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2015.02.12

「与信」を管理するうえで、絶対に避けなければならないこと~【その1】

 安全な経営を行うには、取引先が支払い不能となる信用リスクを最小限にとどめるために、取引先の経営状況を常に把握し、与信管理を徹底する必要があります。

 この与信を管理するうえで、絶対に避けなければならないことについてお伝えしたいと思います。

「調査員時代の体験」

 私が調査員であった時に、日頃から懇意にさせて頂いている、ある建設資材卸売り会社の常務さんから相談を受けたことがあります。
 「山本さん、実は相談したいことがあるんだ」と、話しを切り出した常務からお聞きした内容は、“債権の回収遅延が続いたという過去の経緯があって、これまで取引を中止していた会社に対して、3,000万円を超える焦げ付きが発生した”というものでした。

 私としては、“なぜ取引を中止していた先に対して、それほど多額の不良債権が発生したのか?”と疑問に感じ、常務に質問しましたところ、社内で同社に対する情報の共有がなされておらず、過去の経緯を知らない営業担当者がいつの間にか同社との取引を再開させていた、ということでした。

 取引を再開させた営業担当者は、最近は実績がないもののかつては取引の事実があるため、社内上は新規取引の申請手続きを取る必要がなく、単なる取引の再開先と認識して営業行為を行ったというものでした。

ポイントは「情報の収集」と「情報の共有」

 ここでチェックすべきポイントはいくつかありますが、そもそも“過去にあった回収遅延”という重要な事実が、なぜ社内で情報として共有化されていなかったのか?・・・ということです。また、取引の再開に際しても、特別な手続きを経ることもなく、与信管理上のチェックが入らない業務フローが運用されていた、という事実です。

 常務からは、「今回は高い授業料を支払うことになったが、今後は同様の事態が起こらないように、社内の与信管理体制を見直すと共に、全社の営業担当者に対しても与信管理の教育を徹底したいので、アドバイスをして欲しい」というご相談内容でした。

 弊社が与信管理のご担当者に対して行った約3,000社のアンケートからは、“焦げ付きの発生を抑えることができており、与信管理がうまくいっている会社”に共通するのは、「情報の収集」と「情報の共有」が図られている会社、という結果が出ています。

 今回のケースでは、ポイントとなる「情報の共有」が図られておらず、また与信取引を再開する際の審査フローが設けられていなかった点を、まずは改善する必要がありました。

 つまり、これまで各部門間で分散保有していた取引先データをまとめて、すべての取引状況を網羅した「顧客情報」として一元管理することにしました。また、一定期間を経た後の取引再開に際しては、新規取引時と同様の申請手続を取る仕組みに「業務フロー」を改めたのです。

解決策は「取引先情報の統合」

 上記のケースで学ぶべき、“与信管理するうえで、絶対に避けなければならないこと~【その1】”は、
『取引内容だけでなく、営業担当者名・営業履歴・回収履歴・営業情報や信用程度を含む企業情報などを、部門間で分散保有する』ことは避けなければならない、ということです。

 顧客情報を過去の履歴を含めて一元管理し、全社でどれだけの売上債権額を保有しているのか、さらに、その企業に対する営業進捗状態が一目で分かるようにする必要があるわけです。

※TDBでは、取引先全体の企業概要情報をまとめてご提供することができます。 特にTDBでご提供させていただく信用程度を含む企業情報は、取引先情報を統合する際には必要不可欠なものです。商品・サービスへのお問い合わせは、TDBカレッジの「お問い合わせ」をご利用ください。こちらからご連絡させていただきます。

「企業概要データ」COSMOS2

「過去・現在・将来」に対する信用とは

 また、企業の信用状態は絶えず変化するという前提のもとに、顧客との過去の取引実績を過信することなく、与信管理するうえでは顧客企業の“現在”を知り、“将来”を予測する視点を持つことがより大切であることを、全社的に教育する必要があるでしょう。

「信用」は、過去の実績や行為に対して付くものです。
しかし与信取引を考える場合には、「現在」の取引(売掛)に対して、これから先の「将来」に到来する回収が確実に成されるのかを判断していく必要があるのです。



東京支社業務部付参与(組織開発チーム) 山本 正治

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