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  • 業績その1【業績数字】~報告書の読み解き方-13~

2014.09.19

[企業審査人シリーズvol.51]

翌週、青山は報告書レクチャーの続きを受講すべく、再び横田を迎えた。横田が会議室に入ると、席にはカップのコーヒーがふたつ、菓子も置いてある。「あれ?」という顔をしている横田に、青山が恐縮した。
 「1日だけの予定が2日も来ていただくことになったので、そのお礼です・・・」
 「そのうち生ビールをご馳走になろうと思っていたんですけどね」と横田が笑って軽口を返した。
 「さて、今日は残りをやってしまいましょう。業績のところからですね」
 「はい。ここはいつも注目しています。ただ、数字の把握度合いが報告書によってかなり違いますね」
 「そうですね。決算書や業績数値の入手は私たちのお客さまがもっとも期待されているところなので、私たちも努力していますが、それでも決算書をいただけない場合や、業績数値すらつかめない場合があります」
 「利益計上とか収支一杯とか、文字が入っていることもありますけど、あれは調査員の推測ですか?」
 「推測かと聞かれると難しいですね。報告書の内容はすべて取材に基づいた調査員の『見立て』ですから。ただ、赤字か黒字かというのは当然ですがとても重要なところですし、そういう表示には何らかの裏付けを伴っています。根拠のない推測はできませんからね」
そう言った横田は、さらに補足した。
 「聞き取りか推測か、と聞かれることは多いのですが、私たちの仕事では話はそう単純ではありません。社長から聞き取った数字が真実でない、という場合もよく経験しているからです。ですから、私たちは聞き取りができても、できなくても、手を尽くして裏付け情報を集めて真実に迫ろうとします。だから、報告書というのは突き詰めれば、調査員のその会社に対する見立てであり、見立てを誤らないことが、私たちの品質であり生命線だと思っています。裏付けがとれず見立てができないときは、判明分報告となってしまいますけどね・・・」
 「そうなんですね。真実はひとつと言いますけど、真実を裏付けるのは大変ですね」と青山が唸った。
 「私たちは売上が増えたとか、利益が出たといったことを当然見ますが、横田さんはここの情報をどういう風に見ているんでしょうか」と青山が聞いた。
  「ここには最大6期分の業績を載せていますので、長いスパンでの業績トレンドを読み取るようにしていますね。業績は1期1期で見ると、増えた、減ったという一喜一憂があります。ただ、そういう見方だけだと、大きな流れを見損ねることがあります。『5年前に比べて、こうなっている』みたいな見方が大事ですね。4年前に大きな設備投資をしたのに売上が増えてないな、とか、リーマンショックで売上が半減したのは仕方ないけど、その後も半減したまま回復しないのは理由があるんじゃないか、とか、そういう見方です」
 「なるほど。確かに最新期だけを見て一喜一憂しがちですからね」と青山はうなずいた。
 「そうそう、この申告所得というのは何もデータが入っていませんが、何ですか?」
 「そこは、少しお恥ずかしいところです・・・。昔は法人申告所得が公示されていたので、それを載せていたんですけど、平成18年3月に公示制度が廃止されて、それ以降は使わない項目になっています。当時は法人所得が4,000万円を超えている会社の申告額が公示されていたんです。申告所得は益金・損金の処理があるので企業会計の利益額とは必ずしも一致しませんけど、高額の利益が出ているという裏付けには役立っていました」
 「与信管理をする側からすると、材料がひとつなくなって残念ですね。項目はまだ残しておくのですか?」
 「業績6期分を表示する関係で、平成18年3月期の業績表示が消えるまでは残しておく必要がありましたし、古い報告書のコピーを提供することもあるので、項目はまだ消せないんです。でも次の報告書改定があれば、そのときは見直すことになるんだろうと思います。時期は未定ですけど」 

業績に掲載される情報

 このページでは、企業の営業活動の成果を示す「業績」と、その背景情報を掲載しています。最大6期分の業績を掲載し、このうち直近3期分はサマリーに転載 しています。次の決算期の予想値がわかる場合は、それもここに掲載しています。
 ただし、予想値はその企業の公表値が得られる場合に掲載することが多くなっ ています。過去期については、決算書を入手している場合は原則としてその数値を転載し、入手できていない場合は聞き取り値、あるいは推定値を掲載します。
 会話にあったように、利益については「利益計上」「欠損計上」といった文字掲載になることがあります。これは数値を入手できず、数値の推定が困難な場合の表示です。ただ、「利益か/欠損か」についてはある程度の裏付けがとれている場合が多いと言えます。また、文字表示にもいくつかのパターンがありますが、金額の大きさとしては「収支一杯<若干の利益<利益計上」ということになります(欠損の場合も同様)。
 なお、売上高を決算書からそのまま引用できない業種や、売上高・当期純利益といった概念がない特殊法人については、独自の掲載基準に基づいて数値を掲載し、「財務資料のどの数値を売上高や各利益として掲載したか」を業績特記事項欄に注記しています。 

中長期のトレンド把握

 6期分の業績推移から、業況(売上)・収益の中長期的なトレンドを把握しましょう。売上高については、日本全体を見れば、リーマンショック(平成18年9 月の米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻後に生じた金融危機と経済不況)や東日本大震災(平成21年3月11日)をボトムにして、回復基調にあるという流れにあります。これを基準にして、当該企業の業績がどういう推移を辿っているのかを見ます。リーマンショック直後は製造業を中心に、売上が半減した企業も少なくありませんが、その後の盛り返し方にその会社のバネ(不況対応力)の強さが表れています。リーマンショック前の水準まで回復した会社と、そのまま低空飛行を余儀なくされている会社がはっきり分かれてきています。 

赤字の右・左

 段階利益については「黒字か・赤字か」が重要なのはもちろんですが、赤字の発生段階が右(当期純利益側)に行くほど一時的な要因(リストラによる退職金計上や資産売却損など)による赤字、左(営業利益側)に行くほど本業の不振による深刻な収益悪化が懸念されます。
 また、売上に大きな波があるのに利益が少額で一定している会社は、節税対策を徹底していることが多いものですが、中には粉飾決算の可能性を疑うべきものも含まれます。

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調査報告書の読み解き方コラムシリーズ

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