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  • 使える調査会社のアンテナ ~活用法とその掟~

2014.02.28

[企業審査人シリーズvol.22]


川路組の支払遅延の情報が持ち上がった後、中谷が電話をしている。受話器を置いた中谷に、青山は少しそわそわしながら「小川土建、どうでした?」と聞いた。
 
 「小川土建には聞いてないわ」と言う中谷に、青山は「え?」と目を丸くした。
 「その前に、帝国の横田さんに聞いてみたの。2社に支払延期を要請してるという情報がとれたわ」
 中谷は水田や秋庭にも聞こえるように、大きめの声で言った。
 青山の隣で初老の水田が「えっ?何じゃて?」と言うのを聞かなかったことにして、青山は中谷に聞いた。
 「調査会社ってそういう情報も教えてくれるんですね」
そういえば月に何度か、横田からの電話を中谷に取り次ぐことがある。
 「横田さんとはいい関係ができてるのよ。調査会社からは報告書やネットを通じて情報を買ってるけど、こういう生臭いリアルな情報を直接聞くこともできるから重宝するのよ」
 横田からの電話はいつも取り次いでいるだけで、話の中身は聞いてなかった。取引先の耳寄りな話があるときに、電話をくれていたらしい。
 「調査会社は情報で商売してるから、そういうのは1件いくらって請求されたりしないんですか?」
 「そんなことはないわ。もちろん何も買わなきゃ教えてくれないだろうけど。うちから情報を出すこともあるから、そのあたりはお互い様よ」

調査会社から得られる情報

 調査会社は調査報告書や企業概要データ・財務諸表データを販売していますが、こうした商品になった情報以外にも、多くの情報をストックしています。例えば帝国データバンクでは、毎日全国で1,000人の調査員が2~3社を回って調査を行っているため、調査で訪問した先の情報はもちろん、そこで得た他社の情報、そこに行く「道すがら」の情報、例えば
「あの会社、シャッターが閉まってるぞ」
「ここの現場はあの会社が施工してるのか」
「ああ、あの会社はここにも店を出したんだな」など、膨大な情報がストックされます。
 また、横田と中谷のように、日頃から情報交換ができるネットワークを全国に張り巡らせているため、そうして集まってくる情報もあります。もちろん、業界紙や新聞記事などの情報は日常的に収集されています。調査依頼の数、といった情報も重要な信用情報となります。

 ただ、影響は大きいが真偽がわからない情報、例えば今回のような支払遅延の噂や内紛、不祥事といった情報は、調査会社といえども十分な裏付けがとれるまで慎重に扱います。したがってその手の情報は電話を使って引き出すしかありません。今回のようなケースに限らず、調査報告書を読んで疑問に感じられたり、曖昧に感じられたりする情報は、調査会社の営業担当に問い合わせると「書かれていない情報」を引き出せることがあります。調査会社が「会員制度」を敷いてるのは、そうした無形のサービスを前提としているからとも言えます。活用しない手はありません。

情報を扱う掟

 審査部門であれば、調査会社に限らずこうした情報の入手ルートは持っているものですが、重要な情報の扱いには「掟」があります。それは「ニュースソースを明かさないこと」、そして「形に残さないこと」です。昨今はメールでの通信が発達していますが、メールは転送という形でどこまでも情報が流れていくリスクを持っています。だから、大切な情報は今でも電話で伝えるのです。もらった情報を粗末に扱えば、二度とそこから情報をもらえなくなる。それがこの業界の「掟」です。

 デジタル化が進み、一般に流通する情報は膨大ですが、本当に大切な情報は流通していません。大切な情報は、今も昔も人と人の信頼関係の中を流れていきます。そうした関係は一朝一夕には築けません。調査会社に限らず、日頃から重要な情報をもらえるネットワークづくりも、審査部門の重要な仕事と言えます。

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