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175:聖夜の肴 ~季節性資金の話~

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175:聖夜の肴 ~季節性資金の話~

2018.12.20

今年も残りわずかとなる中、審査課の青山は同期で経理課の阿佐見と居酒屋で2人の忘年会をしていた。今秋の若手懇親会で久しぶりに一緒にお酒を飲んでから、旧交を温めるようになった。
「しかしあっという間の一年だったな。青山は今年、うちの課の木下さんとよく飯を食いに行ってたらしいな」
「そうだね。木下さんは会計に関する僕の師匠だからね。会計の奥深さをいつも気づかされるよ」
「俺という同期がいながら誘わないとは寂しいもんだぜ」、そう言いながら阿佐見はおいおい泣くふりをした。
やれやれと青山が窓の外を見ると、雪がちらついている。つられてく外へ視線を移した阿佐見は「雪か!どおりで寒いわけだ」と、熱燗を追加で注文した。
「今日は飲むなあ。まあ2人だけど、忘年会だもんね」
「忘年会と名付けたが、今日はクリスマスだぞ。男二人でいつもの居酒屋なんて・・・!」
「確かにな。営業部の石崎や谷田は来るだろうと踏んでいたのに、まさか断られるとは思わなかったよ」
「石崎はきっと彼女だから、仕方がないな。だが谷田は許せんな。なんて言って断ってきたんだ?」
「実家が年末にかけてとても忙しいらしいよ」
「ほお!」と阿佐見は嘆声を漏らし、他には?と言いたげな表情で、追加で来た日本酒を一口含んだ。続けて板わさをワサビ多めでほおばったあたり、もはや二十代の若者の風情ではない。
「谷田は実家まで気にするのかよ。あんまり俺も知らないけど、確か、かまぼこを作っているとか言ってたな」
「かまぼこってこれ?居酒屋ではオールシーズンだが・・・ああ、そうか。正月のおせちに使うから忙しいのか」
「そうだ、そんなこと言っていた。練り物とはいえナマモノだから、製造だったら今が佳境だね」
「実際どうなんだろうな。青山、面白そうだから電話してみろよ」
酔いが回ったせいか、青山は谷田の迷惑もお構いなしに電話をかけ始めた。
「もしもし谷田です。ああ、青山さん。お疲れ様です。今日は参加できず申し訳ありません。かなり忙しくて」
「本当に実家のお仕事だったんだね!かまぼこがおせちに使われるのはわかるけど、そんなに大変なの?」
「大変なんてもんじゃないですよ。一年の売上の半分をこの時期に稼ぐので、クリスマスどころじゃありません」
「そんなに稼ぎどきなんだ!それは谷田くんの手も借りたくなるわけだ」
このあと青山と谷田は数回やりとりをしたが、谷田が明日も朝早いと言うので青山は電話を切った。
一方の阿佐見はその間、熱燗をさらに追加していた。
「谷田はどうだった?稼げるとか聞こえたが、景気のいい話なのか?」
「かまぼこは“時期もの”なんだとわかったよ。売上の半分がこの時期だと!人繰りも大変そうだ」
「谷田が借り出されるくらいだから、人繰りは大変なんだろう。材料は魚だから、それほど保つものでもなさそうだし・・・短期的に大きな取引になるな」
「となると、ミスター経理・阿佐見的にはどう見る?」
青山はそう言いながら、板わさに手を伸ばした。ワサビが苦手な青山は、かまぼこオンリーである。
「年末に向けて一括の仕入れが生じ、回収は年末から年明けになる。よって、立替資金が生じることになるな。自己資金で回せれば訳ないが、金融機関に対して短期資金を調達するのが一般的だろう」
「さすが、経理課といっても財務企画までやっている奴は違うね。季節性要因の短期資金が発生して、さて返済原資とか返済方法を阿佐見はどう考えるんだ?」
「返済原資は基本的に運転資金と同じ商品の販売代金の回収、つまり売上回収金だよ。一過性のものだから、売上の計画が大きくぶれなければ回収スケジュールに合わせて一括返済でも対応できるだろう。分割返済ができたら、なお良いけどな」
阿佐見はそう言い終えると、お猪口に残っていた酒を一気に飲み干した。流ちょうな自分の回答に酔ったように、また熱燗を注文しようとするので、青山の制止が入った。
「そんなに飲んだか?じゃあ次は審査の目線で季節性資金を語ってもらおう、青山!」
青山はチェイサーの水を一口飲むと、コホンと咳払いをして語りだした。
「審査が日常で目にする決算書は、季節性の要因が除いた内容になっていることが多い。考えてみれば当たり前の話だけど、その要因が起きている頃は主業務に多忙を極めているわけだから、決算している場合ではないよね。まあとにかく、基本的に決算書だけを見ても季節性があるかどうかなんてわからないよ」
「確かに決算期を自由に決められるなら、忙しい時期は外したいな。例えば回収資金で手元資金が比較的潤沢にあって、季節性資金の借入を返済できたあたりの、繁忙ピークから1、2ヶ月後とかに決算ができたら、多少良く見せることができるからな」
「まあ、そういった思惑もあるから、決算書以外にも情報を集めて精査しないといけないね。同業界ならピークもわかるはずだから、ピークを過ぎているはずなのに大量の在庫や売上債権が残っていたりしたら、不良在庫や不良債権を疑わなければならなくなる」
「それじゃあ季節性の要因そのものはどう与信判断に絡めていくんだ?!」と阿佐見が赤い顔で問うた。
「与信判断は取引先の実態把握がポイントだから、例えば季節性要因が発生したとき、常態に比べてどれくらい乖離が生じるかを確認したうえで、資金繰りが悪化しないかどうかを判断する必要がある」
「なるほど、日頃の取引先管理が重要ってことだな。雪の降りも強くなってきたし、そろそろ行くか」
阿佐見は何で満足したのか、脈絡なく会話を終わらせた。酔っ払いの議論は、まあこういうものである。
外は入店前より寒さは厳しくなり、うっすらであるが白い世界に変わりつつあった。クリスマスの音楽とネオンに包まれ、二人はゆっくり駅までの道を歩いた。
「なあ、阿佐見。かまぼこの話ばかりしていたからかな、練り~クリスマスって聞こえてきちゃったよ」
「アホだな、お前は。そういう発言は彼女に甘えるときにしろ!」
入社して数年。ともに風雪に耐えてきた二人の絆が、ようやく「かまぼこ程度」の堅さになった夜だった。

季節性資金について

季節性資金は季節的要因のための一括仕入れ等によって一時的に需要が増加する資金です。コラム中ではかまぼこでしたが、秋口に販売を始める冬物の衣料の仕入資金を夏以前に調達するケースも同様です。季節的な販売需要はその時期のみに集中するため、売れ残りの在庫は商品価値が激減することも多く、売上計画に沿った経営ができるのかが、資金繰りを判断するうえで重要です。

2018年を振り返って

今年は審査課員の青山と経理課員の木下の絡みを主題に、会計をメインテーマとして掲載してきました。与信管理の知識範囲は広範ですが、会計知識はその土台となります。来年も与信管理に役立つコラムをお届けすべく努力してまいります。今年もご愛顧いただき、ありがとうございました。よいお年をお迎えください。

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