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  • 2019年度の賃金動向はどうなる? ~景気のミカタ~

2019.02.19

現在、半数を超える企業が人手不足を感じるなど労働市場の需給がひっ迫する一方で、消費を喚起するほどの賃上げは進んでおらず、賃金動向は大きなパラドクスとして注目されています。

労働者と企業による異なる賃金への感じ方

日本全体の雇用者に対する総報酬額を表す名目雇用者報酬をみると、2015年度以降は前年度比で+2%前後の増加、2018年度は4~6月期が前年同期比+3.8%、7~9月期が同+2.6%、10~12月期が同+3.2%の伸びとなっています(図表1)。
他方、一人当たりの賃金をみると、2018年の名目現金給与総額は前年同月比+0.1~+1.7%の増加となっており、年間平均では1%に満たない状況です。また、労働時間では、同-3.1~+1.3%で増減しており、概ね減少傾向となっています(図表2)。
結果として、一人ひとりの労働者は賃金の上昇を実感できずにいる一方で、時間当たり賃金の上昇に直面する企業は人件費の上昇に負担を感じる、という構造が生じていることがうかがえます。

2019年度の従業員給与・賞与、総額で平均2.82%(約4.1兆円)増加と試算

弊社の調査によると、2019年度に自社の総人件費が「増加」(注1)すると見込んでいる企業は70.5%にのぼり、2年連続で7割を上回っています(帝国データバンク「2019年度の賃金動向に関する企業の意識調査」2019年2月14日発表)。逆に、「減少」は6.7%にとどまり、多くの企業で人件費の増加を見込んでいることが分かりました(図表3)。
そこで、これらを基に2019年度の総人件費がどの程度になるか試算したところ、前年度比で平均3.02%(総額約5.2兆円)増加するという結果となっています。そのうち従業員への給与や賞与は、平均2.82%(約4.1兆円)の増加が予測されます(注2)。

なかでも、深刻な人手不足が続いている『建設』で総人件費が平均3.48%増加すると推計されるほか、「飲食店」(平均4.24%増)や「情報サービス」(同3.93%増)、「人材派遣・紹介」(同3.85%増)などを含む『サービス』(同3.32%増)で3%を超える大幅な増加が見込まれます(図表4)。

2019年の景気は賃金動向がカギを握る

しかしながら、国内の景気動向は、ここにきて大きく弱含んでいます。
直近の国内景気をみると、1月の景気DIは前月比1.3ポイント減の48.1と2カ月連続で悪化し、後退局面入りの兆しも一部で表れてきています(「TDB景気動向調査」2019年1月18日~31日実施)。

こうしたなかで、企業は人手不足が長期化するなか、労働者の定着や確保を背景として、賃上げを実施する傾向が一段と強まってきました。とりわけ、中小企業で賃上げの必要性に迫られる状況です。

景気回復のカギを握る個人消費について、「賃金上昇により個人消費が伸び、経済の成長につながることを期待する」(一般貨物自動車運送)といった声が聞かれる一方、「可処分所得が増えない以上、個人消費が大きく増えることはない」(ビルメンテナンス)といった意見が多くみられます。
消費税率引き上げや各種社会保険などの国民負担割合が徐々に高まるなかで、実質可処分所得の増大が消費動向のカギを握るといえるでしょう。

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士
注1:「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計
注2:総人件費は「法人企業統計」(財務省)より帝国データバンク試算
本コラムで紹介した景気DIや見通しは、ビジネスを展開する企業の
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審議等でも取り上げられ、政府や官公庁など政策立案にも生かされています。
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