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2019.06.11

~SUPPORTERS スポーツを支える企業~

北の大地に“新たなスポーツ文化”を築くヴォレアス北海道(北海道旭川市)


2017年11月に(株)VOREAS(ヴォレアス)として法人化したプロバレーボールクラブチーム『ヴォレアス北海道』。2017/18シーズンから「Ⅴ・チャレンジリーグⅡ」に参戦、初参戦にして初優勝を飾り、現在、新リーグの「Ⅴ1」昇格を目指している。
注目されるのは戦績にとどまらず、観客を惹き付けるプロモーション力。
ホームゲームは、独自のイベントを開催するなどライブエンターテイメントとして位置づけ、チケットは高額の席から完売していくという。
その(株)VOREASの生みの親となった企業が、北海道旭川市に本社を置く防水工事業者、(株)アイ・ディー・エフだ。同社は現在、スポンサーの1社としてチーム運営を支えている。これまでの歩み、そして(株)VOREASが目指す姿と取り組みを取り上げる。(帝国データバンク 札幌支店情報部)

北海道にバレー選手の受け皿を

バレーボールと聞いて多くの人がまず思い浮かべる企業と言えば、東レやパナソニック、サントリー…といったところではないだろうか。一方、今回紹介する(株)VOREASは、自らプロ化を宣言、つまり企業を運営母体とする実業団チームとは一線を画するのだが、チーム誕生の背景には、防水工事を主体に外壁改修工事などを手がける(株)アイ・ディー・エフ(代表・池田和広氏、以下、IDF)の当時の事情が大きく関わっている。
IDFは、2008年に池田和広氏が立ち上げた企業。得意とする「超速硬化ウレタンスプレー防水工法」は、スプレー吹き付けによって超速硬化防水塗装膜層を形成、およそ30分後には歩行が可能となるもので、工期の大幅な短縮と省力化を実現。それまでの技術では、冬場に氷点下に晒される気象条件下で硬化させることが難しかった北海道において、とりわけ普及は早かった。この技術と懸命な営業努力によって、屋上防水やJR高架のコンクリート剥落防止工事など、順調に受注・業績を拡大していく。
池田和広氏の長男、池田憲士郎氏が当社への入社意志を固めたのは2011年。高校時代はバレーボールの強豪校、東海大四高(現・東海大札幌)で鳴らした。「バレーを続けたいという長男の思い、そして社員のワークライフバランスに対する取り組みとして、クラブチーム『アイ・ディー・エフ』の結成に協力した」(池田和広社長)という。東京での3年間の修業を終えた憲士郎氏が入社した2014年、IDFの忙しさはピークを迎えていた。しかし一方では人手が足りず、求人を出してもなかなか思うように人が採れない。社員の高齢化も大きな課題となっていた。

― 今よりも本格的にバレーボールをする環境を整えれば、U・Iターン就職で仲間が戻ってくるかもしれない ―。

憲士郎氏からの提案だった。実は、北海道にはバレーボールの強豪校が存在するものの、次第に実力ある選手を道外校に取られ、受け皿となる実業団チームが存在しない北海道に選手たちが戻ってくることがなかったのである。実際に声を掛けてみると、Uターン、Iターンで7名の社員(選手)が集まった。社員は増え、40代後半だった平均年齢は30代半ばへと一気に若返った。一方、バレーボールにおいては、2014年に「全日本6人制クラブカップ男子選手権大会」に出場するなど、活動の場を広げていく。

競技人口の減少に歯止めを!!

発端は、人手不足の解消とバレーボールを続けたいという思いから始まったのかもしれないが、自社あるいはバレーボールのことだけを考えるのではなく、地域への貢献そしてバレーボール界の発展に対する思いは親子2人に共通していた。
道内では前述した事情から子供たちをはじめ、バレーボールの競技人口が減少していたため、道内各地を巡ってはバレーボール教室を開催するなど普及活動に取り組んだ。
こうした活動が、“トップリーグに加盟できるチームを輩出したい”と考えていた北海道バレーボール協会の目にとまった。
競技の実力、自治体との協力関係、チーム運営の財政的背景、これらハードルをクリアできるチームとして、チームの運営母体となる一般社団法人北海道バレーボールクラブ(理事長 池田和広氏)を2016年10月に設立、同時に『ヴォレアス北海道』を立ち上げた。
翌2017年7月にはVリーグ機構に準加盟チームとして加盟を果たし、同年8月にはチーム初披露のイベントとして旭川市に香港の強豪チームを招き、V-THEATER2017エキシビジョン・マッチを開催、イベントとしての運営に注目され、チームも初勝利を収めた。

