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  • 損益計算書項目の分析|財務会計のイロハのイ

2022.04.19

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」 Vol.23

前回は貸借対照表項目の分析について説明しました。今回は損益計算書項目の分析について説明していきますので、良し悪しの判断のポイントを押さえていきましょう。
先輩社員「前回は貸借対照表項目を使った分析比率について紹介しましたので、今回は損益計算書項目の方を説明しますが、こちらはイメージが簡単だと思います」

新入社員「主に、利益率の指標でしょうか?」

先輩社員「そうです。売上高と売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益といった具合に、各段階利益率の求め方や考え方は難しいものではありません」

新入社員「計算自体は難しくないんですけど、その良し悪しの判断が難しいイメージです」

先輩社員「確かに、経常利益率10%が良いのか、悪いのか、その結果だけでは判断できません。やはり、業界平均値や過去からの推移を参考に判断していく必要があります。また、売上総利益率はビジネスモデルによる影響を受けやすいので、注意が必要です」

新入社員「粗利率とも呼ばれるところですね。確かに製造業では原価が大きく計上されるけど、サービス業では原価がゼロ、つまり粗利率が100%となるケースもあるんでしたよね」

先輩社員「そうです。また、分析しようと思っている企業が、単に製造だけをしているとは限りません。例えば、兼業で商品の一部は卸売をしていて、その部門の利益率が製造部門よりも低いと、どうなるでしょう?」

新入社員「製造部門だけではなく卸部門も含めた利益率になるので、同業他社比較では粗利率が悪くなってしまいそうです。でも、もしかしたら製造部門の利益率だけ見ると、優秀というケースも考えられますから、単純に結果だけみて判断するのは良くないですね」

先輩社員「そういうことです。ですので、細かく分析をしたければ『セグメント別』つまり部門別の損益状況を把握したいところですが、このような情報はあまりオープンにはされません。管理会計という、内部の評価や戦略構築に使われる分析手法となります」

新入社員「目的によって、用いる指標や分析手法が変わってくるという話は、以前伺いました。損益計算書項目のみでは、与信判断のシーンには不向きなのでしょうか?」

先輩社員「いえいえ、決してそんなことはありませんよ。単純に、赤字続きの会社であれば不安になるものでしょう?また、他の分析結果と矛盾しているような場合は危険シグナルかもしれません」

新入社員「粉飾しているということでしょうか?どんなケースですか?」

先輩社員「売上や利益率は大きく変動していないのに、在庫や売掛金がどんどん増えていたらどうでしょうか?」

新入社員「なんだか、チグハグで指標の結果が噛み合っていないような気がします」

先輩社員「そうですよね。このあたりは、次回以降に詳しく説明していきます。粉飾ではなくとも、例えば、売上の規模と営業利益率以下は変わっていないのに、粗利が大きく減っていたらどうでしょうか?」

新入社員「つまり、原価が増えたということですよね。原材料価格が高騰して、売上に転嫁できていないケースなどでは、売上は変わらないのに粗利が下がっちゃいますよね。でも…なんで営業利益は良いままなのでしょう…。あまり考えたくないですが、従業員の賞与をカットしたり、そんな販管費のコストカットが思い浮かびました」

先輩社員「いいですね。そのような仮説を立てていくことが大切です。次に確認すべきは、販管費の中身が気になりますよね。販管費の削減によって、なんとか営業利益率以下をキープしたというシナリオも考えられますし、単に販管費の科目を見直して原価に組み込んだということもありえます」

新入社員「そんなこともあるんですね!確かに分析指標の結果だけでは、判断できないことも多いですね。定性情報の収集も大切だという事が、だんだん実感として持てるようになりました」

先輩社員「定性情報と定量情報の組み合わせ、それによって生じた小さな矛盾などを見つけられるようになると、いよいよ決算書を読めるという力が付いてきます。次回は、貸借対照表・損益計算書を組み合わせて分析をどのように進めるかお話しします」

ポイントの整理

■利益率の分析、特に売上総利益率においては、分析対象企業のビジネスモデルによる影響(兼業や事業構成等)を考慮する必要がある

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