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  • ロシアのウクライナ侵攻で加速する「中央銀行デジタル通貨」の行方~景気のミカタ~

2022.04.15

各国で「中央銀行デジタル通貨」の実証実験が急増していますが・・・

今回の景気のミカタは、世界中で加速している「中央銀行デジタル通貨」の動きを捉えるとともに、日本銀行の取り組みはあらゆる企業に関わることに焦点をあてています。

中央銀行デジタル通貨は86国・地域で発行・実証実験を実施

図表1
近年、中央銀行デジタル通貨(以下、CBDC)について、実証実験や概念実証を行う国・地域が急増しています。CBDCは、(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されることが必要であり、そのための技術開発が不可欠となっています。こうした状況のなか、日本においても2021年4月から概念実証実験が開始されたほか、海外のCBDCに関わる企業が大手だけでなく中小規模のFinTech企業にも広がりを見せています。

2022年1月時点では、バハマ、ナイジェリア、カンボジアの3カ国がCBDCをすでに発行しています(カンボジアは準CBDC)。また、デジタル通貨の調査・研究を中心とした検討段階が61カ国・地域、システム環境の構築や実現可能性を検証する概念実証実験が10カ国・地域、さらに民間事業者や消費者が参加して行う実証実験は12カ国・地域で行われています。CBDCに取り組んでいるのは、個人が利用対象となるリテール型と、企業間の取引における決済などが対象となるホールセール型を合わせると、合計86カ国・地域にのぼります(図表1)。

日本は2021年4月に概念実証実験を開始、ブロックチェーンなど活用し民間を主体とした可能性を模索

図表2
CBDCへの取り組みは新興国や開発途上国が先行していますが、2021年にはEU(欧州連合)や日本など先進国においても実証実験が進み始めてきました。さらには、中国はデジタル人民元を2022年後半までに発行するとしています(図表2)。

日本銀行における概念実証実験には銀行や証券、資金決済業、電子決済等代行業、FinTech企業などさまざまな業界団体が加わっています。また、CBDCにはセキュリティの確保や強靭な通信環境など、幅広い業界に跨っており、必要と判断すればすぐに発行できる体制を構築していくことが狙いです。特に、日本ではブロックチェーンをはじめとした民間を主体とした可能性が模索されています。

日本銀行は、CBDCの発行について「2026年までに判断する」としていますが同時に、「決済システムの安定性と効率性を確保する観点から、今後の環境変化に的確に対応できるよう準備することが重要」とも話しています。2022年度には電源がない状態での決済や現金との交換なども検証する対象に広げます。さらに、電子マネーやセキュリティ対策を手がける企業などとも連携し、具体的な利用場面での検証も進められています。

経済のデジタル化およびDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進むなかで、新たな技術を集約した決済システムの広がりは、経済の回復に向けて大きな可能性を持つ分野ともいえるでしょう。東京都にあるソフト受託開発業を営む中小企業からは「金融IT分野は重要な輸出市場となる」といった意見が聞かれる一方、その前段階として「IT技術者の不足が大きな問題」(ソフト受託開発業、神奈川県)はCBDCの発展にとって解決すべき課題になっています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を理解し取り組んでいる企業は15.7%と7社に1社にとどまっていますが[1]、CBDCの動きはすべての企業に関わってくる大きな変化です。ロシアによるウクライナ侵攻が続くなかで、米国のバイデン大統領は「デジタル資産の責任ある発展を確保する」ための大統領令を発出し、デジタル資産に対する包括的かつ省庁横断的な検討を指示しました。この対象となるデジタル資産とは、「暗号資産(仮想通貨)」、「ステープルコイン」、そして「中央銀行デジタル通貨」を指すとされています。すなわち米国は「デジタルドル」への取り組みを大幅に前倒しすることを表明したのです。急速に進む法定通貨をデジタル化する流れは今後も一段と加速していくと考えられます。

[1] 帝国データバンク「DX推進に関する企業の意識調査」(2022年1月19日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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