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  • 花火業界、冬は何してる? 気になる業界環境はいかに

2019.08.02

河合萌さんの作品『全部青い!!』-第67回津花火大会2018-写真提供公益社団法人日本煙火協会
~Yahoo!ニュース掲載~

もうすぐ夏休みシーズンに突入する。夏の風物詩と言えば、花火。今年も全国各地で花火大会が開催される予定である。日本で現在のような観賞用花火が形づくられたのは江戸時代から。そこから長い歴史をかけ、今新たなエンターテインメントの一つとしても注目を集めている。

一方、美しく咲く花火の裏側には様々な業者の流す汗が垣間見える。今回、帝国データバンク的視点から花火業界を取材し分析した。

花火の歴史

そもそも花火とは法律上では「煙火(えんか)」と呼ばれ、火薬類を燃焼または爆発させることにより、光、音、煙を発生させるものと定義される。

日本における花火の歴史は諸説あるが、16世紀の戦国時代に始まる。鉄砲「火縄銃」とともに黒色火薬が伝わり、現在のような観賞用の花火が登場するのは、江戸時代からと言われている。その後、伊達政宗が米沢城で花火を楽しんだことや、明国の商人が徳川家康に花火を見せたなどの記録が残されており、これを機に武士、江戸庶民へと花火が広がっていったとされる。東京で有名な隅田川での花火は今から約390年前の寛永5年(1628年)に、浅草寺に来た徳川家康と関係が深い僧である天海を、船遊びの際に花火でもてなしたことがはじまりとされ、19世紀の花火技術の発達とともに江戸の年中行事となり、現在の夏と言えば花火大会というイメージの定着につながった。花火が打ちあがった際、定番の掛け声である「たまやー」や「かぎやー」はこのころ活躍した花火師、玉屋市郎兵衛や鍵屋弥兵衛の屋号からとったものであるというのはよく知られているだろう。

底堅く推移している花火業界

今回、企業概要データベースCOSMOS2(147万社収録)から火薬類製造業、煙火製造業、火薬類卸売業を主業もしくは従業としている企業の中から、花火に関連している業者のデータ(爆薬等製造業者は除く)209社を抽出し、分析した。

209社の中で2015年度から2018年度まで3年連続で業績が判明した企業134社の売上高動向を見ると、2018年度の総売上高は150億4900万円となった(前年度比0.2%増)。2016年度以降増加傾向にある。花火業界は、「おもちゃ花火製造、小売り」と「打ち上げ花火製造」の2業種で構成されており、おもちゃ花火業界は、年々拡大する少子化やゲーム機器の普及といった遊び方の変化に伴い、販売本数は減少しているものの、煙が少ない手持ち花火など毎年100種類もの新商品が開発され、急激な売上減とはならず推移している。

打ち上げ花火業界は、花火大会の開催にあたってイベンターと呼ばれる大会実行委員会が組織され、そこから受注し、予算内で花火を打ち上げるという構造にある。伝統を重んじる文化的側面のほかに、近年のITの発達による新しい取り組みが注目され、コンピュータ制御による花火と音楽をシンクロさせた演出方法も年々進化し、より安全かつ、よりエンターテインメント性が高くなった花火大会も開催されている。さまざまなエンターテインメント要素を盛り込んだイベントの開催や、来年の東京オリンピック・パラリンピックの演出花火などこれからも一定の需要は見込める。公益社団法人日本煙火協会の河野晴行氏は「新しいエンターテインメントの一つとして花火業界が活性化することで、本来の花火大会にさらなる価値が生まれ、両輪となって業界を盛り上げていきたい」と語る。
 花火関連業者209社を業歴別に見ると、業歴「50~100年未満」が85社(構成比40.7%)でトップ。次いで業歴「100年以上」の老舗企業が70社(同33.5%)となり、全業種の老舗企業の割合が2.26%であることを考えると非常に高い水準である。

都道府県別に見ると、北海道が15社でトップ。次いで愛知県(11社)、福島県・群馬県・長野県(9社)と続く。愛知県は徳川家康のおひざ元で、直属の火薬製造所があり、鉄砲隊の本拠地であったことから花火が盛んな土地柄として知られ、現在でもおもちゃ花火の製造や販売業者が集中している。各業者それぞれは地場に根付いた企業であり、全国的に社数に大きな差は見られない。

花火業界、夏以外は何してるのか

「花火業界は夏以外は忙しくないのでは?」という疑問を持つ方も多いだろう。実はそうではない。花火業界(打ち上げ花火)の1年は主に4月からスタートする。夏の本シーズンに向けたイベンター(大会実行委員会)が組織され、本番に向けた綿密な準備が行われる。冬場は夏季にできなかった事務処理などを行うほか、クリスマスや新年のお祝いの花火を打ち上げるなどしている。「近年は日本の気候の変化に伴い、1年を通じて花火を打ち上げることが多くなっている」(河野氏)。

社長兼工場長、兼現場監督など1人がさまざまな顔を持つため通期で忙しく全国的に見ても小規模業者が多い。実際に今回抽出したデータを従業員別で見ると、従業員数が判明した174社のうち「1~10人未満」が129社で、企業のおよそ3社に2社が小規模事業者であることが判明した。

昨今、人手不足や後継者不在などが社会的に取り上げられるなか、花火業界は代々世襲制であり現在4~5代目にあたる30代から40代という比較的若手が中心となっている。「近年は化学知識やIT技術を持った若い花火師が育ってきている。さらなる日本の花火業界の発展に期待したい」(河野氏)

老若男女問わず楽しめる花火は、人々の心を癒す日本の文化を象徴するものの一つであると言える。また、世界的に見ても日本の花火は安全かつ最も精巧で情緒あふれるものとして絶賛されている。
今年も全国各地で花火大会が開催され、令和初の夏の夜空をきっと明るく照らしてくれるだろう。
取材協力:公益社団法人日本煙火協会 専務理事河野晴行氏
本記事は2019/7/16にYahoo!ニュースに掲載されたものです。

過去のYahoo!ニュースでのリリース記事はこちらからご確認いただけます。
https://news.yahoo.co.jp/media/teikokudb

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