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  • クラウドファンディング ~新たな資金調達法~

2019.08.01

[企業審査人シリーズvol.190]

忙しい午前中の業務が一段落し、昼休みの食事を終えた木下は、自前のタブレット端末の画面を眺めていた。この日の木下が眺めているのは、とあるクラウドファンディングのポータルサイトである。「群衆」を意味するクラウド(crowd)と、「資金調達」を意味するファンディング(funding)を組み合わせた造語であるクラウドファンディングは、プロジェクトの実施者がインターネットを通じて広く資金調達を募る仕組みである。解説好きの木下なら、「日本語で書くと誤解されるのですが、クラウドは最近流行のcloudではなく、crowdなんですよ」と言いそうである。それはともかく、新しいもの好きでもある木下は、クラウドファンディングの新規プロジェクトのチェックを最近の楽しみとしている。そこに、遅めの昼食を終えた審査課の青山が通りかかった。
「おっ、木下さんが見ているその製品・・・おしゃれなデスクライトのような・・・何ですか?」
経理部のカウンター越しに、木下のタブレットを覗き込んでいる。
「これはスキャナーです。最近、公私ともにペーパーレス化をしたいので、投資しようか迷っているんですよ。冊子のままでも歪みを補正してスキャンしてくれるスグレモノだそうですよ」
「投資って・・・ああ、クラウドファンディングですか。木下さん、クラウドファンディングやるんですね!」
「最近始めたばかりですけどね。日本では購入型のものが多いので、手を出しやすいんですよ」
「新商品を開発するために呼びかけるタイプですね。僕はたまにスマートウォッチのやつを見ます」
「提供した金額の大きさに応じて、複数のリターンが用意されているプロジェクトが多いですよね」
「そうそう!商品そのものを想定した市販価格より割安で購入できるプランが多いですね」
「私は、財布やバッグに入れておくと、万一落としたときに場所が特定できるという、カード型のトラッカーに支援したことがありますよ。少額ですけどね」
「へえ!ところで、このような購入型のものは、会計上はどう処理するんですか?」
何の話をしていても必ず会計上の処理が気になる青山が、ハードな「会計マニア」なのか、はたまた木下を前にすると反射的に会計的質問をしてしまう「パブロフの犬」状態なのか・・・それは定かではない。
「プロジェクトを進めている企業側においては、通常の商品販売の前受となるケースが一般的と考えられます。商品やサービスを提供した時に、前受金を売上に計上するといった処理になるでしょう」
「なるほど。特殊な会計処理ではないんですね」
「そうですね。会計上は以前からあった考え方ですが、ネットを駆使した資金調達手法として注目されている、ということなのでしょう。ポータルサイトや関連企業がかなり立ち上がっていて、クラウドファンディングの数も増えてきましたが、われわれが仕事上こうした業者を扱うことはまだありませんからね。私も前職の会計事務所時代に、このようなスキームを用いたクライアントはありませんでしたし・・・」
「うちみたいな業界だと、余計にイメージができませんが・・・クラウドファンディングがもっとメジャーな資金調達手段になってきたら、お目にかかることもあるんですかね」と、青山が遠くを見る目をしている。
「もしそうなったら、プロジェクトの規模や期間を検討して、その他の負債とのバランスなんかを見ていくことになりそうですね。出資する側として考えると、資金調達の目的がはっきりしている反面、きちんとリターンが受けられるか、あやしい会社・団体ではないか、といった調査が必要になりますね」
「ところで、クラウドファンディングには購入型以外にも寄付金のようなものもありますよね」
「寄付型というものですね。購入型のようなリターンがない、社会貢献のようなタイプです。ちょっと前に、膵臓がんにおける新たな治療法確立に向けて、治験のための資金を呼びかけた事例が話題になりましたね」
「ありましたね。製薬会社や公的機関からの資金獲得が難しくて、クラウドファンディングにしたんですよね」
「それも寄付型の一種と思われます。なお、企業会計上は寄付金の受贈益計上になるでしょうが、支援者サイドで寄付金控除が使えるかどうかといった税務上の扱いはケースによって変わってくるようです」
「社会的意義のあることに自分のお金を活かしたい、という寄付型の潜在ニーズも多そうですね」
「少額だったら協力できる、という人に小口のプランが用意できるのは、クラウドファンディングという仕組みが持つ強みでしょうね」
「購入型、寄付型以外のタイプもあるんですか?」
「貸付型や株式型、ファンド型など、会計上馴染みがあるタイプもあります。貸付型ではプロジェクト実施者側が借入金を計上し、プロジェクト終了後に利息を付けて返済します。株式型やファンド型は新株を発行してリターンが配当金になるタイプが一般的だそうです。これらはまとめて金融型と呼ばれますが、各タイプの呼称も含めて、運営主体によって少しずつ違うこともあるみたいです」
「金融型の募集はあまり見た記憶がないですね…」
「そうですか?私は『目標リターンが1.1倍の劇場オリジナルアニメ制作応援プロジェクト』という募集を
見かけたことがありますよ。購入型以外も徐々に一般的になるんでしょうね」「さすがマニアックな木下さん、
いろいろチェックしていますね!」
「単純にリターンだけを目的とするんじゃなくて、出資者みんなの”応援したい”という気持ちがクラウドファンディングの熱いところです」と、クールな木下がホットなことを言った。
「そうそう。映画系だと、エンドロールに出資者の名前が掲載されたり、完成披露試写会に集ってお祝いをしたり、プロジェクト達成の喜びを一緒に味わえるそうですね」
「でも、すべてのプロジェクトがうまく行くとは限らない、というところが厳しい現実です。集めたい目標金額に達成せずにプロジェクト自体が開始できないケースや、集まった金額の範囲内にチャレンジを縮小するケースもあるようですから、投資する側も目利きが必要です」
「なるほど。目利き力を鍛えるにはクラウドファンディングに参加するのも良いかもしれませんね。私もまたダイエット・プロジェクトを再開しようと思っているんですが、ダイエットグッズ購入資金を出資してくれませんか?」
「それは完全にリターンが見込めない寄付型じゃないですか…。まずは独力で実績を作ってください!」

クラウドファンディングの形態

会話中にあったように、クラウドファンディングは「購入型」「寄付型」「金融型(貸付型や株式型、ファンド型)」に大別されますが、各々の会計的な考え方自体は従来から存在していました。日本でもクラウドファンディングのポータルサイトが複数立ち上がり、その資金調達の呼びかけがSNSを通じて拡散されやすい環境になったことも手伝って、話題や注目を集めるプロジェクトが増えています。昨今の主流は「購入型」といわれているものですが、特定のポータルサイト内で使える独自の仮想通貨を購入した上でプロジェクトに資金提供する方式など、その形態は多様化が進んでいます。日常的な企業審査のシーンにおいて、クラウドファンディングにお目にかかることはまだ少ないかもしれませんが、企業の資金調達手段の多様化の潮流として、チェックはしておきたいところです。

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