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  • 評点とその推移【サマリー】~報告書の読み解き方-25~

2014.12.19

[企業審査人シリーズvol.64]

「最後は評点ですね」と、報告書レクチャーの講師・横田がさりげなく時計を確認した。
 「60点でもいい評価なんだって、最初はわかりませんでしたよ」と青山がつづく。
 「そうですね。100点満点ですけど、学校のテストの点数感とはずいぶん違います。弊社のCOSMOS2でもっとも多いのは45点前後で、40点台の会社が一番多くて、51点以上は2割もありません」
 「そうなんですか。分布図を作ると、40点台のところにかなり高い山ができるわけですね」
 「そうです。評点は景気も反映しますから、経済の冷え込みとともに評点も下がってきたと言えます。当社の評点分布はCOSMOS2で見るのが普通ですが、主に報告書をとられているお客さまは少し違う印象を持たれるかもしれません。報告書のほうが評点の平均は若干高くなっていますから」
 「それはなぜですか?」と青山がすぐに聞いた。報告書とCOSMOS2の違い・・・・・?
 「まずCOSMOS2はTDBで継続的にデータを更新している企業データですが、これは収録件数が多い分、零細企業の裾野が広いので、全体に評点は押し下がる形になります。報告書のほうは、調査をご依頼いただいた会社だけが更新されますが、更新される会社は比較的大きな会社が多いので、必然的に評点の平均が高くなるのです。もうひとつ、COSMOS2は報告書に比べて取材項目が簡易なので、情報量が少ない中で高い信用評価は付きにくい側面があります。“情報が少なければ保守的に評価せよ”というのは与信管理の王道ですよね。報告書とCOSMOS2では、価格が違う分だけ鮮度や質が違ってくるのです」
 「なるほど。データを使う側もそういうことを理解しておかなければなりませんね。評点の具体的な付け方は・・・・企業秘密、ですよね?」と青山が覗き込むように聞いた。
 「細かいテーブルは当然社外秘の扱いですが、それぞれの評点要素について簡単に説明しましょう。『業歴』は創業後の経過年数で評価しています。風雪に耐えてきた年月というのは、やはり企業を評価するときに外せない要素ですね。飲食店は2年持てばいい、なんて言われるでしょう。それから、『資本構成』は自己資本比率をベースにして、財務の安全性を評価しています。『規模』は、業種別の年商規模を格付けして、これに株式公開の有無や従業員数を加味しています。『損益』は、業績の赤字・黒字の推移に利益額の規模を加味して評価しています。『資金現況』は、本文のマーキングの結果を点数化しています。『経営者』は業界経験や経営経験、資産保有状況などを評価しています。『企業活力』は営業基盤や人材、将来性などの定性的な評価を点数化しています」
 「ちょっと待ってくださいね・・・」と青山はメモが追いつかない様子だったが、ようやく顔を上げた。
 「はい、なるほど。点数付けは、調査員によって差が出たりしないのですか?」
 「それはよく聞かれますよ。評点の要素は客観点と主観点に分けられますが、業歴・資本構成・規模・損益は客観点、企業活力は主観点、資金現況と経営者は両面あります。客観点の部分はデータに基づいて算出されるので、誰がやっても結果はだいたい同じです。主観点の部分に調査員の見立てが反映されますが、こちらも目安や常識的な実現値が決められていますし、調査員が極端な評点をしても審査で是正されます」
 「横田さんの書いた報告書も審査されるんですか?」と青山が茶目っ気で聞いた。
 「もちろん。新人の頃は毎日報告書を真っ赤に添削されて返されていましたよ。新人時代は大変なんです、この仕事は」と横田が遠くを見る目をした。 

評点の分布

 評点の分布は、2013年の集計ではCOSMOS2での最頻値が46点、平均点はこれをやや下回る点数でした。バブル崩壊後の1995年の最頻値は51点でしたから、経済の冷え込みとともに評点も下降を辿ってきたことになります。
 評点を付ける調査員にとっては「51点以上か/50点以下か」が今も最大の判断分岐です。評点の分布上、40点台多いのは、景気動向もさることながら、規模の小さな会社が多く、また信用判断が難しい会社が多いことにも起因しています。
 評点はあくまで相対的な指標であり、その活用はお客さまによって異なります。かつては、お客さまのほうでも、「51点以上か/50点以下か」で取引可否を判断されているところが多かったようです。ただ、今ではそれは保守的過ぎる、あるいは商機を逃す可能性があると言えるかもしれません。ボリュームゾーンである40点台の会社の中で、自社の見立ても含めてどう与信判断をしていくのかが肝と言えます。
 なお、横田が紹介したように、報告書の評点分布は最頻値が51点前後、全体の1/3以上が51点以上と、COSMOS2に比べて点数が高くなります。報告書は「その時点」の情報なので本来はこうした統計的には適さず、上記数値も過去3年間に作成された調査報告書の集計値にすぎませんが、調査報告書とCOSMOS2のどちらを主に使われるかによって「評点感」が違うかもしれませんので、ご紹介しました。調査依頼をいただく企業は、調査依頼がない企業に比べて企業規模が総じて大きいため、零細企業まで幅広く収録しているCOSMOS2よりも評点の平均が高くなる傾向があります。また、COSMOS2のメンテナンスは調査報告書よりも簡易ですので、精度差が生じるのも事実です。こうした性質を踏まえ、使い分けていただきたいと思います。

評点の内訳

 評点に主観点と客観点があるという話がありました。客観点は財務指標など何らかの定量情報が反映され、機械的に算出されます。最近は総合評点だけでなく内訳の点数を与信判断に活用されているお客さまも多いようですが、その場合は主観点部分の動きに着目したいところです。そこに調査員が現地で感じたことが反映されているからです。
 ただ、主観点は、客観点と企業実態に乖離があると調査員が判断したときに、調整することもあります。いずれにせよ、主観点が著しく抑えられている場合は、何か留意すべき点があります。 

重要な「評点の推移」

 報告書には、評点とともにその推移も表示しており、これが重要な情報になっています。  「上り調子の40点台」は今後Cランクのゾーンに入ってくる予備軍と言えますし、「下り調子の50点台」はDランクに転落する予備軍と言えます。その時点の評点はもちろん重要ですが、動きを見ることが必要不可欠です。
 ただ、評点は調査先の実態の変化だけでなく、われわれ調査会社の情報の把握度合いによって大きく動く場合があります。そういう場合は、ミスリードを避けるために履歴を表示せず報告します。経緯を確認されたい場合は、営業担当にご連絡ください。

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