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  • “ナッジ”で労働の質を向上させる ~景気のミカタ~

2019.12.20

人の労働は経済成長に貢献しなくなるのか・・

今回の景気のミカタは、人口減少が進むなかで、イノベーションとともに経済成長を促す“労働の質”向上について焦点をあてています。

人口減少は経済基盤を大きく揺るがす

図表1 2020年景気の懸念材料
企業の半数近くが人手不足を感じている状況のなか、景気を悪化させる懸念材料として「人手不足」はトップにあげられていました(帝国データバンク「2020年の景気見通しに対する企業の意識調査」。図表1)。人は、企業経営においてはヒト・モノ・カネという経営の三要素であり、マクロ経済においては労働・資本・技術進歩という経済成長の源泉となります。

そのため、日本の人口が減少を続けることは、経済基盤を大きく揺るがす事態といえるでしょう。こうした事態を回避するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用した、自動化・省力化に向けた取り組みは一段と加速するとみられます。

イノベーションが経済成長を促す最大の要因

図表2 経済成長における労働の質とTFPの寄与度
こうしたなかで今後、何が経済成長を促していくのでしょうか。こうした問いに最も中心的な回答は、イノベーションを通じて生産性を引き上げることと言えるでしょう。実際、1990年代後半以降における経済成長の多くは、技術進歩(全要素生産性、TFP)によってもたらされてきました(図表2)。とくに2010年から2015年にかけては、経済成長率のうちおよそ8割がTFPの向上によるものでした。そのため、経済が成長するためにはTFPの成長が欠かせません。

他方、生産年齢人口は1995年をピークに減少を続け、経済成長を下押しする要因となっています。そのため、政府は、今後の経済成長のために女性や高齢者、外国人などを含め、より多くの人材が労働市場に参加できるような政策を打ち出しています。

もちろん、これらも重要な政策ですが、労働力に関しては人口の数だけをみていては捉えられないもうひとつの大切な視点があります。それは「労働の質」の向上です。労働力は人数という量や労働時間だけではなく、各人の持つスキル(質)から計測されます。したがって、人口減少や長時間労働の是正が進むなかでは、労働の質を高めることが必要不可欠です。

「労働の質」は“ナッジ”で向上させられる

労働の質は、教育や企業内職業訓練などによって高まると考えられます。労働の質が高まることにより、労働者の生産性が高まり、高付加価値の商品・サービスを提供することが可能となります。しかし、労働生産性をいかに高めるかは、各社・各人にゆだねられているところが大きいのが現状でしょう。

企業はさまざまな工夫を重ねながら従業員のスキル向上を図っていますが、“ナッジ”を駆使することでより効果的となるでしょう。“ナッジ”とは行動経済学で「肘で軽く突く」という意味で、情報提示の仕方や選択肢を適切に設定することで、本人が意識することなく望ましい選択へと誘導することです。

例えば、社内表彰制度では、インセンティブに金銭ではなく経験(旅行や食事券2人分など)を支給した方がスキル向上の努力は長く継続することが知られています。また、新入社員のために簡単なチェックリストを用意したことで、研修期間を1カ月短縮することに成功したという事例もあります。これらは、何ら強制することなく、従業員の背中を少し押しただけで、効果を高める方法といえるのではないでしょうか。

労働の質は、1970年以降、緩やかながらも向上しています。また、図表2をみると、TFPや資本設備などがマイナスに影響することもあるなかで、労働の質は一貫して経済成長率を押し上げてきました。ただし、近年、労働の質の伸び率がやや鈍化していることは懸念材料です。
とはいえ、今後も人手不足が続くとみられるなかで、ヒトへの効果的な投資の重要性が増していることは間違いないと言えるでしょう。

(データソリューション企画部 産業データ分析課 窪田剛士)

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