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  • 長期的に適正な為替レートの水準はいくらなのか~景気のミカタ~

2022.08.19

当面は円安が続く可能性の一方、長期的には1ドル90円前後に収斂する!?

今回の景気のミカタは、多くの企業が円安による業績への悪影響を懸念している一方で、現在の為替レート水準が持続可能なのかどうかについて焦点をあてています。

円安により企業の6割超が業績に「マイナス」

図表1
資源高や原材料高が続くなか、2021年後半から急速な円安が進み、輸入価格を上昇させています。さらに、各国との貿易額やインフレ率を加味した実質実効為替レートは、固定為替レート制度下にあった1971年以来となる円安水準を記録しました。

当初、円安は輸出拡大による景気回復が期待されましたが、現状では輸出量は緩やかな拡大にとどまっています。その理由として、輸出企業が円高期に生産拠点を海外に移したことで現地生産が進み、日本からの輸出が伸びにくいという構造変化が指摘されています。逆に、円安は輸入価格上昇によるコスト増加をもたらし、企業の収益環境を悪化させる弊害が目立ってきました。

帝国データバンクが実施した調査[1]によると、円安により企業の6割超が業績に「マイナス」と考えていることが分かりました(図表1)。一方で、業績に「プラス」とする企業は4.6%にとどまっています。
とりわけ、製造業においても「プラス」は1割を下回っており、64%の企業が「マイナス」と認識していました。
特に、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(87.6%)や「専門商品小売」(83.9%)、「飲食料品・飼料製造」(83.3%)、「飲食店」(83.0%)、「飲食料品卸売」(82.4%)などが8割を超えており、アパレル関連や飲食料品関連の業種でマイナスの影響がみられます。さらに、「運輸・倉庫」も7割を超えており、「値上げは荷主企業自体も業績悪化しているため、容認されにくい。また燃料を始めとする物価高で収益が悪化しており、打ち手がないのが現状」(一般貨物自動車運送、茨城県)などの声も聞かれました。円安による悪影響がバリューチェーン全体に広がっている様子がうかがえます。

長期的に持続できない円安水準も、当面は円の割安傾向が継続する可能性

図表2
基本的に為替レートは二国間の通貨の交換比率です。また、為替レートの決定にはさまざまな要因があり、その決定理論や仮説も多く唱えられています。例えば、それぞれの国のa.インフレ率や物価水準、b.経常収支、c.市場に流れるマネーの量(貨幣供給量)、d.金融資産残高、e.金利、f.労働生産性などが要因として有名でしょう。上記の各要因は、a.が購買力平価説、b.が弾力性アプローチ、c.がマネタリー・アプローチ、d.がアセットアプローチ、e.が金利平価説、f.がバラッサ=サムエルソン理論、といった理論・仮説に対応します。

現実には、特定の決まった決定理論があるわけではなく、その時々によって「今回はa.が当てはまる」「今回はe.が当てはまる」などと考えていくことになります。しかし、いずれにおいてもベンチマークとなるのはa.の購買力平価説(Purchasing Power Parity, PPP)です。PPPは、「同じ商品・サービスであれば、同じ価格となる」という"一物一価の法則"を原則としており、長期的なトレンドを示すとされています。短期的にみると、為替レートはPPPから乖離することも多くありますが、これまでの研究では概ね半減期2年~3年程度のスピードでPPPが示す理論値に現実の為替レートは収斂することが知られています。

2022年7月14日には一時1ドル=139円台をつけましたが、現在の円ドルレートは持続可能なのでしょうか。PPPは国内外でさまざま機関が計測しています。一般的には企業物価や消費者物価が使われますが、IMF(国際通貨基金)は、消費者物価に基づく2022年のPPPを1ドル=91円と試算しています(図表2)。つまり、理論的には円ドルレートは90円前後であればファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいた為替レートとして説明可能です。

もちろん、今後の日本と米国における金利やインフレ率の動向により理論値も変動していきます。とりわけ日米の金利差は為替水準を決める重要な要因となることから、現状の割安な水準が当面続く可能性もあります。しかし、直近の1ドル=130円台となるような実勢レートと理論値との大きな乖離は、長期的には持続できない水準と言えるでしょう。

[1] 帝国データバンク、「円安による企業業績への影響調査」(2022年8月15日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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