スポーツをビジネスとして成り立たせる

2017年11月、チーム運営などを主力事業に(株)VOREASとして切り離し、代表取締役社長には池田憲士郎氏が就任した。元々は時間をかけて少しずつ戦力を補強し、スポンサーが増えてくれば、それに見合ったチームにしていくつもりだったという。しかし、何年も時間をかけて成功した例はなく、いつまでも資金は続かない危機感から、チーム運営を1社の企業に頼るのではなく、「欧米のように、スポーツそのものをビジネスとして成り立たせる」という考えのもと、短期間で魅力あるチームを作り上げる方針へと転換した。

そのためにはまず、試合を観に来てもらわなければならない。
ホームゲームでは、抽選によるオリジナルTシャツのプレゼントやトークショー、和太鼓のパフォーマンス、キッズダンスの披露など、音楽とコラボしたライブエンターテイメントとして、より多くの方が喜び、楽しんでもらうための飲食などの工夫も凝らした。
Vトップリーグよりも高額という観戦チケットには驚かされるが、当然、プレッシャーもある。それでも固定ファンが増えてきているのは、価格以上の価値を観客が感じている証拠。最も高い席にはお宝グッズが置かれているだけではなく、試合後にはコート内に入り選手との握手やサイン、記念撮影が可能なうえ、そのあとの記者会見にも参加することができる。
こうした興行としての取り組みにとどまらず、様々な事業体との業務提携も進めている。昨年10月にはANAホールディングス(株)が出資し、中国市場において越境ECサービスを展開する(株)ACD(東京都江東区)との業務提携を発表。
『ヴォレアス北海道』のスポンサーである北海道内のメーカーやサプライヤーに対し、ACDが運営する『全日空海淘』モールへの参加(商品の紹介や提供の依頼)を呼びかけている。このほか、事業の一環として行っている『ヴォレアスアカデミー』では、廃校となった近隣学校施設の無償貸与を受け、子供たちを対象に、走る・跳ぶ・投げるといった基礎体力・動作の指導を行っているのをはじめ、キッズダンスほか様々なスクールを展開している。この学校施設は(株)VOREASの練習拠点にもなっており、目の前の道路には路線バスの『VOREAS停留所』ができている。
なお、(株)VOREASの活躍・活動が、IDFのバレー関係以外の社員採用をはじめプラスに働いたことは言うまでもない。また(一社)北海道バレーボールクラブでは、地元の教育委員会や学校などの窓口となり、バレーボール教室を開催するなど普及活動を続けており、そのコーチングには(株)VOREASが選手を派遣している。バレーボールの普及を通じた地域とのつながりは、さらに深まっていることを付け加えておきたい。

見据える未来像

(株)VOREASへの注目はバレーボール界の枠にとどまらない。昨年12月に札幌と旭川で、スポーツと一般企業の関わり方などを話し合う『スポーツビジネスサミット』が開催された際には、五輪メダリストのフェンシング・太田雄貴氏や野球界、サッカー界、道内外の有名企業の社長や役員などそうそうたるメンバーを池田憲士郎氏が中心となり招へい。自らもパネリストとして参加し、スポーツビジネスについて熱い議論を繰り広げた。
「クラブチームとその地域の人たちが一体となってスポーツを楽しみ、熱狂し、生活の一部そのものとなっているヨーロッパのように、スポーツを文化として構築する」(池田憲士郎氏)。これが同氏の目指す姿。もっとも、「独り立ちにはまだまだ途上段階」(池田和広社長)と言うように、簡単に成し遂げられるものでもない。バレーボールを通じた活動を中心として、思い描く未来像への挑戦が続く。
ヴォレアス北海道
■運営会社 株式会社VOREAS
■所在地  北海道旭川市東鷹栖4線10-3-12
■代表   池田 憲士郎 氏
■https://voreas.co.jp/

株式会社 アイ・ディー・エフ
■代表取締役 池田 和広 氏
■所在地 株式会社VOREASと同所
■https://www.idf.co.jp/

※本コラムは、弊社が発刊する帝国ニュースに掲載したものを再掲しました

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