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2019.08.05

お客さまの求めているものは、将来に向けてのインサイト
∞∞ Data Designers ∞∞

人工知能で経済の未来を先取りする「xenoBrain(ゼノブレイン)」を展開し、未来を予測するテクノロジー「Forecast Tech」(フォーキャストテック)分野(※1)をけん引するxenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)代表取締役社長 関 洋二郎様に様々なお話を伺いました。

■xenodata lab. 沿革
2016年2月 xenodata lab. 設立
2016年8月 第一期MUFG Fintechアクセラレータ(※2) グランプリ受賞
2017年2月 メガバンク史上初のスタートアップ出資として日経1面に増資の記事が掲載
2018年7月 Bloomberg社とデータ連携開始、ダウ・ジョーンズ社と業務提携
2019年4月 時事通信社と業務資本提携
2019年6月 SaaS型AI経済予測サービス「xenoBrain」正式版リリース


※1 Forecast Tech(フォーキャストテック)
予測(Forecast)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、蓄積されたデータをもとに将来予測に関わるサービスを提供すること

※2 MUFG Fintechアクセラレータ
MUFG Fintechアクセラレータ(現:MUFG Digitalアクセラレータ)は、MUFGが2015年に設立した邦銀初のスタートアップアクセラレータ・プログラム
-まずは、関さんが起業しようと思われた「原点」は何だったのでしょうか?

前職(ユーザーベース)でSPEEDAというサービスの事業開発責任者に3年ほど従事していました。その際、お客様は財務データなどの大量の事実情報を求めますが、本質的に必要とされているものはそのデータを用いて分析した結果、つまり、将来に向けてのインサイトなのではないかという気付きがありました。各サービスによって情報の収集までは効率的にできますが、その先の分析は結局人間の知能で行わなければいけない。分析をするにしても、専門知識が無いと中々時間もかかるし難しいですよね。そこに当マーケットのペインポイントがあるのではという仮説から起業に至りました。


-創業と同時にアクセラレータプログラムに参加されたのでしょうか?

ほぼ同時ですね。設立直後にアクセラレータプログラムが始まり、参加させていただく事になりました。


-当時、アクセラレータプログラムに期待したものは?

正直、当初は三菱UFJブランドとネットワーク以外は期待していなかったんです(笑)。ただ、「金融機関の各種業務は一通りヒアリングできるだろうな」、「今後の業務に活かせるだろうな」とは思っていました。実際に参加するとアクセラレータ自体のレベルが高く、「このプログラムを遂行する事で事業を創っていく」という意識に変わりました。MUFGの方々のサポートが厚く、ともすれば、主催側が主役だというプログラムが多い中、「ベンチャーが主役である」を貫かれていたのは、参加している側としても本当にやりがいのあるものになっていました。

プログラムの体験談については、MUFGが運営する『MUFG Innovation Hub』にも掲載されています。
https://innovation.mufg.jp/detail/id=95
-御社の主力サービスを教えてください。

「xenoBrain」です。「xenoBrain」は、経済ニュースや決算情報を自然言語処理技術で解析し、需要動向・企業業績予測を可視化する「SaaS型AI経済予測サービス」です。
xenoBrainサービスページ: https://www.xenodata-lab.com/service/
-「xenoBrain」について詳しくお聞かせください。

「xenoBrain」は、今日起きたニュースから、次に起こる経済事象、将来的に影響を受ける企業をAIが瞬時に予測することで、金融機関の業務効率化、事業会社の経営意思決定のサポートを実現します。
具体的には、今日「欧州で猛暑発生」というニュースが出たとすると、そこから受ける影響として「清涼飲料需要の増加」や、「夏物衣料需要の増加」、「家庭用空調機器需要の増加」などを予想します。「家庭用空調機器需要」が増加すると、「パワー半導体需要の増加」に繋がり、そして「半導体メーカーの増収」と、「事象と事象の因果関係」を繋げていくことで、このニュースをきっかけとして将来、経済や企業にどのような影響があるかを予測するというものです。これは過去の膨大なニュースを自然言語処理技術で解析して構造化し、「事象と事象の因果関係」のデータベースを作り上げた事で実現しています。
-「xenoBrain」のローンチまでに苦労した点などがあればお聞かせください。

