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2019.09.20

木村社長(中央)とカヌー・羽根田卓也選手(右)、空手・清水希容選手(左)
~SUPPORTERS スポーツを支える企業~

選手ファーストを貫く個人アスリート支援のパイオニア ミキハウス(大阪府八尾市)

リオ五輪カヌー競技でアジア初のメダル獲得となった羽根田卓也選手をはじめ、競泳男子平泳ぎで世界選手権に出場した小関也朱篤選手、世界選手権で2連覇を達成した空手女子形の清水希容選手など、東京五輪でメダル獲得が期待される選手が多数所属しているミキハウス。7月13日には、男子シンクロ板飛び込みで寺内健、坂井丞組が五輪代表第1号に内定した。これで、バルセロナ大会以降8大会連続で五輪代表選手を送り出すことになる。

今回の「SUPPORTERS-スポーツを支える企業-」は、個人のスポーツ選手をサポートし続けて約30年になるミキハウスのスポーツ支援の取り組みについて、これまでの道のりとその根底にあるポリシーについて探った。 (大阪支社情報部)

きっかけは工場の女子従業員が結成した ソフトボール部

ミキハウスのスポーツ支援の歴史は昭和50年代にさかのぼる。当時は自社工場を持っており、そこで縫製する女性従業員が多く働いていたが、福利厚生の一環でソフトボール部があった。ある時、地元大阪・八尾市の大会に出場したところ、大敗を喫する。それを見た社長が「これはあかん、試合に出るのもご迷惑だ」と考え、「ソフトボールをできる子を採用してやろうやないか」と強豪校のソフトボール経験者を積極的に採用し始めたのが発端だという。そのうちに、高校の間で「あそこはソフトボール部員を採用してくれる」と評判となり、選手はもとより指導者にも来てもらい、チーム力は向上、ついには日本リーグ1部に昇格、優勝を何度か経験する強豪チームに上り詰めた。
このソフトボール部でのミキハウスの活躍ぶりを見た他の競技関係者から、選手を支援してほしいと声が掛かるようになった。競技によっては、高校、大学を卒業した後に競技を続ける環境がないケースも多い。そうした要請をひとつひとつ引き受けていった結果、一人ずつ支援選手が増えていった。

選手の自己実現を支援

個人アスリート支援の始まりはマラソン選手の入社だというが、現在のオリンピック選手を多数輩出するような状況のきっかけとなったのは、1989年(平成元年)にソウル五輪から3大会連続でメダルを獲得した女子柔道の田辺陽子選手が入社したことだ。
選手は基本的に全員、社員として採用する。支援を始めた頃は業務を行いながら競技もするというパターンであったが、田辺選手が入社して以降は、「オリンピックでメダルを取るような選手に仕事をさせることに意味があるのか。仕事をさせることで練習時間が十分に取れずに試合に負けてしまったら本末転倒ではないか」との考えから、基本的に選手には競技に専念させている。中には「生活のリズムをつくるために週に3日は午前中だけ仕事をしたい」という選手もいるという。

その場合も、ミキハウスは選手の意思を尊重し、選手の要望に応じた環境を提供する。ルールを細かく設けるのではなく、選手個々の要望に柔軟に対応している。選手の夢を応援しているのだから、その夢を叶えるのが選手の仕事だ、という考えが根底にある。ミキハウスのスポーツ支援の目的は、選手の自己実現を支援することで、選手ファーストが貫かれている。こうした「選手ファースト」の支援姿勢がアスリートにとっての大きな魅力となり、数々の実績からメディアでも大きく取り上げられた結果、今では支援してほしいという手紙が履歴書と成績表付きで年間100通近く届くという。

ミキハウスの支援競技には卓球も含まれている。卓球選手を支援する際には実業団リーグから加入の誘いがあったが、きっぱり断った。実業団リーグからは、卓球部を作ったのになぜリーグに加入しないのかと訝しがられたという。ミキハウスは実業団リーグに入って優勝し、企業名をPRすることを目的としていない。
それよりも世界で活躍する選手になり、五輪のような大きな舞台で結果を出すという選手個人の夢を叶えることを目標としているため、国内リーグよりも海外選手と切磋琢磨できる国際大会を主戦場とした。当初は異端視された活動も、平野早矢香選手、以前在籍した石川佳純選手、福原愛さんなどの活躍により、世界での活躍には近道だと認められるようになり、3人がロンドン五輪の銀メダルを団体で獲得するなど、今の卓球界の隆盛の一助となったと言われている。

