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  • コンサルティングの現場から~2:脱!指示待ち人材

2016.02.12

 日ごろ経営者の方から愚痴にも近いご相談ごととして「うちの社員はみんな俺の指示を待っていて、自分で考えて動ける人間がいないんだ」といったものが多く寄せられます。中小企業において、「指示を待たず、自ら考えられる人材」が1人でも2人でも居れば、経営者の負担は相当軽減されることでしょう。
 しかし、多くの経営者が「脱!指示待ち人材」に関する相談を寄せられるということは、それだけ「指示を待たずに自ら考えられる人材」が少ないという裏返しでしょう。(単に経営者の要求レベルが高水準という理由も考えられますが)
 では、なぜ多くの経営者が同じ課題を抱えながら、そういう求める人材を育てることができないのでしょうか?2つの視点からこのテーマを深堀したいと思います。
 多くの企業を経営支援で訪問していると、強く感じることがあります。それは、「人材育成に対するお金のかけ方の違い」にその企業の経営者の“人”に対する考え方が現れるということです。大別すると2種類の経営者が存在します。

教育研修費はコストではなく、投資である

 1つは、「人材は育成するものではなく、自分で育つもの」という観点で教育コストを削減する経営者。もう一方は、「教育はコストではなく、投資である」と捉え、人材へ投資する経営者。
 こんなことをおっしゃっていた経営者がいました。
 「一番大化けするかもしれない投資ってなんだと思いますか?それはヒトですよ。機械は1,000万円の投資をしたら1,000万円相応のリターンしかないけど、ヒトは違う。100万円の投資が1,000万円分にも5,000万円分にもなるんです。」
 「ただし、”投資”なのでリターンがあるとは限らない。投資した100万円が無駄になってしまうこともあるでしょう。そこの不確実性を”人材投資だ”と腹をくくれるかが経営者の器だと思うんですよ。私は。」と笑いながらも真剣な眼差しで語っていらっしゃいました。

 教育コストと人材投資、この似て非なる単語にその会社の人に対する考え方が現れるものだなと感じます。普通の会社と強い会社の違いは、間違いなく教育コストではなく人材投資として捉えていることが挙げられます。経済環境が悪いときも、自社の業績が芳しくないときも、実直に人材投資を継続してきた企業が、強い人材がいる強い企業になっていると言えるでしょう。
 教育を受ける側の気持ちになってみれば、「経営者から投資を受けている」ということが正しく伝われば、「自分は、期待されている」と受け取るでしょう。それがモチベーションを上げ、教育効率を高めるものなのです。

幹部人材は、“●●”からは育たない

 もう一つの切り口は、日本企業の教育投資の低さです。この日本の教育投資が低い理由は、「人は現場で育てるもの」という考え方が根付いているからだと考えます。その考え方の根底にあるのは、OJTによって現場で教えたものでないと役に立たないという考え方があるのでしょう。確かに必要な知識、スキルを現場で教えることは有益ですし、実務的です。
 しかし、その教育手法に終始すると、教えられた人材は、業務レベルの発想で終わってしまいます。社長が欲しい人材像を思い浮かべてください。「幹部を育てる」という視点で考えたときに、欲しい人材は「業務やオペレーションを上手に実行できる人材」でしょうか?恐らく多くの社長は「No」とお答えになるでしょう。

 社長が欲しいのは、経営者と同じ目線とは言わないまでも、数年先を見て今やるべきことを考えることができる逆算志向を持った幹部、自分の部門だけでなく、会社として何が一番よい選択肢かを検討できる全体思考を持った幹部ではないでしょうか。
 ご支援に入らせていただいた人材投資に熱心な社長が言っていた今でも心に残っていることの一つに「幹部は“業務”からは育たない」という言葉があります。長くその部門に所属し、部門長としてオペレーションを回すことは申し分ない人材も、当部門だけでなく、全体を俯瞰する、全社最適を考えるという視点が育たないと幹部人材として社長が求める人材になり得ないのではないのでしょうか。
 このような「自ら考えることができる人材」を育てる基本的な仕組み・プロセスとは以下のような流れに集約することができます。

人が育つ仕組みづくりの基本

(図)上意下達に陥ると・・・
 「【1】考えさせる→【2】発言させる→【3】行動させる→【4】反省させる」の4つのステップを実直に継続させ、このサイクルを繰り返すことです。
ここで注意が必要なのは、貴社のマネジメントスタイルが「トップダウン型マネジメント」である場合です。
 人を育てる4つの基本ステップを実行する際に、トップダウンの指示があまりに多いと、社員はまさに上意下達の状態となり、4つのステップの実行に負の影響を与えることになります。つまり、【1】考えるべきなのに、考えない。指示待ちの典型、【2】発言させるべきなのに、自分の意見を持たず発言しない、【3】トップダウン型の指示に従っているので、行動したとしてもやらされ感、【4】やらされている認識なので、ミスや成果が出ないことに対して自分以外のところに責任を押しつけたりします。

 これでは、社長が求める「自ら考えることができる人材」とは、最も遠い人材が増えてしまうことになります。自ら考えず、ただ上からの指示を待ち、作業をこなす人材が増えても、その組織は停滞してしまいます。
 「自ら考えることができる人材」を増やし、次世代幹部や社長の右腕となる人材を育てるためには、座学では育ちません。

座学でない中小企業の人材育成とは

 真剣に「中小企業の人材育成」と向き合う中で、一つのゴールに辿り着きました。それは、効果が出る中小企業の人材育成手法は、「プロジェクト型人材育成」という方法だということです。
 ここで言うプロジェクト型人材育成とは、教育に軸足を置くのではなく、1つのテーマ(経営課題)を設定し、それを解決するプロセスにメンバーが参画するスタイルの実践型育成手法です。

 座学で学んだ知識は「知る」という効果はあるでしょう。しかし、それを一歩踏み込んで「考える」に引き上げたり、次の「行動」につなげたりするためには、「自社の場合はどうするべきかと置き換え、思考を深め、議論交わす場」が必ず必要になります。
 そして、その課題解決の実行性をアップさせるためには、つまり、やらされた感を出さずに、主体性を引き出すためには、コツがあります。それは、「このプロジェクトをやるという決断を誰に決めさせるか」ということです。社長がトップダウンで、やるということを決断することも必要ですが、実行性を高めるという意味では、やるという決断をプロジェクトに参画するメンバーたちの総意を持って決断させるというステップを踏むことが重要な意味を持っています。
 このことにより、プロジェクトに対する主体性が醸成され、自ら考える人材の育成につながります。
 人を育てる4つの基本ステップ(【1】考えさせる→【2】発言させる→【3】行動させる→【4】反省させる)が自社で回っているか、一度確認してみてはいかがでしょうか。


次回テーマは、「戦略思考と事業領域を決める3つの切り口と3つの視点」です。

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