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  • 海外ビジネスを失敗させないためのヒント第2回(全6回)

2018.12.05

~第2回 日本と欧米での法律・商習慣の違い~

前回はコーポレートガバナンスの観点から海外ビジネスの注意点についてご紹介しました。今回は日本と欧米と法律・商習慣の違いについてご紹介します。
世界から見れば日本も一つの国に過ぎず、世界各国において取得できる企業情報は、国により開示義務、民間調査会社の発達度合いによっても異なります。古くから地続きで国境を越えた商取引が盛んだったヨーロッパでは取引信用保険が生まれ、その保険料率算定のために企業情報のデータベース化も進んでいました。

ヨーロッパの企業情報

ヨーロッパの中でもイギリスでは企業情報の開示が規制で定められており、個人事業主・零細企業を除き一定の期間内に決算報告をしないと会社の権利をはく奪されるため、未上場企業を含めて大半の企業情報が公的機関に集められています。ヨーロッパにはそうした規制によって企業情報が開示される国が多くあることから、企業情報が入手しやすい環境が整っており、その背景から財務分析や信用リスクなどのモデル構築も世界をけん引する位置づけにありました。

アメリカでの事情

欧米とはひとくくりに言うものの、ヨーロッパとアメリカでは企業情報の開示については180度異なると言えます。ヨーロッパはスイスなど情報保護の厳しい国を除き、未上場企業を含め財務内容・決算書を含む企業情報が公開される傾向にありますが、アメリカでは未上場企業の決算書が開示されていることは全くと言っていいほどなく、民間の調査会社でも企業の財務や収益情報を収録しているケースは少ないです。これは企業情報、特に自社の数値情報を公的機関以外に提出する慣習がないためです。また、アメリカでは公的機関で企業情報を開示する規制もないため、アメリカでは与信管理の方法が日本とは大きく異なります。クレジットコントローラーと呼ばれる企業の審査担当者は、取引先の財務情報は知る事ができない前提で、支払い振りや抵当権の設定状況などを確認しながら、取引可否判断や与信限度額設定を行っています。

日本とアメリカで異なる点として、日本では商取引において不動産に担保設定することがありますが、アメリカの場合は基本的にローンを組成する金融機関のみが担保設定可能で、通常の商取引で不動産に担保設定することはありません。一方で、アメリカではUCC(The Uniform Commercial Code:統一商事法典)と呼ばれる制度を用いて、商取引において動産に対して担保設定することが一般的です。この担保設定は、現存の資産・債権のみならず、将来的に発生する売上債権や取得する設備に対して設定することも可能です。この担保設定状況から優先順位の高い担保設定権者の有無を確認し、与信判断することがクレジットコントローラーの仕事の進め方の一つになっています。

欧米では職務の考え方が日本に比べてはっきりしているため、現地スタッフが自身の職務以外の業務に意識が向きにくい傾向にあり、日本企業のように営業担当者が回収管理・債権管理のマインドを持って業務に臨むことは少ないです。そのため、アメリカの日系企業で働くアメリカ人のセールススタッフは、日本企業の文化に大きなギャップを感じるという話を耳にします。

信用調査の分類

欧米では法人登録や適法に開示されている決算情報を収集して、信用スコアモデルに当てはめてリスク算出するデスクリサーチが一般的であるのに対し、アジアでは公的に公開されている情報に加え、インタビューによる取材情報を加える調査手法が多い傾向にあります。日本はインタビューによる情報取得の割合が大きく、日本の企業調査報告書を見た海外のお客さまは、情報がとても充実しているうえにサイトビジット(現地訪問)までしているのかと驚かれることが多いです。

次回は、日本企業とのビジネスが多い中国での企業情報と取引先管理についてご紹介します。

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                              執筆:営業企画部 マーケティング課 岡田 明

※本文は個人見解を含むものであり、会社としての見解を示したものではありません。法律の改正等により記載が事実と異なる可能性がありますこと、予めお含みおきください。

バックナンバー

第1回 拡がるコーポレート・ガバナンスの責任範囲
第2回 日本と欧米での法律・商習慣の違い<表示中のコラム>
第3回 “いま”の中国の企業情報事情
第4回 海外でのヒヤリハット事例
第5回 日本からできる海外取引先管理
第6回 マスタ整備の重要性

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