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  • 税務申告書ができるまで ~リアルスコープ!~

2015.03.20

[企業審査人シリーズvol.76] 

先日の休憩時間に、経理課の木下から税務の話を聞いて興味を示した青山は、その週末に木下を審査課でおなじみの居酒屋に誘った。酒が強そうには見えない木下だが、お酒の席は嫌いではなく、年下の青山の誘いに快く応じた。
 ビールで乾杯するなり、青山が受講者モードで質問を始めた。

 「審査のときに、たまに税務申告書が付いてますが、木下さんはああいうのを作ってたんですか?」

 「もちろん、作っていましたよ。申告書を作る手前として、日常的には領収書や請求書から伝票をおこして、会計ソフトに入力するといったこともやってましたが、やはり決算整理から申告書ができるまでは大変でしたね」 

 木下は大変というより楽しそうな口ぶりだ。好きでそういう仕事をしている人の顔である。

 「私は決算というと、棚卸しのイメージがあるんです。昔、スーパーの棚卸しのバイトをしたことがあります。百貨店が棚卸しのため本日休業、という貼り紙をしていたのも見たことがありますよ」

 「それは決算整理の一部です。実際はその前に、会計ソフトに入力された仕訳を精査します。申告書を出した後は、戻って修正することができないので、数字をしっかり固めるのです」

 「消費税の処理なんかもやるんですか?」

 「もちろん。ガソリンスタンドで払った軽油代のうち軽油引取税がしっかり分かれているか、といった細かいチェックをしますよ。ほかにも、減価償却費の年額を確定したり、貸倒引当金を計算したり、それはもう色々とあります。締め後の売上や経費の把握も大切です」

 「この前話してもらった損金不算入とかも、そこに入るわけですね」

 「そうです。法人税の計上も決算整理の一部ですが、大方の決算整理が済んだ上で申告書を作成していきますので、同時並行といった感じです」
 「申告書を作るだけで、相当時間がかかりそうですね。やはりそれが会計事務所で一番大変でしたか?」

 「いや、決算書や申告書を作ること自体は、慣れてくれば苦になりません。むしろ顧問先である社長に税額を通知して、なぜそうなるのか納得してもらうことのほうが苦労しました。決算整理前の試算表と申告書完成のタイミングでは、どうしても利益にブレが出てしまうんです」

 「損金にならない経費が思った以上にあった場合とか?」

 「いやいや、税務上と会計上のズレがわからず納税額が見込みと大きく違うようなことがあると、会計人としては失格ですので、そこはある程度予想できます。しかしたとえば、実地棚卸による在庫の金額が想定よりも多かったりすると、利益も税額も大きくなります。棚卸しの金額は顧問先からもらうまでわかりませんからね」

 「中小企業は管理体制がまちまちでしょうから、そういったことがあるんでしょうね?」

 「そうなんです。損益計算書の仕組みがわかっている社長なら話は早いのですが、そうでなくても、説明して納得してもらうほかありません。納得してくれるかどうかは、最後はそれまでの信頼関係ですから、そこにやりがいもあるわけですけどね」

 「なるほど。会計事務所の仕事というと数字ばかりを扱っているイメージがありますけど、行き着くところはやはり信頼関係なんですね。営業における与信や、審査におけるわれわれと営業パーソンの関係と同じなんですね」

税務申告書ができるまで

 前回から続いて、税務のお話になりましたが、今回は木下が青山に説明した税務申告書の生成過程について、補足しましょう。

 Step.1 年間の仕訳の精査や科目内訳を確定する

 多くの会社が経理業務を通じて年間の仕訳を会計ソフトに入力していますが、そこからすぐに申告書ができあがるわけではありません。まずは、入力された科目の精査、すなわち「適切な会計科目に振り分けられているか」「ケタの入力ミス等で異常な金額が入っていないか」などの初歩的なことはもちろん、「消費税に対応した仕訳がなされているか」も重要になってきます。二人の会話の中で出てきた軽油代のうち軽油引取税を分けるといったのも一例で、それぞれ消費税がかかる取引とかからない取引とに分けなければなりません。
 また、売掛金の内訳として、どの得意先のものがいくらあるか、またその金額に誤りは無いかといった各科目の内訳チェックも行います。税務申告書の売掛金や買掛金の明細は、与信管理でも有益な情報になります。

 Step.2 決算整理を行う

 「棚卸し」はご存知の方も多いと思いますが、これは決算整理のひとつです。期末にどれくらいの材料や製品が残っているかを確認する作業で、決算書を作る上で極めて重要な作業です。
 製造業では材料等に限らず、期末時点で製造途中のものを仕掛品として計上します。決算整理ではこのほか、経過勘定の整理、減価償却費の計上、売買目的有価証券の時価評価、貸倒引当金の決定などがあり、すべてを挙げることはできませんが、正しい財務諸表を作成し、申告書の作成にとりかかるためには避けて通れないプロセスです。

 Step.3 申告書を完成させる

 法人税の計上は、厳密には決算整理の一部ですので、申告書の完成とともに決算整理も終えることになります。申告書上では前回のコラムで扱った、「損金算入/不算入」「益金算入/不算入」の調整をした上で所得を確定し、税金を計算します。
 年間の仕訳が入った試算表の段階から、決算整理を終えて完成した財務諸表の段階とでは、利益の金額が大きく異なることもあります。正しく毎月減価償却を計上して、試算表作成に合わせて棚卸しをしているような会社であれば心配は少ないと言えます。
 一方、決算時の年一回だけ税理士に依頼している中小企業も多く、そうした会社では決算整理をそのタイミングでしかしない可能性があります。できればその試算表だけではなく、前期以前の決算書と比較して決算整理による影響の多寡を推し測る必要があるでしょう。

 調査員も取材の場面で決算前の試算表を見せていただくことがあります。与信管理の場面でも、取引先の試算表はその会社の管理状態や決算見通しを確認する有益な材料と言えます。
 
 
 

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