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  • 外出・営業自粛が飲食店に及ぼす影響

2020.06.10

[企業審査人シリーズvol.217]

緊急事態宣言が段階的に解除されたが、都内に本社があるウッドワーク社は引き続きテレワークを中心とした輪番出社体制を継続している。その日、当番で出社していた経理課の木下がお弁当を手にリフレッシュコーナーに行くと、すでに審査課の青山が窓に向かった席に陣取っている。従来はカウンターのような固定席と、半円をつなげた形の丸テーブルがいくつか並び、丸テーブルにはそれぞれ4つの椅子が置かれていた。しかし緊急事態宣言後は、丸テーブルは半円に分解され、直線側を壁に寄せる形に置き直されていた。椅子もひとつの半円テーブルに2つずつ、窓に向かって座るように置かれている。ソーシャル・ディスタンスである。ちなみに青山の前にはいつものように、おにぎり3つとカップ味噌汁が置かれていた。巣ごもりによる運動不足が取り上げられても、本人にダイエットの意志がないことを示している。
「木下さん、一週間ぶりですね。今日はお弁当ですか…、コンビニで買ってきたんですか?」
「今日は、近くの炭火焼き肉のお店がテイクアウトをはじめたというので、焼肉弁当を買ってみました。前から行きたいと思っていたお店ですし、なくなってしまうと悲しいので、微力ながら応援したいと思いましてね」
「ああ、あのお店も始めたんですね!飲食店は外出自粛や休業要請で売上が減っているので、多くの店がテイクアウトに力を入れているようですね。僕の近所のお店もやっていて、在宅の日に何度か利用したことがあります。ただ、人気店になるとお昼に思いのほか人が集まってしまうことがあって、ちょっと戸惑いました」
「私は一人暮らしなので、たまにレシピサイトを活用しながら料理することもあります。ただ、毎日続けるのは大変ですからね。昨日、営業課の石崎さんと少し話しましたが、彼はいつものテイクアウトやコンビニの食生活から何も変わらないと言っていました」
「僕はまだ実家なので、休日は親が昼食を作ってくれますけど、在宅勤務の平日は自分の部屋にこもりきりなので、お昼も自分で何か買いに行くことにしています。たまに料理を手伝いますが、小さいお子さんがいる家庭は学校が休みで、一日三食作るお母さんはとても大変そうですね」
「テイクアウト需要は増えていますが、それでも飲食店の経営は厳しいという声を聞きます。今日、お弁当を買った炭火焼き肉のお店の店長に聞いてみましたが、大変そうでしたよ。夜8時にお店を閉めるように時短営業をしているそうですが、オフィス街なので、夕方以降ににお客さんが入ってくることがほとんどないそうです。平常営業に戻ったらぜひ食べに来てください、と念押しされました」
「平常時の売上を確保するのは難しいですよね。売上が減っているのに家賃といった固定費を捻出するとなると、蓄えを削るしかないですからね。私の地元の先輩で複数の店舗を運営している人がいますけど、社員の休業手当などの工面もかなり大変そうです」
二人の会話は、テイクアウトを入り口として、いつもの会計的な内容へと発展しようとしている。
「雇用調整助成金の支給は休業後ですしね。テイクアウトを始めるにしても、お弁当の容器や『テイクアウトやっています』というのぼりなど、出費が先行しますからね。自治体が助成金を出すケースもあるようですが」
「もともと居酒屋などのお店はドリンクの利益率が高いと聞いたことがあります。なかなかテイクアウトでは穴埋めにならないでしょうね。使い切れない食材の廃棄も発生してしまいそうです」
「最近はお弁当のテイクアウトだけではなくて、食材やボトルワインを販売しているお店も見かけましたよ。いわゆる、フードロス対策の取り組みもよく見るようになりました」
「飲食店が休業してしまうと、食材を作っている農家の方などの売上にも悪影響が出てしまいますからね。手広くやっている卸売業者は飲食店向けが減少している分、スーパーマーケット向けが増えて、全体として前期並みを保っているところが多いと、先日調査会社の横田さんが言っていました。確かに、人間の胃袋は変わりませんから、食材がどこを経由して口に入るかの違いではありますね」
