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  • 雇用を守る制度「雇用調整助成金」とは? ~リモート・レクチャー~

2020.04.17

[企業審査人シリーズvol.208]


新型コロナウイルス感染症対策により、ウッドワーク社も80%以上の従業員が在宅勤務になっている。ただ在宅勤務といっても、業務によっては在宅でできないこともあるため、自己研鑽を兼ねた自宅待機状態になっている従業員もいる。とくに訪問営業ができない営業部門では、得意先とメール等で連絡をとりつつも、どうしても空いてしまう時間は学習等に充てられているようだ。

そうした状況下、営業部のマネジャー・八木田がパソコンのテレビ会議ソフトを活用したレクチャーを思いつき、経理課の木下に相談を持ちかけた。新しいことが好きな八木田らしい動きである。テレビ会議ソフトは会社からは支給されていないが、八木田が探して課内で使うようになっているらしい。そこに経理課の木下を招待し、財務に関する話題を八木田と会話するのをほかの課のメンバーが同時に視聴する形式で行うことになったようだ。木下も在宅勤務を予定していた月曜日の13時、リモート・レクチャーが始まった。
「みなさん、大変な中お集まり、ありがとうございます…と言うのも変ですかね」と、律儀な木下が画面の中で挨拶をしたが、なぜか背景は森、鳥のさえずりも聞こえる中で木下は右手にティーカップを持っている。
「木下さん、今日はありがとうございます!いきなりのサプライズですね」
八木田の言葉を返すと、営業課のメンバーの笑い声も聞こえてきた。メンバーのマイクもオンになっている。
「背景がバーチャルで切り替え可能ということだったので、やってみました。音は、山登りをしたときにフィールドレコーディングした森の自然音を流しているんですよ」
「おかげでこちらもリラックスできそうです。さて、今日は思いつきでやっていることもあって、事前にテーマを絞ったりしていないのですが、今はやはり新型コロナウイルスの影響が気になります。木下さんは前職ではこういう異常な状況というのは経験されていますか?私たちの顧客企業が置かれている状況を理解しておく必要があると思いますので、ぜひ教えていただきたい」
そう聞く八木田の背景には本棚が映っている。これはバーチャルではなく、書斎で話しているようだ。建材業界の営業部門の勉強会としてはやや異例なテーマだが、八木田が毎日午後の1時間組んでいるカリキュラムでは商品知識や提案事例、工法学習などが組まれており、この日のレクチャーはややアイスブレイク的なニュアンスも含まれているようだ。毎日自分の話ばかり聞かされるメンバーへの八木田の配慮もあるようだ。

「ここまでの状況は初めてですが、前職の会計事務所に就職した翌年はリーマンショックがありましたし、確定申告の時期に東日本大震災も経験しました。これらのときには、目下の約定返済が滞ってしまうかもしれない、といった資金繰りの相談をたくさん受けましたね」
「そうでしょうね。キャッシュインフローが大きく減る一方、固定費の支払いや借入返済は続きますからね。そのとき、木下さんはどう対応したんですか?」
「早い段階で取り掛かったのはリスケジュールです。金融機関側が着目していたのもキャッシュフローの計画でしたので、それを盛り込んだ形で経営改善計画書をクライアントの社長と一緒に作りました」
緊急対応とは雰囲気的にほど遠い森の中、木下が真面目な顔で話している。
「ただ、今回のように見込みがはっきりしないと、計画を立てるのは実にディフィカルトでしょうね」
話が深くなるにつれ、八木田の言葉には不自然なカタカナが増えてくる。
「そうですね。緊急性が高い今回の事態に鑑みて、金融機関は資金繰り相談窓口を開設し、すでに多くの相談が寄せられているようです。平行して、家賃などの固定費についても個別交渉していく必要があります」
「先日私のカスタマーと会話したときには、雇用調整助成金のことをお話されていましたが、これについて少しレクチャーをオーダーしたいのですが。最近、紙面やマスコミでもピックアップされていますね」
「この制度の主管は厚生労働省で、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成するものです。従業員の雇用を維持しながら休業を支える制度です。私も前職では、東日本大震災時に製造業のクライアントが利用しました。仕入先である東北の部品工場が止まってしまい、こちらも一カ月操業できなくなって、制度を使うことになったんです。今回は緊急対応期間として4月1日から6月30日まで、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける全業種が対象となっています。雇用調整、つまり休業を実施し、通常は売上高や生産量など生産指標の3カ月平均が10%以上低下した場合に申請できますが、これも1カ月5%以上低下により申請可と、かなり緩和されています」
「なるほど、さすがエマージェンシー対応ですね」
「休業手当に対する助成率も変わっています。通常は中小企業が2/3、大企業が1/2と定められていましたが、今回は中小企業が4/5、大企業が2/3まで引き上げられています。よく勘違いされますが、休業手当の全額助成が受けられるわけではなく、また1人1日当たりの雇用保険基本手当日額の最高額として8,330円(※)が上限となっています。解雇等しなければ中小企業の助成率は9/10まで適用されます」
「この助成金は、スピーディにペイされるのでしょうか?」
「雇用調整助成金を受け取るまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。まずは、休業の具体的な内容を検討し、労使間で休業にかかる協定をつくります。それに基づき、雇用調整の計画届を提出し、休業を実施します。ただ、今回は特例として、この計画届の提出は休業の実施後でも可となっています。休業計画では実施予定時期・日数や時間数、休業対象となる労働者の範囲、人数に加え、休業手当の額または算定基準などを決める必要があります。そして休業の実績に基づき、支給申請を行う手順となります」
「そうなると、休業期間中のキャッシュアウトについてはアナザー・メソッドが必要になりそうですね」
「はい。喫緊状況に鑑み、雇用調整助成金の申請書類も簡素化されているようですが、複数の対策を検討しなければない経営者にとってハードなのは間違いないと思います」

「あ、木下さん、あっという間に時間が来てしまいました。最後にうちのメンバーにひとこと、お願いします」
「我々は極力自宅勤務で対応し、これ以上感染を拡大させないことがまず何より大切なことだと思います」
「ありがとうございます。メンバーも、しっかり聞いてくれたようです」
”ステイ・ホーム!この機会こそスタディして、キャパシティを上げよう!”とパソコンの画面に八木田のメッセージが現れ、本日のリモート・レクチャーは終了したのであった。

(※)1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額の上限(8,330円)は令和2年3月1日時点。

雇用調整助成金の特例措置の拡大

急速に拡大する新型コロナウイルス感染症により、多くの事業主が甚大な影響を受けていることに鑑み、これまであった雇用調整助成金の特例措置の拡大が図られています(詳細は、厚生労働省のサイトにおいて、具体的な申請手続きをまとめたガイドブックやFAQなどがまとめられています)。4月13日時点において、緊急対応期間は6月30日までに定められていますが、今後延長される可能性もあります。お客さまとの会話や状況把握において、予備知識として知っておきましょう。

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