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  • 減価償却の4つの方法 ~どれがお好み?~

2016.09.26

[企業審査人シリーズvol.123] 

リフレッシュルームで休憩中の経理課・木下のところに、得意先回りを終えた新人営業マン・東山が久しぶりに訪ねてきた。上司の八木田に紹介されてから、決算書でわからないことをときどき木下に聞いている。社交的な挨拶が終わるなり、身体からわずかに湯気を立てている東山は用件に入った。もともと体育会系の風貌でハンカチ片手の東山と、インドア系の風貌で涼しげな木下は、見事な好対照をなしている。
「今日お客さまのところで減価償却の話になったんですけど、償却方法の話になってから、わらかない話が出てきて困りました。減価償却の基本的な考え方はわかっているつもりだったのですが・・・」
「なるほど。どうやって簿価を減らしていくのかをご存じない、ということですね。結論を先に言ってしまいますと、減価償却には4つの方法がありますが、知っているものもありますよね?」
今年の夏はかなり暑いが、木下は職場で上着を脱がずに通している。
「定額法と定率法がある、というのは新人研修の中で聞いた記憶があります!」
「そうですね。一番分かりやすい定額法がどのような方法だったか、覚えていますか?」
「買った資産額を単純に耐用年数で割る方法ですよね。毎期同じ額の償却費が計上されるというやつですね。ただ、定率法のほうはいまひとつ理解があやふやなんですよ」
「定率法は、期末残高に一定の償却率を掛けて減価償却費を算定していく方法です。定率法の大きな特徴は、資産を購入した初期の段階で大きく償却費が計上され、年数を経るにつれて計上される償却額が少なくなっていくことです」
「償却率というのは決まっているものなんですか?」
「そうですね。定率法の償却率は年数と取得年月日によって決められます。ちょっとややこしいんですが、平成19年4月1日以後に取得のものに対しては250%定率法が適用されていましたが、平成24年4月1日以後は200%定率法を適用することとなりました。さらに、平成19年4月1日以前の償却率を用いるケースについては“旧定率法”と呼ばれています」
「200%?どういうことですか?」と、東山がきょとんとしながら額の汗を拭った。
「定額法の償却率を2倍した償却率になるように、各償却率が定められているということです。まあ、定率法では定額法に比べて初期段階に多額の償却費が計上される、ということを覚えておいてください」
「定率法とは逆に、年数が経つにつれて償却額が上がる算定方法はあるんですか?」
東山の質問はなかなか奇抜だが、木下はこれにも涼しい顔で答えた。
「理論的には償却基金法という逓増法があります。ただ、私が会計事務所に勤めていた時には採用しているケースを見たことがありません。企業会計原則にも例示されていないので、さっき話した4つの償却方法には含まれていません。トリビア的なものと考えてよいでしょうね」
「では、残りの2つの償却方法とはいったい何ですか?」
東山の奇抜な質問は、どうやら「残り2つ」の可能性を探っていたらしい。
「定額法・定率法に比べると実務上採用される機会がぐっと減りますが、級数法と生産高比例法というのがあります。級数法は、定率法と同じように初期段階に多額の償却費が計上される特徴があります」
「算定方法は、定率法とは何が違うのですか?」
「償却率を使うのではなく、毎期一定額を算術級数的に償却費として計上します。意味、分かりますか?」
「サンジュツキュウスウ?サッパリ分かりません」
「例えば3年の耐用年数であれば、3→2→1と、階段を下っていくようなイメージ図を頭に思い浮かべてみてください。このケースでは分母は3+2+1=6となり、償却初年度の分子が3、次年度は2・・・といった要領で償却していくのです」
「なるほど。そう聞くと、定率法より簡単な感じがしますね」
「その通り!定率法の簡便法などと言われたりします。ただ、今は会計ソフトに購入日と取得価額を入力すれば自動的に償却額が計上されるようになっているので、実務上採用される機会は少なくなっています」
「なるほど。会計の方法も技術の進歩とともに変わっているのですね」と東山が頷いた。
「ええ。その分、粉飾なども巧妙になってきているわけですが。さて、最後の生産高比例法も説明しておきましょう。これは、固定資産の利用量に応じて減価償却費を計上していく方法です。例えば、ある自動車の見積総走行距離が10万kmであった場合、各期走行した距離に応じて減価償却を計上します」
「それは理にかなっていますが、棚卸のように計算要素となる数字のチェックが大変そうですね・・・。僕はやっぱり、単純明快な定額法が一番分かりやすくて好きです」と、東山が言うので、木下がつっこんだ。
「いや、東山さんが一番好きなのは土地でしょう。そもそも償却しなくていいわけですから。僕なんかは償却率を充てこむだけじゃ面白くないので、生産高比例法で全部計算したいですけどね」
顔を見合わせて「あっはっは」と笑い、夏男と冬男のその日の会話が終わったのだった。

減価償却の方法

減価償却の方法については、「企業会計原則 注解20」に以下のような4つの方法が列挙されています。
①定額法…固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法
②定率法…固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法
③級数法…固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した減価償却費を計上する方法
④生産高比例法…固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用役の提供の度合に比例した
減価償却費を計上する方法
なお、④の生産高比例法については“総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生するもの”に適用が認められており、例としては鉱業用設備、航空機、自動車等が挙げられています。

取替法

2人の会話の中にはありませんでしたが、鉄道事業におけるレールなど、同種の物品が多数集まってひとつの全体を構成する資産については「取替法」を採用することができます。取替法とは通常の減価償却とは異なり、老朽部品の取替によって資産全体が維持される性質の資産に適用され、部分的な取替に要する支出を修繕費などの科目として費用計上します。これについても、「企業会計原則 注解20」で定められています。

減価償却しない資産

利用や年数の経過によって資産価値が減価しない性質のものは減価償却をせず、その代表的な資産として土地が挙げられます。また、建設・制作中となっている資産についても、減価償却はせず建設仮勘定などの科目として計上し、完成し事業の用に供した時点で建物などの科目に振り替えられ償却資産となります。

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