「北海道庁が、食品製造業者支援のための食品通販サイトをオープンしていましたよ。新鮮なカニやいくらを直送してくれるので、私も買ってみようと思いましたが、一人では食べきれそうにないので保留しています」
「僕もSNSで拡散されているのを見て買おうと思ったら、売り切れになっていましたよ」
「SNSで思い出しましたが、テイクアウトできるお店を地図上に表示するアプリやサイトもいくつか立ち上がっていますね。お店側ではなくユーザーがサイトに推薦登録する仕組みを取り入れているサイトもあるそうです」
焼肉弁当を食べ終えた木下は、口臭予防のタブレットを飲み込み、続いてティーポットから紅茶をいれた。青山はどこに隠し持っていたのか、チョコバーを取り出して囓っている。
「でも木下さん、緊急事態宣言が解除されても、お客さんがどこまで戻るかわからないのがつらいですね」
「そうですね。とくに外国人客が多かったお店は、客足が戻るまで時間がかかりそうですね。前職で飲食店の経理をお手伝いしたことがありますが、初期投資で多かれ少なかれ借入をしているケースが大半でした。つまり、その返済が終わっていないところに、さらに借入が増えて、不安を抱えている経営者もいるはずです」
「飲食店への打撃は食料品関連以外にも広く影響しますよね。おしぼりレンタルとか、厨房機器の販売店、お店の内装工事をする建設関連・・・うちも影響がありそうです。何とか応援したい気持ちが強くなりますね」
「私は映画関連のダイニングバーがクラウドファンディングを始めたので、少額ですがプロジェクトに参加しました。新たにお店のグッズを作って支援を呼びかけたり、常連客が積極的に動いているケースもあるようです」
「クラウドファンディング・・・そういえば、木下さんの趣味の一つでしたね」
「ドリンク引替券や食事の割引券といった前売チケットを発行しているお店もありますよ。このような取り組みも、今の資金繰りを緊急的にファンが支援できる仕組みですね」
「前売りチケットは需要の先食いとも思いますが、こういうときには有益な金策ですね」
「ところで青山さん、1週間前よりさらに丸くなったような気がしますが、ちゃんと運動していますか?」
「運動は・・・散歩程度しかやっていません。木下さんはどうしているんですか?」
「私は家の中に自転車を持ち込んで、サイクルトレーナーを漕いでいますよ。自転車の後輪を台に固定して走るローラー台です。落ち着いたら、今度こそ霞ヶ浦一周、100kmサイクリングに行きましょう!」
青山はハハハ・・・と魂が抜けたような笑いをして、返事を曖昧にしたまま席に戻っていったのだった。お昼終わりのいつものパターンが復活し、元の生活へまた一歩近づいた2人なのであった。

飲食店の資金繰り支援策

緊急事態宣言による休業要請や外出自粛により、売上が大きく減少した飲食店が増えています。テイクアウトや食券の前売りに取り組んでいる店もありますが、平時の売上水準をキープするのは難しく、資金繰り難に陥るケースもあるようです。飲食店向けの資金繰り支援策として、特定要件を満たすと実質無利子化となる「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」などがあり、持続化給付金とともに活用が呼びかけられています。飲食店は食材や店舗資材のサプライチェーンのみならず、アルバイト店員の雇用も支えており、私たちも日常生活に戻っていく中で、感染リスクに留意しながら、お店を支えていきたいところです。

新型コロナウイルス関連支援情報

新型コロナウイルス感染症に関連する融資や補助金、協力金などの支援制度に関する情報を都道府県別にまとめました。
https://www.tdb.co.jp/corp/corp09_covidrelatedinfo.html

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