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  • 倒産定義の話 ~倒産の基礎・1~

2013.11.15

[企業審査人シリーズvol.8]

話はさかのぼるが、青山が審査課に異動したての頃、中谷に聞いたことがある。「審査の役割がいろいろあるとして、やっぱり焦付きを防ぐというのは外せないと思いますけど、そもそも焦付きが起きる原因になる会社の倒産というのは、会社がどういう状態になることを指すんですか?」若者らしくライトな感じで何でも聞くのは青山のいいところだ。
 しかし、調べる前にすぐ人に聞いてしまうのも最近の若手の傾向だと常々感じている中谷は即答せず、質問を返した。
「青山が知ってる倒産って、どういう状態?」
「そうですね。お金がなくなって営業できなくなった状態ですかね」と答えた青山に、中谷は質問を続けた。
「確かに単純に言えばそうね。でも、倒産した会社はすべて営業してないのかしら?」倒産したのに営業してる会社・・・?青山は素直に困惑の表情になった。
「青山は営業部時代にお客さまが倒産したこと、ないの?」助け船の質問に「幸い、なかったんですよね」と苦笑した青山を見ながら、中谷がそろそろ説明しようかというモードに入った。
 そういうときの中谷はなぜか眼鏡の縁がきらりと光る。いや、これは青山の気のせいか。「倒産って、ちゃんとした定義は実はないのよ」と中谷は話し始めた。

倒産の定義とは?

 審査部門の目的として最初にあがる「自社の焦付きを防ぐこと」。
 焦付きとは回収すべき代金が返ってこなくなる状態、すなわち売掛金や受取手形が回収不能金となって損失処理を余儀なくされることを指します。
 そしてこの回収不能となる相手の状態は、ひとくちに「倒産」と言われることが多いのですが、実は「倒産」という言葉は明確に定義されていません。辞書で調べると「財産を失って企業がつぶれること」などと書いてありますが、具体的にどういう状態を指すのかはこれではわかりません。
 たとえば「夜逃げ」は倒産か?会社はあっても、払えないと社長が認めたら倒産なのか?そういう疑問が出てくるわけです。
 日本では国が企業倒産の統計をとることがなく、民間企業である企業興信所が企業倒産を集計し発表してきました。
 したがって、今日まで倒産の定義は企業倒産を発表してきた企業興信所、今の信用調査会社が行う定義に基づいています。

倒産には大きく分けてふたつある

(表)倒産の定義は6種類
 倒産の定義については信用調査会社の定義に大きな違いはありません。
 帝国データバンクでは下記の6つの状態を倒産として定義しています。
(1) 銀行取引停止処分を受ける※
(2) 内整理する(代表が倒産を認めたとき)
(3) 裁判所に会社更生法を申請する
(4) 裁判所に民事再生法を申請する
(5) 裁判所に破産を申請する
(6) 裁判所に特別清算を申請する
 ※手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合

 6つもあるので一度に覚えられないと思われる方もいると思いますが、簡単に言うと(1)と(2)は「任意整理」と言われ、法的な手続きを伴わないもの、残る(3)~(6)は「法的整理」と言われ、法的な手続きを伴うものということになります。法的整理は法的な手続きを伴うため状態を把握しやすい形態といえますが、任意整理の場合は把握が難しくなります。(1)は主に手形交換所で「不渡り」、すなわち手形決済日に決済口座に資金がなく手形が落ちないという事故、これを半年以内に2回起こすと「2回目不渡り」として、その後2年間、銀行での当座預金口座の開設ができなくなる、すなわち手形を振り出せなくなるというペナルティを受けることになることを指しています。この不渡り情報も手形交換所の取引会員である金融機関の中でしか流通しないため、一般に把握は容易ではありません。
(2)はさらに難しくなります。冒頭の「夜逃げ」は社長の言質がとれていない時点においては、定義にあてはめると倒産にはあたりません。調査報告書では「所在不明」となります。

 次回は各倒産形態の特徴についてとりあげます。

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