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  • 財務的な強みと休廃業リスク ~地味だけど良い会社~

2019.10.24

[企業審査人シリーズvol.196]

その日の昼休み、経理課の木下が休日の旅行土産を持って審査課にやってきた。芋を使った一口和菓子を見た審査課の青山がうれしそうな顔をしている。食いしん坊だから、ではなく芋菓子が好物なのだ。
「木下さん、ありがとうございます!どこのお土産ですか?」
「よくぞ聞いてくれました、茨城県は日立市の銘菓です」
「茨城ですか?旅行先としては何とも微妙な距離ですね。茨城県は確か、魅力度ランキングが低い県として取り上げられていたような・・・」
「そうです。茨城県の方々には少々恐縮ですが、堂々の7年連続最下位だそうです」
「僕の中では、茨城県のイメージは水戸納豆・・・のほかに、あまり思い浮かびません・・・」
「青山さん、それは人生の損というものです。お土産の日立市にはパワースポットとして注目を集めている御岩神社がありますし、笠間市には日本三大稲荷の笠間稲荷があります。牛久にはブロンズ立像として世界最大の牛久大仏もあります。それに、人気アニメの舞台になった大洗も賑わっていますよ」
「そうなんですね!観光大使並みに詳しいじゃないですか。これだけ宣伝してくれる木下さんに来てもらって、茨城県はよかったですね」
「大げさに言っているわけじゃなくて、ホントに良い旅行でした。あまり注目されていない場所にこそ、発見や感動があるというものです」
「木下さんらしいですね。そういえば、似ているようで似ていない話として思い出しましたが、昨日営業部の谷田君と会ったときに、地味だけど良い会社を探せないか、と相談されました。新規開拓に苦労しているんでしょうね。僕も営業部時代に苦労しましたから」
「会計事務所の頃のクライアントには、小さいけど独自の強みがある会社が多かったですよ」
「でも、考えてみると、そのような会社を見つけ出すのは難しいですよね。決算書からキャッシュ・リッチな会社を探してはどうか、という話になりましたが」
「キャッシュ・リッチと言っても、明確な定義はないですよね。単純に月商の何ヶ月以上の現預金をもっているから良い、とも言いきれません。とくに上場企業なんかは、投資戦略やビジョンが固まっていなくて資金を有効活用できていない、という評価をされることがあります」
「そうなんですよね。決算書の数値から候補リストは抽出できても、そこからの絞り込みが必要ですよね」
「良い会社なら、単純にお金を持っているか、だけではなくキャッシュフローに着目したいですね」
「そうですね。営業CFが継続的にプラスになっているか、フリーCFがマイナスであっても営業CFと投資CFのバランスはどうか、というところですよね。キャッシュの観点以外で、中小企業ならではの定量面のポイントって、何かありますか?」
旅行の話がいつの間にか決算書の話になっているが、まあいつものことである。
「意外かもしれませんが、効率性指標である固定資産回転期間は、大企業よりも優秀な数値が算出される中小製造業が少なくないんですよ」
「固定資産回転期間って、設備などの固定資産をどの程度有効に活用したかを判定する基準ですよね」
「そうです。私は前職で、美容室向けなどに特注家具を作っている家族経営の会社を担当していましたが、旋盤などの固定資産は古くて減価償却はとっくに終わっていました。それでもしっかり手入れされていて、機械はまだまだ使えるし、結局は職人の腕だと社長も話していました」
「なるほど。そうすると固定資産の計上額は少額で、導き出される指標が良くなるんですね」
「ただ、決算書上は設備投資のための資金を捻出できないケースも同様の結果となるので、分析結果だけで判断するのは難しいということになりますけどね」
「やはり定性的なところを見ていかないと、機械的なリストアップは難しそうですね」
「他社にない独自の技術があって、借入も少なく、現預金もしっかりもっている…からと言って、安心できないんですよね。とくに属人的な部分が大きい中小企業ほど、定性的なリスクが大きくなります」
「先日調査会社の横田さんが言っていましたが、倒産よりも後継者問題や人材不足で休廃業や解散に至るケースが増えているそうですね」
「休廃業の場合は倒産のように売上債権が焦げ付くことは基本的にはありませんけど、商流への影響は避けられませんよね。仕入先でも販売先でも代替先の確保が問題になります。とくに町工場は職人技で容易に代替先が見つからないようなケースもあるので、途絶すると痛手になるという会社は多いと思います」
「僕が営業部時代に担当していた会社で、ご主人が亡くなって奧さんが社長になった建設会社がありましたけど、借金があるからやめられない、という話をしていたのが印象的でした。私たちのような会社は廃業もできないんだって、ぼやいていましたよ」
「人材不足や巷で2025年の崖と言われている問題に対して、先を見越した政策が必要ですね。中小零細企業の貴重な技術が途絶えないように、技術マッチングなどの機会も増えていくと良いのですが・・・。そういえば、技術ではありませんが、茨城の旅行で地場産業に出会いましたよ。茨城県は御影石の産出で有名だそうです。笠間市にある石切山脈で採掘された稲田石は、国会議事堂や最高裁判所、東京駅にも使われているそうです。私は採掘現場も見学してきました」
「それはスゴいですね!僕も建材商社に勤める人間なので、一度見ておきたいです」
「実は私の今回の旅行はサイクリングが目的でした。茨城県内には良いサイクリングコースもありますし、次は一緒に自転車旅に行きませんか?100kmを超える長距離、なかなか達成感がありますよ!」
それを聞いた途端、自らの発言を後悔した青山は御影石のように固まったのであった。

休廃業予測モデル「QP」

中小企業庁は、2025年に日本企業全体の3分の1にあたる127万社が、後継者不足などによって廃業リスクに直面すると試算しました。TDBの調査では、2018年(1~12月)の休廃業・解散件数は全国で2万3,026件であり、これは実に倒産件数の2.9倍にあたります。取引先が休廃業した場合、製造業であれば重要な商製品の停滞に加え、代替品を探すために労力を割くことになります。倒産と休廃業を分けるのは「負債を清算できるか」にあり、後継者不足の問題が倒産・休廃業の両方の増加要因になるのは避けられません。
一方で、休廃業や解散を検討している会社には、事業継承や資産売却といった潜在的なニーズがあるのも確かです。TDBでは、蓄積してきた企業情報データベースから、企業が1年以内に休廃業・解散する確率を予測し、数値化した休廃業予測モデル「QP」を開発しました。算出結果は10段階のリスク格付「QPランク」として提供しており、企業コードのほか住所・業種・QPランク等による条件指定が可能です。ご興味があれば、詳細は案内ページをご覧ください。

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