックスしていた青山は不意打ちを食ったような顔をしながら答えた。
「えっと、営業外の収支が悪いということだから、焦付があるとか為替差損が出ているとか、そういうこと?」
 「そうですね。そういうこともありますが、多いのは借入が多くて支払利息で赤字になっているケースだと思います。逆に、営業収支がマイナスで預金利息によって経常収支がプラスという会社はほとんどありません」
 小滝は笑顔だが、油断は禁物である。青山の顔が引き締まった。
 「営業CF・投資CF・財務CFの内訳を見ようと思ったら、1ページ目の『推定キャッシュフロー計算書』を見ればよいわけですね」
 「そうです。ちなみに青山さんは有価証券報告書に付いているCF計算書と弊社のCF計算書、何が違うかご存知ですか?」と、小滝がいたずらっぽい顔をして質問を畳みかけてきた。
 「えっ?上場企業の審査はあまりやらないので・・・有価証券報告書もあまり見たことがないですが・・・TDBのは決算書からの逆算、有価証券報告書のは当然自社で作成しているわけですよね」と、うろたえた青山に、小滝がやさしく答えた。
 「そうですねそれは大前提です。TDBでは『推定キャッシュフロー計算書』としているように、入手した貸借対照表や損益計算書から推定して作成します。したがって、財務諸表を2期以上連続して入手した場合のみ、分析表を作成できます。他に何かありませんか?」
 「いや・・・他には・・・」と窮地の顔をした青山には、小滝の目線が一瞬上から射るように見えた。
 「こたえは、弊社では単体で作成していますが、有価証券報告書では基本的に連結ベースで作成されている、ということです」と言う小滝に、 (何だ、そこか・・・)と青山は相手のペースに乗った自分を悔いた。 

まずは本業でキャッシュを稼げているか

 ご存知のように、貸借対照表や損益計算書は「現金の収支」を表現していません。100万円の売上があっても、売掛金になっている間は、現金は増えません。また費用についても、減価償却費のようにその期に実際の現金支出がない費用もあります。
 したがって、貸借対照表の現金預金が前期に比べて増えた・減った原因を詳らかにするために「キャッシュフロー計算書」があります。キャッシュフロー計算書ではキャッシュフロー(現金の動き)を「営業」「投資」「財務」の3つに分け、「営業」は本業の営業活動による現金の増減、「投資」は設備投資や資産売却などに伴う原因の増減、「財務」は銀行借入とその返済による現金の増減を示しています。
 ここでのキーポイントは、「営業CF」です。「営業CF」がマイナスという状態は、営業活動の結果、現金が減っていく、つまり事業をやめたほうがよいという異常な状態を指します。こういう状態が続くと企業は借入を増やしたり(=財務CF)、資産を売却したり(=投資CF)して、足りない現金を補填することになります。そして銀行が貸してくれなくなり、売るべき資産も尽きると、会社は倒産に至るのです。 

営業CFの動きは財務分析と関連

 営業CFがマイナスになる原因として多いのは、売上債権回転期間や棚卸資産回転期間の長期化です。企業は「現金で在庫を仕入れて、それを売って現金で回収する」という一連のサイクルが短いほど、効率的な資金運営ができます。焦付きが発生したり、回収期間が延びたり、あるいは売上不振によって在庫が増えたりすると、資金の循環が滞留して、現金が減少する要因となります。キャッシュフロー分析は、財務分析の回転期間などと合わせて複合的に見る必要があるわけです。 

資金調達余力の参考指標も

 なおキャッシュフロー分析には、「ICRbyCF」(Interest Coverage Ratio by Cash Flow)という指標も掲載しています。これは営業CFに支払利息・割引料を足したものを支払利息・割引料で割ったもので、倍率が高いほど借入余力がある(営業CFで支払利息等をカバーできる)ことを示す指標です。
 また「有利子負債返済能力」は、「有利子負債をフリーキャッシュフローによって何年で返済できるか」を示すものです。フリーキャッシュフローは営業CFと投資CFの合計で、年数が少ないほど借入負担が軽くなりますが、逆に50年や100年と表示されている場合、それがすぐに倒産に直結するわけではありません。年数が長い場合は、借入の中身や金融機関の支援姿勢を確認しましょう。

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