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  • 税務における益金・損金 ~会計と税務のズレ~

2015.03.13

[企業審査人シリーズvol.75] 

「青山君、経理課の木下さんと話をしたこと、あったっけ?」
昼休みの一服から戻ってきた青山に、審査課長の中谷が声をかけてきた。
 「木下さんって先月会計事務所から転職してきた人ですよね?歓送迎会で挨拶はしましたけど・・・」
 「あんた、昼前の審査でややこしい決算書を持っていたでしょ。会計事務所の出身はうちでは珍しいから、そういうときは相談に乗ってもらうといいわよ」
 「入ったばかりで経理の仕事も忙しそうですけど、大丈夫ですかね…」
 そんな会話があった翌日の夕方、青山が休憩ラウンジに行くと、その木下が休憩をとっていた。

 「木下さん、こんにちは。」
 「こんにちは。」と木下もフランクに返した。
 「木下さんは会計事務所にいたんですよね。私は審査でまだ修行中の身でして、決算書のほうは少し見れるようになってきましたけど、税務の話になると未だに分からないことが多いんですよ」
 「私も会計事務所で働いていたとは言え、税理士の資格を持っているわけではないので偉そうなことは言えませんし、細かいことになるとわかりませんけど、実務の現場で頻繁に出てくるケースというのは、企業審査のときにも押さえておいて損はないかもしれませんね」
 「例えばどんなケースがあるんですか?」と、立ち話をしていた青山が木下の横に座った。
 「その前に、会計と税務の性質というか、目的の違いはおわかりですかね。益金、損金という言葉を青山さんは聞いたことがありますか?」
 「ええっと、会計で言う収益と費用、ですよね?呼び方が違うんだ、くらいの認識ですけど」
 「呼び方だけじゃなくて、中身も少し違います。例えば交際費は、会計上の経費であっても、税務上では原則的には認められない。つまり損金にはならないということです。もう少し突っ込んで言うと、会計上の利益と税務上の所得も、似て非なるものなんです」
 「損益計算書上の税引前当期純利益は、法人所得とは違う、という話は聞いたことがあるような・・・」
 「さすが、その通りです。税務申告書は税引前当期純利益からスタートするんですが、会計上で益金や損金とならないものや、逆に益金や損金とすべきものをそれぞれ足し引きし、税率をかけて所得を求めるんです。この過程のことを、損金算入・損金不算入とか、益金算入・益金不算入とかいいます」
 「会計と税務の目的が違うと言っていたのは、そのあたりのことですか」
 「そうです。ざっくり言うと、会計は会社の業績測定、税務は課税の公平性をそれぞれの目的としています。その違いが、会計上の損益と税務上の所得で金額がずれてくるわけです」
 「なるほど。損益計算書の税引前利益が同じ会社があっても、税額がそれぞれ違う理由はそこですね」
 「他にも、過去の損失分が残っている場合などもありますが、基本的にはそういうことですね」 

会計上の収益・費用と税務上の損金・益金

 会計の世界において、財務諸表を作成する目的は、一定期間の経営成績や一定時点の財務状態を明らかにするためです。
 これに対して税務の世界では、課税の公平性に主眼が置かれるため、そうした各々の目的の違いにより、会計上の収益・費用はそのままでは税金の計算には使えないということになります。つまり、会計上の収益・費用及び利益は、税務上の益金・損金及び所得とニアリーイコール(nearly equal)の関係ということになり、一部の勘定科目や金額にズレが出てしまうのです。
 このようなズレを直すのが、税務上では税務申告書の別表における損金・益金の算入・不算入であり、会計上では税効果会計の適用ということになります。前者はどの会社も必ずやらなければなりませんが、税効果会計を適用しているのは主に税務上とのズレが大きくなる大企業となります。
 税務申告書の別表で行っている作業を簡単に書き出すと次のような算式になります。
「税引前当期純利益(=利益)+益金算入-益金不算入-損金算入+損金不算入=所得」
続いて、申告書内で「所得×税率=税金」の計算がされ、最終的に損益計算書の末尾、「税引前当期純利益-税金=当期純利益」に至るという流れになります。
 実務上、最も多いのは「損金不算入」ですが、これはより正確に言えば、「会計上は費用として計上され利益から差し引かれているが、税務上は損金として認められないため利益に足し戻す」という意味になります。
 例えば、原則として交際費は損金不算入とされています。会計上は交際費勘定として販売費及び一般管理費に計上され、利益が求められていますが、税務申告書の別表では税引前当期純利益に、この交際費を足し戻して所得を求め、税金を計算しているということになります。 

決算書を見る上でのチェックポイント

 青山が触れたように、異なる会社で税引前当期純利益が同額だったとしても、法人税等の金額が同額になることはほとんどありません。
 前述のとおり、収益・費用と益金・損金の不一致に起因し、その事情も会社によってさまざまです。さらに、木下が少し触れたように、過去の損失である繰越欠損金がある場合、法人税等の金額がほとんど計上されないこともあります。
 国・地方合わせた法人税率はおよそ35%(東京都における平成26年度以降の法人実効税率)ですので、税引前当期純利益の金額に実効税率をかけて算出した金額と、損益計算書上の法人税等の金額が大きく乖離する場合は、会計上の利益と税務上の所得が乖離していることになり、その理由を探る必要があります。

 今週は税務の話に入りましたが、中小企業の経営者の中には、業績測定や管理を目的とした会計上の決算書を、税金の計算をするために作っていると思っている方も少なくないようです。
 しかし逆に言えば、中小企業の会計においては税務上の動機付けが色濃く反映されているとも言え、その動機付けとなる税務の考え方を理解しておくことは、決算書を読み解く上でも有益です。今後、こうした税務の話も不定期に取り上げていきます。
 
 

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