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  • 株主資本等変動計算書|財務会計のイロハのイ

2022.10.04

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」 Vol.34

純資産の変動状況を表した帳票である「株主資本等変動計算書」について解説しています。中小企業の決算書等において、あまり純資産は動かないといったイメージのお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、極力目を通すクセをつけることの必要性について触れています。なぜ必要なのかを理解していきましょう。
先輩社員「これまで、貸借対照表、損益計算書に加えて、キャッシュフロー計算書を紹介してきました。財務諸表の本表として、もう一つ、株主資本等変動計算書を紹介しておこうと思います」

新入社員「なんだか漢字の羅列で難しそうなイメージですが、株主資本ということは純資産に関連する帳票ですね?」

先輩社員「そうです。純資産はどのようなカテゴリーがあるか覚えていますか?」

新入社員「確か、大きく『株主資本』のほかに『新株予約権』と『評価・換算差額等』があるんでしたよね?」

先輩社員「正解です。よく覚えていましたね。今回紹介する『株主資本等変動計算書』は、名称に『株主資本』とありますが、『等』とあるように『新株予約権』『評価・換算差額等』も記載されますので、いわば純資産の変動状況を表した帳票といったイメージを持ってもらえればOKです」

新入社員「変動ということは、キャッシュフローのように決算期間の動きを示すものですね?」

先輩社員「そうなります。貸借対照表はあくまでも、決算期末時点の財政状態を示すものです。純資産に動きがあった場合、前期の貸借対照表と見比べるだけでは、その変動理由がつかめないこともあります」

新入社員「利益か損失が出たときくらいしか、純資産が動くイメージがないのですが、変動理由を追う必要性があるのでしょうか?」

先輩社員「確かに中小企業の決算書においては、あまり純資産は動かないもの、というイメージがあるかもしれません。ですが、資本金は増資や減資によって動きますし、他の剰余金も配当金の原資となっていて、減少しているかもしれません。何らかの目的で積立金を計上している場合にも、その動きを確認するときに株主資本等変動計算書は有用です」

新入社員「そうなんですね。事業再編によって純資産が大きく変動した会社があったのを思い出しました。その時は、貸借対照表と損益計算書しかなかったので、期末時点の結果しかわからなかったですね」

先輩社員「ある程度大きな企業になってくると、先ほどの『新株予約権』や『評価・換算差額等』が計上されるケースも増えてきますので、株主資本等変動計算書の重要性も上がってきます。また、純資産の株主資本においてマイナス計上される『自己株式』の動きを確認することもできますよ」

新入社員「自己株式という科目も確かに見かけたことがあります。自社の株を自社が持っている状態ですよね。資本金が減るようなイメージなので、マイナス計上される理由は納得です。この科目も何か注意したほうが良いのでしょうか?」

先輩社員「取得した時の価格で計上されますので、一株の単価が上がっていると大きな金額が計上されることもあり、そのような場合は、取得の背景を探りたいですね。結局、自己資本比率を低下させる一因になりますので。ちなみに、以前は自己株式の取得が禁止されていました」

新入社員「なかなか、純資産科目も奥が深いのですね。気になるケースがあったら、また教えてください」

先輩社員「純資産の部だけで何冊も専門書が出ているので難しい論点がひしめいているのは確かです。そのため、初心者のうちは、聞きなれない科目も多いですし、科目名だけでは内容がイメージしにくいかもしれません。ただ、貸借対照表の純資産の部を見るだけではなく、極力、株主資本等変動計算書に目を通すクセをつけることで、その決算期のフローがよりイメージしやすくなると思います」

ポイントの整理

■貸借対照表の純資産の部の、決算期間における変動状況を示す財務諸表を「株主資本等変動計算書」という。
■株主資本等変動計算書には、「株主資本」以外にも「新株予約権」「評価・換算差額等」といった、変動も示される。

◆関連コラム

企業審査人シリーズvol.95:純資産の部と株主資本変動計算書
資本金や利益剰余金の説明を踏まえ、株主資本変動計算書についてより詳しく解説しています。
基礎から学んで理解を深めましょう。

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貸借対照表の構造 後編(負債の部・純資産の部)|財務会計のイロハのイ
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純資産の部 前編|財務会計のイロハのイ
貸借対照表の「純資産の部」は論点と重要な科目が多いですが、何から理解すればよいかポイントを説明します。

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