マイナー競技中心に支援するわけとは

グループ新年会では所属選手が一堂に会した
木村皓一社長は幼少期、体が不自由で運動するのも困難だったことから、一生懸命スポーツに取り組んでいる若者に対する思いは人一倍強いという。それがスポーツ選手の支援という形で具体化していった。その結果、現在では34人の選手が所属するという、アマチュア・アスリート支援企業に発展した。

ミキハウスが支援するスポーツ選手の種目は柔道、競泳など14競技に及ぶが、テコンドー、空手、カヌーなど競技人口が少ない、いわゆるマイナー競技が多い。そもそもミキハウスは、スポーツ支援を行うにあたって企業名の浸透を図りたいといった目的を持って始めたわけではない。スポーツを続けたい選手がいて、その実現のお手伝いをしているという立ち位置である。

支援する範囲にはおのずと上限がある。そのため、社員として採用し、通常の業務にはあたらせず、競技に専念させ、遠征の際は出張扱いで旅費を支給するなどして経済面の不安をなくし、競技に専念できる環境を提供することに特化している。普段練習する環境はこれまで競技を続けてきた大学などの設備を使ってもらい、ミキハウスでは特に施設は整備していない。マイナー競技は学校を卒業した後に練習環境を失うことが多く、マイナー競技の選手ほど支援がなくて困っている。ミキハウスはそうした選手に支援の手を差し伸べる。

選手と社員の間に生まれる「いい関係」

アスリートを支える経営企画部の澤井英光取締役本部長(右)と小川副部長(左)
ミキハウスでは、できるだけ選手と社員の接点をつくるような環境づくりを心がけ、選手にはイベントを開く際にはできるだけ参加するように促している。また、オリンピックなどの大きな大会でメダルを獲得した際には帰国後、祝勝イベントを本社1階のロビーで行うが、その時は大きな横断幕を作って迎え、大いに盛り上がるという。社員がメダリストの周りに駆け寄り、順番にメダルを首からかける様子が見られる。

このように選手を身近に感じることで、社員には自然と応援しようという気持ちが湧いてくる。「一緒に働く社員の中からオリンピックのメダリストが出てくることには社員としても喜びや誇りを感じるでしょうし、同じ会社の仲間として自分も頑張らなきゃという気持ちになり、色々な面でプラスに働いていると思います」と澤井取締役はその効果を実感している。選手側からしてもこんなに応援してもらっているのだという気持ちが励みになり、練習にも熱が入る。こうした社員と選手との間に育まれたいい関係が、ミキハウスの大きな財産になっている。

アスリート支援は子供たちの夢を応援し、 社員のやりがいと誇りを醸成する社会活動

東京五輪内定第1号となった寺内健選手(右)・坂井丞選手(左)を本社に迎えて
前回のリオデジャネイロ五輪では、ミキハウスの所属選手が5つのメダルを獲得した。あと1年後に迫る東京五輪でも、男子シンクロ板飛び込みで寺内健、坂井丞組が日本代表内定第1号となり、これで1992年のバルセロナ大会以降8大会連続で代表選手を送り出す。いずれの大会もメダルを獲得、その数は合計20個にのぼる。東京大会で何個のメダルを獲得するのか期待が集まるが、目指すのはメダルの数ではない。ミキハウスにとってアスリートの支援は、目標に向かって精一杯努力する選手の姿を通して、自分自身の夢を諦めずに追いかけてほしいという子供たちへのメッセージであるとともに、世界を相手に戦うアスリートを自分達が支えているという社員のやりがいと誇りを醸成する、二重の意味での社会活動なのである。
三起商行株式会社(ミキハウス)
■TDB企業コード:580722887
■法人番号:2122001020186
■所在地 大阪府八尾市若林町1-76-2
■資本金 2,030,433千円
■代表 木村 皓一 氏
■URL https://www.mikihouse.co.jp/

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