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  • 営業外収益の話 ~決算書のくせ者!~

2016.02.15

[企業審査人シリーズvol.107]

経理課の木下に、営業部の新人・東山から電話がかかってきた。
 先日一緒に飲んでから、毎週のように名指しで電話が来るようになっている。現場の新人に頼られることは、木下にとってもうれしいことであり、東山の腰の低さもあって、ついつい熱く語ることが増えている。

 「新規開拓であたっている先が営業利益で毎期赤字なんですが、経常利益は毎期黒字なんですよ。こういう会社はどのように判断すればいいのか迷っていまして・・・」
電話口の東山の声は体育会系の礼儀を感じるが、迷っているわりに声は大きい。
 「営業利益以下の勘定科目は、それこそ会社によって多種多様で、事情もそれぞれ違いますから、その発生原因と性質を把握する必要がありますね」
 「えーっと」と電話の向こうで東山が決算書をめくっているのがわかる。
「この会社の場合は、3年推移で見ると営業利益は赤字だったり少額の黒字だったりするんですが、毎期、営業外収益で黒字になっているんです」
 「営業外収益の中身は何ですか?毎期継続的に計上されるものと一時的なものに大別できるはずですが」
 「営業外収益の金額は毎期だいたい同じですが、科目名は雑収入なんですよ。解体業なんですけど…」
 「なるほど・・・。断定的なことは言えませんけど、私が前職の会計事務所で担当していた解体業では、スクラップ収入を毎期、営業外収益に計上していましたよ」
 「あぁ!スクラップ収入かもしれませんね。以前、鉄くずの売却収入を営業外に計上していた製造業を思い出しました。そういうものは、必ずしも売上に計上されるわけじゃないんでしたね」
 「そうです。雑収入としか書いてないので断言できませんけど、毎期継続的に計上されていて、売上の状況に追随して増減しているようだと、その可能性が高いかもしれません」
 「ハイ!会ったときに裏付けをとっておきます。ところで木下さん、勉強のために聞くのですが、毎期継続的に計上される営業外収益って、他にはあるんでしょうか?」と、東山は相変わらず勉強熱心だ。
 「代表的なものだと、本業とは別の不動産賃貸収入でしょうね。敷地の一部を駐車場として貸しているケースなんかが想定されます。最近だと、工場の屋上に太陽光発電設備を設けて、売電収入を得ている場合も営業外収入として計上されるケースとして考えられます。まぁ、最も一般的な営業外収益は貸付金や預金の利息、受取配当金ですけどね。金額は小さいですが」
「前に、雇用調整助成金というものが営業外収益に出ていたのを見たこともありますが・・・」
 「リーマン・ショックのような経済危機によって、収益が大きくダウンしてしまった時に、従業員の雇用を維持するための助成金ですよ。一時的に工場を休止せざるをえなかった会社にアドバイスしたことがあります」
 「なるほど。基本的には一時的なものなのですね。他にも一時的なものとして多いものは何ですか?」
 「それこそケースバイケースですが、覚えておくといい科目としては、有価証券売却益でしょうかね。ここ数年は株式市場も活況だったので、売却益が計上されるケースもよく目にするはずです。最近は少々違ってきてますから、これからは売却損も出てくるかもしれませんが」
 「なるほど。貸借対照表に有価証券が残っていなければ、売却益もその期に計上されて終わり、ということになりますよね」
 「そうですね。東山さん、もう貸借対照表と損益計算書の関連性もバッチリじゃないですか!」
 「いえいえ、ちょっと前までは、つい貸借対照表と損益計算書を別々に見ていましたが、それぞれの繋がりを意識しないといけないよ、と八木田さんにアドバイスをもらったんですよ」
 「なるほど。八木田さんはそういうアドバイスをするんですね・・・きっと、『東山、各帳票のコネクションが大事だぞ』なんて言ったんでしょう」
 「木下さん、よくわかりますね!そうそう、コネクションと言ってました」
 「やはりそうですか。決算書だけじゃなくて八木田さんの言葉遣いも読めるようになりましたよ」
そう言った木下は、笑顔の八木田を思い浮かべて笑った。

営業外収益

損益計算書に計上される収益科目は、売上高・営業外収益・特別利益の3種類に大別することができます。
 本業での収益は売上高となり、通常の営業活動以外で臨時的に発生した収益は特別利益になります。営業外収益はこれら以外、ということになりますが、金融収益や投資による利益のほか、二人の会話の中にも登場したように本業以外の事業収入が計上されることがあります。
 不動産賃貸収入は代表的ですが、製造業や建設業では鉄クズ等のスクラップ売却収入が計上されることもあります。ただし、注意しなければならないのは、そのような経費が必ず営業外収益に計上されるわけではない、ということです。金額や発生頻度によっては、各々の会社の判断で売上や特別利益に計上されることもあるため、売上・営業外収益・特別利益それぞれの内容や推移を把握することが重要になります。

営業外費用

二人の会話の中では営業外「収益」の話題で終わりましたが、一緒に営業外費用についても確認しておきましょう。
 営業外費用は主に支払利息や手形の割引料(手形売却損)といった財務活動により生じた費用や、投資による損失である有価証券評価損・売却損などが計上されます。臨時かつ巨額な損失は、一般的にその性質から特別損失に区分されますので、営業外費用に巨額の雑損失といった、科目名のみでは詳細がわからない経費が計上されている場合は、十分注意が必要です。

未実現損益

「営業外損益」の項目には、有価証券やデリバティブの運用に伴う損益が計上されることがあります。短期の売買目的で保有される有価証券やデリバティブについては期末の時価で評価され、売却していなくても評価損益は計上されます。株価や為替の変動が大きくなると、評価損益もおのずと大きくなることが想定されますが、このような言わば未実現の損益(売却等によって実現していない損益)も決算書に盛り込まれることがある、ということを念頭に置いておく必要があるでしょう。

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