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2019.02.05

一橋大学×東京工業大学×帝国データバンク
データサイエンスとテクノロジーの交差点に立つ
~構造化されたビッグデータと先端研究で生み出されたアルゴリズムが強い意思決定を生む~



帝国データバンク(以下TDB)が持つ企業間取引などのビッグデータについてのシンポジウムが2018年11月28日、一橋大学一橋講堂で行われました。TDBが産学連携で提携している一橋大学・東京工業大学との共催で、共同研究成果の初の一般公開となりました。データは意思決定を行う際に使われるもので、いかにして有用に活用するかが重要になってきます。「データがどのような場面の意思決定に役立つのか」、今後のビッグデータの利活用について様々な議論が交わされました。
当日は約320名の方に参加いただき、登壇者からはTDBの保有する企業ビッグデータについて、政策立案やメディア活動、報道、デザインなどそれぞれの立場・視点からアプローチした研究成果などが発表され、盛り上がりをみせました。

現在、国内では官民でデータの蓄積や利活用に向けた取り組みが本格的に進んでいます。TDBでは、約30年間にわたり蓄積した企業間取引データの利活用方法について研究を進め、2017年には経済産業省の事業である「地域未来牽引企業」で、ビッグデータに基づいた企業抽出を担当するなど、主に政策面で実績を重ねてきています。衆議院議員の福田達夫代議士の講演では、ビッグデータに基づき地域の中核企業を支援する「地域未来投資促進法」をはじめ、EBPM(証拠に基づく政策立案)が中央省庁で本格化していることが強調されました。その上で、「“ビッグデータ”が、政策にも利用可能だということに多くの人が気付いたのではないか」と、ビッグデータ分析・利活用に基づいた戦略立案の可能性について期待が寄せられました。

メディアでも企業ビッグデータの活用が進んでいます。経済雑誌「日経ビジネス」を発刊する日経BP社は、2018年10月にTDBが提供した企業ビッグデータから、様々な産業動向について取材・特集した「日本企業の新事実」(2018年10月1日号)を発刊しました。本シンポジウムでは同社の酒井耕一氏が講演し「データを基に新しい切り口をメディアが提示することで、今後国内の産業発展にも結びつくのではないか」と、ビッグデータをメディアが活用することによる将来性やデータに基づいた信頼できる報道の可能性が述べられました。

TDBの企業ビッグデータはアカデミックな側面からも注目を集めています。「世の中を観察できるツールの発明」と「世の中の再現」を目指し、個々のデータが新たな指標として活用されていく可能性が示唆されました。
東京工業大学の高安美佐子教授が率いる研究チームは、「ビッグデータから再現可能な予測モデルを組み立てることで、未来を予測すること」を研究目的と掲げています。同チームでは、TDBの調査報告書データから、スーパーコンピュータを用いて災害時における企業の売上被害額のシミュレーション結果のほか、成長企業に特徴的に出現するキーワードに関する研究成果などが報告されました。
一橋大学経済学研究科帝国データバンク企業・経済高度実証研究センター(TDB-CAREE)では、モデル化された指標を用いて、経済政策や経営戦略を定量的な手法で評価する試みを行っています。マクロ経済政策の評価から自治体レベルの政策の有効性、そしてマネジメントやイノベーションを定量的に測る革新的な研究などが進められています。データにより経済動向を解説し、世の中全体の挙動を再現するには、経済の文脈(≒「ああなれば、こうなる」という前後関係)をマクロから読み出す必要があります。そのために、ミクロのデータとの接続の必要性が強調されました。

パネルディスカッション

第3部 パネルディスカッション
第3部のパネルディスカッションでは、情報の可視化に関して達人といえるNHKチーフプロデューサーの阿部博史氏をモデレータとして、Takram社代表の田川欣哉氏、東京大学の渡邉英徳教授、『統計学が最強の学問である』シリーズの著者である西内啓氏の3名をパネリストに、白熱した議論が繰り返されました。

特にビジュアライゼーションが重要な論点として挙げられました。福田達夫代議士の講演でも、TDBと提供した企業間取引データを分析・可視化した地域経済分析システム「RESAS」を例に挙げ、「無味乾燥なデータから、素人でも視覚的に認知可能なフィールドが出来たことにショックを受けた」と語っています。多くのステークホルダーがいる中で意思決定を進めて行く際には、データのビジュアライゼーションは有効と考えられています。それに対し、東京大学情報学環の渡邉英徳教授からはそもそもの可視化の必要性についての斬新な問いかけがありました。

この渡邉教授の投げかけに関する議論から、「RESAS」のシステム構築にも関わったTakram社の田川氏と西内氏は人間関係の構築やコミュニティ形成を含めたコミュニケーションデザインについての深遠な議論にまで発展し、コミュニケーションの理解を助ける「強力なストーリーテリングのツール」としてビジュアライゼーションの役割が示唆されました。「IT会社は社員が150名を超えると分裂する」という説など、一般に直接的コミュニケーションの限界数(≒集団の構成員の限界数)について、ダンバー数という指標として報告された研究が存在します。一方で、日常的には「サッカーのサポーター同士が合唱により一体化する」などこの限界数を超える例がいくつもあります。「集団の構成員の限界数と人間がなぜこの限界数を超える術を持っていたのか」という問いに対する答えの一つとして、ビジュアライゼーションが有効なツールとして言及されました。

ビジュアライゼーションの役割については、モデレータの阿部氏からもNHKが災害時などに風の強さや雨の状況などを可視化するためにニュース番組等で使用するNMAPSが紹介されました。「どう見ても風が強い」ということがわかると、意思決定や行動のトリガーが引かれます。ビジュアライゼーションは「分析をして、引っ掛かりを作って、発見を促す」役割があるというメッセージについては、会場からも同意の声が上がっていました。
TDBのビッグデータに何を足すと価値が出るのか、という問いかけに対しても興味深い意見がありました。データを数値化する過程で「人間臭さ」は排除されドライに見えてしまいます。しかし、実際の社会や経済は人間の活動が積み重ねられたものであるため、「人間臭いデータこそ重要」という意見に帰結し、パネルディスカッションは幕を閉じました。
これまでの経験則にとらわれることなく、情緒的な話とサイエンスの話を複層的にデザインして伝えていくことで、人は態度を変えていきます。“ビッグデータ”を扱える時代になったからこそ、データを使った場合と使わなかった場合とで、意思決定の成功確率が変わってくることが示される時代が来たのではないかという印象を強くしたシンポジウムでした。

登壇者

第1部 東京工業大学研究報告
1.基調講演 中小企業政策とビッグデータ
  福田達夫代議士 衆議院議員
2.『未来観測所』からみた日本企業の現在と未来
  高安美佐子教授 東京工業大学科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット長
  Henrik Jensen(Imperial College London・東京工業大学特任教授)
  Eduardo Viegas(Imperial College London)

第2部 一橋大学研究報告
1.基調講演 日本企業の新事実(日経ビジネス10月1日号)
  酒井耕一氏 日経BP社・経営メディア局長日経ビジネス発行人 
2.企業データを活用した経済政策と経営戦略の評価分析:これまでとこれから
  岡室博之教授 一橋大学大学院経済学研究科長

第3部 パネルディスカッション 私はTDBのビッグデータをこう料理した
モデレータ:NHKチーフプロデューサー 阿部博史氏

パネリスト:田川欣哉氏 Takram代表
      西内 啓氏 データビークル代表取締役・統計家
      渡邉英徳教授 東京大学大学院情報学環

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