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  • 企業会計7つの一般原則(後編) ~青山の夏期講習~

2015.08.28

[企業審査人シリーズvol.94]

退社時にゲリラ豪雨に見舞われた青山と木下が、会社の隣の喫茶店に駆け込んで30分。雨脚はすでに弱まっているが、木下のゲリラ・レクチャーは始まったばかりである。この夏期講習に制限時間はない。

 「企業会計原則における4つめの一般原則は『明瞭性の原則』ですけど、これは想像がつきますか?」
木下は窓の外で雨が弱まっていることにも気づかず、生徒となった青山にクイズ式で問いを出している。
 「明瞭・・・見やすく、わかりやすい財務諸表の提供を要請する、ということですか」
 「正解です。見やすい配列、わかりやすい科目の分類を要請していますが、それだけではなくて、財務諸表の注記による重要な後発事象などの適正開示を要請する原則でもあります。では5つめ、『継続性の原則』はどんなものだかわかりますか?」
 「継続と聞くとゴーイングコンサーンが思い浮かびますが、何か関係ありますか?」
 「残念。関係ありません。1つの取引に、2つ以上の会計処理の選択適用が認められているケースがあるという話をしましたけど、その会計処理を毎期コロコロ変えられたら、読み手は混乱してしまいますよね」
 「なるほど。いったん採用した会計処理は継続して適用しましょう、という原則なのですね」
 「そうです。利益操作を排除したり、期間比較可能性を担保したりするための原則です。ゴーイングコンサーンはそもそもの企業実体の継続性の話ですから、もっと深刻というか、重い話ですよね」
 「そろそろ頭が一杯になってきましたけど、7つの原則だからあと2つですか。よろしくお願いします」
さすがの青山も原則談義には少々疲れてきたようだが、ここまで来たら最後までという気分のようだ。
 「6つめは『保守主義の原則』です。私はどちらかというと保守的な人間ですけど、青山さんはどうですか?」
 「いろんな事にチャレンジする革新的な人・・・でありたいとは思っていますが、どうですかね。会計基準はどうせ保守的なんでしょう。勝手にルールを作ってはいけない、とか・・・」
 「なかなか革新的な回答ですが、ここで言う『保守』は少し意味が違います。ここでいう保守主義とは、“収益は確実なものだけ計上して、費用は漏らさず計上しましょう”という健全な会計処理を要請するものです。もちろん過度に保守的な会計処理は、利益の隠蔽につながりかねないのでNGですけどね」
 「木下さんが保守的な人間なんて言うから間違えたんですよ・・・・7つめの一般原則は何でしょうか」
 「最後は『単一性の原則』です。会計基準が求めている単一性とは果たしてなんだと思いますか?」
 「単一…、たった一つ・・・わかりました、二重帳簿はいけない、ということですか」
 「正解!企業が異なる形式の財務諸表を目的に応じて作成することはあるかもしれませんが、いずれも単一の会計帳簿に基づいて作成しなければならない、ということです。これを実質単一・形式多元といいます」
 「7つの原則。聞いてみればどれもその通りと納得出来ますけど、覚えられないなあ・・・」
 「実は、もう一つ忘れてはならない原則があるんですよ」
 「えぇ?一般原則は7つで終わりと言ったじゃないですか」

 「その7つの一般原則とセットで、『重要性の原則』というものがあります。これは企業会計原則の注解に記載されているのですが、その名のとおりこの原則も重要なんです」
 「重要なものはちゃんと決算書に反映しましょう、ということですか?」
 「半分正解です。この重要性には二面性があって、もちろん重要性の高いものは厳密な処理・表示をしましょうということですが、重要性の乏しいものは簡便的な処理・表示でも良い、というものでもあります」
 「なるほど・・・・一般原則はどれも重要なので7つはひとつも簡便にできない、ということでしょうか」
 「他にも、損益計算書原則と貸借対照表原則があるんですが、どうしますか」
 「コーヒーだけなのに、何だか満腹です。あれ?雨も上がっていますよ。今日はここまでで勘弁してください」
青山の「勘弁してください」という言葉に、木下が思わず笑った。
 「あらあら、私が勘弁的な処理をされてしまいましたね」

7つの一般原則と重要性の原則

 前回のおさらいになりますが、会計基準においては7つの一般原則があり、具体的には下記のとおりです。
①真実性の原則/②正規の簿記の原則/③資本取引・損益取引区分の原則/④明瞭性の原則
/⑤継続性の原則/⑥保守主義の原則/⑦単一性の原則

 今回、木下と青山の会話の中で取り上げられたのは、④から⑦の原則に加え、『重要性の原則』がありました。これは企業会計原則の『注解1』に記載されているもので、会計処理はできるだけ厳密に行うべきだが、実務上は一定の取捨選別によって効率的に決算書を作成しなければならない一面もあるため、重要性の乏しいものについては簡便な会計処理を認める、というものです。 

明瞭性の原則

 財務諸表について明瞭で分かりやすいものにし、かつ、注記などに重要な情報の記載を要請する原則です。この原則はディスクロージャーを支える原則でもあり、経営者は株主をはじめとする利害関係者に会計事実を明瞭に開示させ、説明責任を全うさせるものです。 

継続性の原則

 企業が採用した会計原則について、毎期、継続的に適用することを要請する原則です。しかし、絶対的な継続を求めるものではなく、正当な理由があれば財務諸表へ注記することで許容されています。例えば、正当な理由として会計基準自体が変更された場合や、企業内外の経営環境の変化に応じて会計方針を変更する場合などが該当します。 

保守主義の原則

 この原則は安全性の原則とも呼ばれ、「予想の利益は計上せず、予想の費用は漏らさず」といった考えに基づくものです。例えば、貸倒引当金の計上や棚卸資産の評価損の計上はこの原則によるものとされていますが、過度に保守的な処理は『真実性の原則』に反するため認められません。 

単一性の原則

 企業が作成する会計帳簿は一つだけに要請する原則で、いわゆる二重帳簿など不正な経理を防止するものです。企業の目的に応じ表示形式の異なる財務諸表の作成は認められていますが、そのソースとなるものは単一のものでなくてはなりません。

 これらの原則は青山のように覚えようとすると少々大変ですが、会計処理の実務においては常に判断において立ち返るべき原則になるため、実務を経験する中ですりこまれていくものと言えるかもしれません。

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