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  • 個人事業の決算書 ~青?白?黄色??~

2015.07.10

[企業審査人シリーズvol.89]

「木下さん、個人事業の確定申告もしていましたか?」
審査課の青山が少し焦った様子で、経理課の木下のところに尋ねてきた。財務関係でわからないことがあるとまず隣の水田や審査課長の中谷に聞くことが多い青山だが、ふたりが不在だったり忙しそうだったりすると、こうして木下のところに来ることが多くなった。経理課と審査課は隣のシマなので、気安く行き来できるのだ。

 「もちろんありますよ。個人の場合は法人と違って、1月から12月の内容をまとめて、その翌年の2月16日から3月15日に提出します。3月15日が土日にかかれば翌月曜日になりますが、いずれにせよ会計事務所では繁忙期ですね」と、木下は動じることなく答えながら、前職の話をするときに見せる遠い目をした。

 「今日、個人の建築業者の審査が割り当たったんですが、決算資料がなくて、どうしたものだか困ってたんです。そもそも個人事業では、法人で言う損益計算書や貸借対照表は作られるんでしょうか?」

 「個人事業の場合は、白色申告か青色申告かで呼称などが異なりますが、損益計算書にあたるものは作られますよ。具体的には、白色では収支報告書、青色では青色決算書と呼んでいます。いずれにしても、事業所得を計算しなければ申告できませんからね」

 「白色と青色ってどんな違いがあるんですか?」
 「そうですね、簡単に言うと、事前に青色申告しますという届出をします。しっかり記帳をして申告すれば、青色申告となります。青色は白色にないような青色申告特別控除が受けられるといった特典があると言えばピンとくるでしょうか」
 「なるほど。損益計算書にあたるものはあるわけですね。貸借対照表はどうなんでしょうか?」

 「まず、白色の収支内訳書は貸借対照表の項目が設けられていないので、基本的に作られません」
 「青色申告の場合は作られるということですか?」

 「実は、青色申告も細かく分けると2種類あって、青色申告特別控除の金額について10万円か65万円かを選択できるようになっています。しっかりとした貸借対照表の作成が求められるのは、65万円控除を選択したときだけ、ということになります」

 「なるほど。限定されるんですね。実際その65万円の控除が選択される割合はどれくらいなんですか?」
 「統計的なものはわかりませんし、地域差もあるでしょうが、私の感覚だと青色の半分くらいですかね。もちろん、税理士に依頼する方の中ではもっと上がって7~8割くらいになると思いますよ」

 「そうですか。仮にそういう資料が揃っていたとして、個人事業の財務資料を見るときの注意すべき点を教えてもらえますか?」
 「個人は法人の決算書と違って、専ら税務申告を目的として作られると考えていいでしょう。法人の場合は株主と経営者が違うことがあるので、ディスクロージャーを意識した財務資料が作られることもあります。対して個人の場合はそういったケースは想定できませんよね」

 「法人でも同族会社の場合は似たような感じですけどね。実務的にはどうですか?」
 「個人の貸借対照表に計上された固定資産が全額費用にならないことがあります。法人の場合は事業用として全額が減価償却として費用化されるでしょう。個人の場合は、例えば車を事業以外に普段の生活にも使っている場合、減価償却費を事業割合に応じて損益計算書に反映させるんです」

 「なるほど。法人の申告書でいう損金不算入を、個人は決算書上で反映しているという格好ですね」
 「そうそう。青山さん、覚えが早い!税務と会計の世界の違いがわかってきましたねぇ」
そう言って、木下は仲間を迎えるようなうれしそうな顔をして何度もうなずいた。

個人事業における白色申告と青色申告

 個人の事業所得の申告は、法人の決算期のように任意に設けることはできず、1月から12月の1年分をまとめ、翌年の2月16日から3月15日(土日の場合は翌月曜日)に提出されます。
 原則として青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、青色申告を選択することができますが、白色よりも厳密な記帳や決算書の作成が求められます。
 青色申告では、所得金額から特別控除として10万円か、不動産所得又は事業所得において65万円を選択できます。後者の要件としては、一般的には複式簿記といった正規の簿記の原則による記帳、及び貸借対照表及び損益計算書の作成が求められますが、これによって65万円控除のほか、青色専従者給与、貸倒引当金繰入額の必要経費算入、欠損金の3年間繰越などの特典が設けられています。
 このようなことから、個人事業において貸借対照表も含めた法人の申告水準と同程度の決算書が作られるのは、青色申告で65万円の青色申告特別控除を適用している場合に限定されることになります。

白色における収支内訳書と青色における青色決算書

 個人事業の所得税申告書に添付される資料は、白色か青色かで異なります。会話の中であったように、白色では収支内訳書、青色では青色決算書と呼ばれ、具体的な内容(一般用)は下記のようなものです。なお、(一般用)という事業所得のフォーマットのほかに、事業所得の種類に応じて(不動産所得用)や(農業所得用)のほか(現金主義用)などがあり、(一般用)とは記載内容が異なる点に注意が必要です。

 ・白色申告における収支内訳書(一般用)
オモテ面に収入金額、売上原価と経費のいわゆる損益計算書の簡易版、給料賃金や税理士等の報酬・料金の内訳などがあります。裏面に売上と仕入、地代家賃の明細、金融機関を除く利子割引料の明細のほか、減価償却費を計算する欄があります。
 ・青色申告における青色決算書(一般用)
計4ページの様式になっており、1ページ目に損益計算書、2ページ目に月別の売上金額と仕入金額の記入欄、賃金給料に専従者給料の内訳のほか、貸倒引当金繰入額の計算欄や青色申告特別控除の計算欄(10万円と65万円の選択)があります。3ページ目には、白色と同じように減価償却費の計算欄、税理士等の報酬・料金の内訳、地代家賃の明細、金融機関を除く利子割引料の明細があります。そして4ページ目が貸借対照表と製造原価の計算欄という構成になっています。

個人事業における貸借対照表

 前述の通り、貸借対照表がしっかり作成されるのは、青色申告で65万円の青色申告特別控除を用いる場合となります。しかしながら木下が話したとおり、貸借対照表に計上された固定資産については、事業割合に応じた減価償却費が損益計算書に計上されるなど、法人では想定されない運用がなされることもあります。
 すなわち、あくまで確定申告に応じて作成される個人決算書は、税務申告を主目的とし外部への公表は想定していない点において、法人の決算書とはスタンスが異なることを念頭に置いておく必要があります。 
 

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