最新コラムをお届け メールマガジン登録
お問い合わせ
  • TOP
  • コラム
  • 企業審査の今 ~「与信管理最新事情2019」より~

2019.09.26

[企業審査人シリーズvol.194]

 調査会社の調査員・横田との面談を終えた青山が、審査課に戻ってきた。審査課長・中谷の「調査会社は使い倒す!」という方針(?)により、調査会社の横田は情報を持ってウッドワーク社に立ち寄ることが習慣化されている(躾けられている)が、この日は青山に審査で相談したいことがあり、立ち寄ってもらったのだった。
 いつもは同席する課長の中谷は社内の会議とバッティングしていたため同席しなかったが、青山が席に戻ると会議を終えた中谷がすでに席についていた。
 「それで、気になっていたことは解消したの?」
 「はい。中国の親会社のことが気になっていたのですが、横田さんがいろいろ調べてくれて、まあ堅い会社だということがわかったので、それで一応審査を通すつもりです。ありがとうございました。それはそうと、横田さんからお土産を預かりましたよ」
 青山がA4のカラー刷りのリーフレットを中谷に渡した。
 「与信管理最新事情2019…3,000人の声が集結。ああ、去年横田さんが持ってきてくれた与信管理担当者のアンケート結果ね。去年よりタイトルが派手になったわね。ちょっと一緒に見ましょうか」
 そう言って中谷が横の会議スペースに向かうと、青山も付いていった。ちょうどひと仕事終えた様子だったベテランの水田も開けようとしたせんべいの袋を置いて、会議スペースにやってきた。同僚の秋庭は遅めの夏休みで不在だが、有能なアシスタントである千葉がいるので安心だ。
 会議スペースの円卓に、資料を開く中谷を真ん中にして、横田と青山がそれを覗き込んでいる。
 「さて、貸し倒れリスク・・・最近1年間で債権回収におけるヒヤリハットの有無、ノーマーク先の売上債権不良債権化の有無、具体的に心配な取引先有無・・・どれも年々減っているのね」
 「倒産件数が減っているし、景気も悪くないですからね、とくにうちらの建設関係は・・・」
 早速ページをめくりはじめた中谷の手元を覗きながら、青山が相づちを打った。
 「でも最近は粉飾決算で倒産する中堅どころが増えておるようじゃ。円滑化法と好景気、銀行の貸出競争で審査が緩くなってきた影響がここにきて出てきているのかもしれん。油断はできんぞ」
 「水田さん、そうですね。ああ、今後1年以内の倒産件数推移予測というのが出てます。3分の2以上が、倒産は増加すると予測しています、と書いてあるわ。私もそういう感触だけど、みなさんそうなのね」
 「与信管理規定の運用・・・取引先1,000社以上の会社は4分の3が規定に基づいて運用している。まあ、そうでしょうね。取引先が少なければいいけど、多いとやはり体系的な管理が必要になるわね」
 「でも、さっき横田さんと少し話をしてたんですけど、今回の調査では、過去2回に比べて与信管理規定を運用していると答えた会社が減っている、という結果だったんですって。まあ、回答者が毎回違うので一概に減っているとは言えない、とは言っていましたが・・・」
 「そうなんだ。でも、さっきのヒヤリハット体験、不良債権じゃないけど、倒産も少なかったし、与信管理についてのマインドが少し低下しているのかもしれないわね」
 「与信管理規定はどういうものを作っていいのか、他社の事例があまり出回っていないから、作るまでのハードルが高いというのもあるんじゃろう。わしも最初にうちの会社に入れるときは総合商社の審査部に聞きにいったり、苦労したもんじゃ。調査会社の横田さんのような人が、もっと教えて回らないとダメじゃな」
 「へえ、うちの規定を作ったのは水田さんだったんですね!」と、青山が少しまぶしそうに水田を見た。
 「会社の規模が大きくなって、審査課が作られて最初の仕事がそれだったんじゃ」
 「そうそう、それを見直して、見直して今の規定になっているのよ。水田さんは審査課の生き証人ね」
 「生き証人じゃが、次にある取引先データ管理、これを進めたのは中谷君じゃ」
 「取引先データ管理方法・・・去年の資料にこんなの、あったっけ?Excel・Accessでの運用・・・結構多いのね。うちもワークフローに組み入れる前は、千葉ちゃんが組んでくれたAccessで運用してたものね」
 「このあたりも水田さんが言うように与信管理業務について各社のバリエーションが多いから、あまりパッケージ化が進まないのかもしれませんね」と、青山が真面目なコメントをすると、中谷も相づちを打った。
 「申請とか承認とかいった業務設計はある程度システム化できると思うけど、取引可否の基準や与信限度額といったところは、それぞれのリスクに対するスタンスで変わってくるからね」
 「近頃のように粉飾決算が多いと、企業の目利きも助けてくれるようなシステムが必要かもしれんな」
 「あら、水田さん、企業の目利きは究極の人間の仕事だって言ってませんでしたっけ?あら、こんなのも載ってるわ、与信管理業務へのAI・RPA活用状況!」
 「へえ、すでにAIを活用している企業が、あるんですね!数は少ないけど、あるのが驚きです。RPAは業務処理の自動化でイメージできますけど、AIの方はそれこそ信用判断に使っているんですかね?」 
 「銀行とかクレジット会社ではAI審査の話題を聞くけど、個人の審査が主体だと思ってたわ」
 「企業だと取引口座のお金の動きをデータとして活用してるって、何かで見たことがあります。まあ、AIもまだ普及期で技術水準もコストもあまり定まってないから、試行錯誤している、ということですかね」
 「そうね。でも、AIもRPAも、活用する予定はないが興味はある、という回答が70%以上あるから、10年後の企業審査では当たり前のように使われているかもしれないわね」
 「その頃にはわしも引退じゃな」と、水田が少し放り投げるような、淋しそうな感じで言った。
 「そうなると、僕の仕事もなくなっちゃうじゃないですか!」
 「なくならないわよ、安心しなさい。企業経営を人間がやる限り、人間の見立ては必ず必要になるわ。粉飾決算だって、粉飾決算を見抜けるか、よりも粉飾をやるような経営者か、を見抜くのが本質なのよ」
 「中谷課長、さすが心強い!」
 「でも、10年後には会社に私のロボットを置いて、大抵のことは私の経験値を学習したAIが自動応答、困ったときだけ家にいる私に音声で問い合わせる、というのが私の夢なのよね」
 「そんなことはさせません!(させんぞ!)」と、青山と水田の声がハモると、真ん中にいる中谷は苦笑するでもなく、真面目に残念そうな顔をした。青山は中谷の眼鏡をかけた、白い人型ロボットを想像していた。

「与信管理最新事情2019」

話に登場した「与信管理最新事情2019」は、2019年6月に弊社が実施した「与信管理実務アンケート」をまとめたものです。アンケートにご協力いただいたみなさまには、この場にて改めて御礼申し上げます。与信管理業務はバリエーションが多く、こうした統計資料は希少です。自社の業務設計や見直しの参考として、ご興味がありましたら、以下ページからダウンロードしてください。弊社では今後も、各社の与信管理実務をサポートする情報を提供してまいります。


与信管理最新事情2019 ~3,000人の声が集結~のダウンロードページ

<<一覧に戻る

TDBカレッジ知識度チェック

【問199】上場している有報提出企業のうち、IFRS適用済会社数(2019年8月末現在)として最も近い社数は次のうちどれでしょう?

  • Recommend

    講師一覧

    クリックすると、このホームページ運営企業がTDB企業サーチで表示されます。
    TDB企業コード:986700000
    PAGE TOP