コンセプトは明確でしたが、いくつかハードルがありました。「xenoBrain」を実現するには、解析する対象のニュースなどデータを購入しなければいけませんし、データ解析に留まらず多様なエンジニアの採用、資金調達が必要で、所謂スタートアップ企業が実現させるには現実的なハードルが高いプロダクトでした。そのため、最初はAI自動決算分析のサービスを始め、自社の「設計力」「技術力」「プロダクト力」を投資家にみせるところから着手していくようにしました。
また、ようやく「xenoBrain」が開発できるタイミングになると、想定以上に難しいことが出てきました。例えば、技術的にはグラフ表示やデータベースのパフォーマンスなどです。データに関しては、自由記述が想像以上に多い点。読み解く上で、業界知識やリサーチナレッジなどを強化していくことも課題でした。
-AIの世界では技術的には「自然言語処理技術」は他にもあるように思いますが、御社の強みは何ですか。

一般的な「自然言語処理技術」では、品詞分解をして名詞を抽出します。この出現回数や傾向などを分析するという処理が多いのですが、xenodata lab.としては、名詞での傾向を分析するのではなく、「文」そのものの構造を理解させて、意味付け、タグ付け、構造化といったことが高精度で実施できており、構文解析しているというところが強みです。
例えば、「傘と靴がない」という文章があったとします。品詞分解して名詞抽出すると、「傘」、「靴」、「ない」に分割して傾向分析していきますが、xenodata lab.では、「傘と靴がない」は、「傘も靴もない」という構文解析をすることで、より精度を上げていくという手法を取っているということです。現在は、精度向上のため、辞書、パターンを積み上げているという状態です。


-実際の精度は気になるところですが。

精度については、2つの段階があると考えています。第一段階は、仕様通りに取得、解析できているかどうか、つまり「論理的に正しい」という段階。これは、ある程度の精度になっており、事実の連鎖というものを表現できています。第二段階は、「1つのニュースから、過去そのルートを通って増収/減収した」という事が現実に起きているかという精度で、これはまだ検証途上です。今後は、事象間の関連性の重み付けを行い、第二段階の精度を向上させていきたいと思っています。


-「xenoBrain」は、すでに大手企業が採用しているとのことですが、評価されているポイントは何でしょうか?

評価されている点としては、事象のメッシュが細かいため、実務的にわかりやすいと言われています。また、2019年6月20日にダウ・ジョーンズ社との提携を強化し、各業界の専門誌や地方紙、海外紙を大幅に拡充しましたので、ニュースの幅が厚いという点も好評です。今後も、より多く専門誌の情報を組み込んでいきたいと考えています。ニュースソースが増加すると、業界専門誌独特の表現なども読み込むことになり、辞書の改善にもつながります。
また、「xenoBrain」では、各業界のトピックをまとめるようなリンク集も添付しています。メガトレンド、セクターごとの重要テーマなどをまとめてリンクにすることで、利用者の導線向上にもつながっています。


-一方で課題や今後の予定などありましたらお聞かせください。

「xenoBrain」でつながる情報に重要度や時間軸の示唆を付けていきたいと考えています。理想は「5Gサービスが始まったら○○社が増収になる確率は、過去の傾向からすると76.5パーセント。それは2期先の決算です」という予測レベル。こういう示唆まで出していくのが、ここ1、2年のスパンでやろうとしていることですね。
-帝国データバンクには国内660万社・拠点900万社の情報を保有しており、与信管理だけではなくマーケティングにも多く利用していただいています。もし自由にデータを使えるとしたら、どのように使ってみたいですか?

将来予測が命題なので、是非、未上場企業の将来予測を出していきたいです。帝国データバンクが保有している、未上場企業の業績分析や事業内容、現況と見通しなどのテキストデータを総合的に判断し、各種ニュースソースと組み合わせ、将来予測したいです。現在は、上場企業のみのため、未上場企業が検索結果に出てくると、情報に厚みがでて、現在とは全く異なるサービスになる可能性もあります。
-TDBカレッジは「ビジネスパーソンのデータリテラシーを高める」をコンセプトに運営しています。関さんがビジネスをする上で、データを読み解くという観点で大事にしていることを教えてください。

データを読み解く観点としては、それがあっているのか間違っているのか、単にデータを見るのではなく、正解のイメージを持って読み解くようにしています。また情報に対しては常に疑いながら見るようにしています。例えば、開発時には、これくらいの品質になるはずだという観点、結果そうなっていない場合は、辞書やデータ量が足りていないのでは、集計の仕方に課題があるのではといった感覚を持つようにしています。AIは無機質な部分ではありますが、人間がイメージをつけること、またその検証を重ねることで精度が向上していくものであると考えています。
-関さんにとって、「データ」とは?

前職でデータ監査しているときは、億単位のレコードを抽出していたこともあります。身近に膨大なデータベースがある環境下で、このデータを組み合わせたら面白いということを妄想することが楽しかった記憶があります。


「データ」とは、アイディア次第で何でもできる「ブロック」のようなものである。



(聞き手:帝国データバンク 営業企画部 北野信高・黒澤学)


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