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  • 信用状の話 後編 ~信じること、信じられること~

2019.04.18

[企業審査人シリーズvol.183]

審査課の青山がユニバーサル貿易の七瀬に貿易について教わろうと電話をし、電話の相手だった七瀬が唐突にウッドワーク社のロビーに現れ、それから審査課長の中谷が現れ、さらにその背後に七瀬の上司であるMまで登場した。そしてその約1時間後、ウッドワーク社の近くの居酒屋に4人はいた。
 「挨拶に参ったというのはとっさの機転だったんですよね?」と小声で聞く青山を、七瀬が肘で突いた。
 「私もびっくりしたけど、後ろにいるのが見えたからそういうことにしちゃったの!機転がきくでしょ?」
青山と七瀬が出会った経緯について一区切り話が終わると、今度は上司達の話に移った。
「さて、どこから話そうか。俺と中谷ちゃんの馴れ初めの話からか?」
「馬鹿言わないで。あなたとは同期入社なだけ。営業成績が常にトップだったあなたは、わが社の最年少課長になったにもかかわらず、“グローバルの風が俺を呼んでいる”とか言って、転職しちゃったのよ」 「Mさんはうちの会社の方だったんですか。同期ということは、中谷課長の新人時代もご存知なんですね!」
 「ああ、何でも知ってるぜ、青山君。昔は瓶底めがねみたいなのをかけて、物静かな女の子だったなあ・・・」
 「ちょっと、でたらめ言わないでちょうだい!青山は何でも信じちゃうんだから・・・」
 「はっはっは、青山君は営業をやっていたんだから、俺の言っていることが本当だって、わかるだろ」
Mが楽しそうに追加のビールを注文する隙に、七瀬が青山に耳打ちをした。
 「Mさんはスーパーセールスマンだけど、話半分ぐらいで聞いたほうがいいわよ。調子のいい人だから」
 「うん、そうする」と青山が小声で返すと、「おや、若者たち、こそこそ話はよくないな」とMが調子よく笑った。
 「ところで七瀬さん。うちの青山の面倒を見てくれてありがとう。財務はだいぶわかってきたみたいだけど、貿易関係は実務でもあまり関わらないから、これからもいろいろと教えてあげてね」
飲み会の冒頭、ふたりの経緯を知った中谷は、さきほどの泥棒猫を扱うような剣幕を少々恥じ入っていた。
 「とんでもないです!今日は信用状について青山君が質問してくれて、うれしかったんですよ」
上司の前で多少口調が改まっている七瀬が笑顔で返すと、Mが青山に尋ねた。
 「ほぉ、信用状をやったか。どうだ?国内取引ではあまり経験しない考え方だろ?」
 「はい、銀行の保証が入ることで円滑な取引ができる、よく出来た仕組みですね」
 「確かに円滑さは増すな。しかし、その銀行は本当に信用していいのかな?」
 「えっ?それは、銀行だから安全ですよね・・・?」と青山が不安げに中谷の顔を見ると、中谷が返した。
 「確かに日本なら安全性は高いと言っていいかもしれないわ。でも、貿易のフィールドは世界よ」
 「海外の場合、信用状発行銀行の信用に不安があったり、信用状発行銀行所在国の政治・経済が混乱しているといいったカントリーリスクがあったりします。そのようなときは、輸出者は信用状があったとしても、必ずしも安心して取引ができるわけじゃないんです」と、七瀬が続いた。
 「確かに信用状を発行する銀行にリスクがあるようじゃ、信用状もなくなりますね」と、青山が顎に手を当てた。
 「ではどうする?そんなリスキーな信用状発行銀行を信用に足るものにするにはどうしたらいいだろう?」
 Mは手に持った砂肝串を青山へ向けながら、問いを重ねた。だいぶ酔ってきたようだ。
 「輸出者にとって、輸入者サイドにある信用状を発行する銀行の信用力を把握することは難しいですよね。でも、輸入者の信用力だけじゃ貿易できないから信用状を発行するわけですし、信用状なしで取引するわけにはいかない。うーん、それならもう、いっそのこと信用状発行銀行を保証する銀行でもあればいいのになあ」
 青山が頭を抱えていると、七瀬は微笑み、課長の中谷も明るい顔をした。
 「正解だよ。よく思いついたな。そうとも、信用がないなら更に信用を増す努力をすればいい」
ジョッキを片手に笑いながら語るMに続いて、七瀬が解説した。
 「青山君の言ってくれた方法は存在していて、”確認信用状”と呼びます。信用状発行銀行以外の国際的に信用の高い銀行に“信用状の確認”を依頼するんです。これは信用状発行銀行が決済不能に陥った場合、代わりに手形決済を保証するというもので、信用状の信用度を高める働きがあります」
 「へえ、ホントにそういう方法があるんですね。でも、それをやるということは、輸入者や信用状発行銀行からしたら、自分たちは信用力が無いのか?ってことになりますね。まあ、ビジネスだから仕方ないのかな・・・」
 「そんなことないぞ。実際、そういうことで取引関係が悪くなるケースもある。なんせ海外だから距離は遠く、文化も異なっていて、ちょっとしたすれ違いが、大きな溝になることもままある。だから貿易の実務では、信用状の確認を信用状発行銀行に通知せずに行う、“サイレントコンファーム”という手法が存在する」
Mが青山の疑問に答えると、青山が深くうなずいた。
「そうなんですか。会社同士の取引でも、人と人との関係と同じような配慮があるわけですね」
学びを得て充実した青山の表情を、中谷は隣の席でしみじみと見ていた。
ほどなく飲み会がお開きとなり、若者の青山と七瀬が会計をしているうちに、中谷とMは先に外に出た。
 「確かにあなたの言うとおりね、M。私たちは彼らを成長させなければいけない。そのために、多くの会社やプレーヤーに関わらせてあげることが大切ね」
 「まあな。彼らが自分たちでやれるというなら、俺達はそっとしていればいい。それこそ“サイレント”だな」
 店の扉の内側では、会計を済ませて外に出ようとした七瀬に、青山が思い出したように聞いた。
 「ところでMさんって、なんでMなんですか?」
 「えっ?MはMだからに決まってるじゃない。変なの!さあ、帰りましょ!」
その日の七瀬との会話はそれで終わり、中谷との関係はわかったものの、Mの謎は残ったのだった。

確認信用状

信用状発行銀行が信用状の信用度を高める目的で、事項の支払確約に加え、国際的に信用度の高い銀行から更に信用確約を受けた信用状を確認信用状といいます。確認信用状では、信用状発行銀行が決済不能に陥った際、この信用確約した銀行(確認銀行)が信用状発行銀行に代わって手形決済を保証します。なお信用状発行銀行のみ支払を確約した通常の信用状を、確認がないことから無確認信用状といいます。

サイレントコンファーム

上記のように確認信用状を信用状発行銀行が確認銀行へ要請して信用確約を得ることを、オープンコンファームと呼びます。一方、輸出者が信用状発行銀行を介さずに直接、確認銀行へ確認を依頼し、確認を得ることをサイレントコンファームと呼びます。サイレントコンファームでも、オープンコンファームと概ね同様のメリットを享受することができます。また信用状発行銀行及び輸入者には、確認の事実を伝えないため、輸出者にとって輸入者との取引関係を損なうことなく、回収リスクをヘッジできます。
与信管理上、対象企業の信用状取引において確認の有無を調べることは困難です。しかし貿易取引を理解することは、例えば輸出者の場合、回収リスクをどの程度見積もっているかを観察する契機になるでしょう。

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