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  • 政府系金融機関による融資支援策

2020.05.08

[企業審査人シリーズvol.212]

その日が在宅勤務日だった経理課の木下は、テレワークで対応可能な伝票処理を進めていた。ペーパーレスで対応できる業務をこなしながら、輪番出社時にチェックすべき原本資料のリストを同時並行で作っていると、営業課の谷田から電話がかかってきた。木下には会社からスマホを支給されていないが、何度か食事もともにしている谷田とは個人の連絡先も交換している。
「もしもし、木下さん。少しお聞きしたいことがあって…。今、大丈夫ですか?」
谷田の口調はいつものように丁寧だが、電話で相談してもよいのかという戸惑いも混じっている。
「谷田さん、お疲れ様です。大丈夫ですよ。私は一人暮らしなので、集中しすぎて困っていたくらいです」
在宅勤務で音声コミュニケーションが少なくなっている中、谷田の電話が木下にはうれしかったようだ。
「私も一人暮らしで、トレンド情報のチェックや自己学習を進めているんですが、何をどこまでやればよいのか、悩ましく感じています。今日はその中で気になった企業の資金繰り対策、新型コロナウイルス関連の国の融資による支援策について教えてもらいたくて、電話したんですが・・・」
「谷田さん、勉強熱心ですね。営業でそこまで踏み込んで勉強している人は少ないんじゃないですか?」
「そうかもしれませんが、営業で中小の工務店の経営者とお会いすることが多いので、そういうことも知っておくと経営者の置かれた状況がわかって、話も広がるんじゃないかと思いまして・・・」
「経営者目線も意識した営業を考えているんですね。ぜひ手伝わせてください。私もコロナ関連の制度は前職からの癖で日々チェックしています。では代表的な、日本政策金融公庫が窓口になっている融資支援策についてお話ししましょう。目下、政府系金融機関の融資による支援は、大きく3段階にわかれています。まず、売上減といった数値要件にかかわらず、中小企業の経営基盤強化を支援する『セーフティネット貸付』があります。正確には『経営環境変化対応資金』というもので、もともと売上減が要件でしたが、特例措置により緩和され、今後の影響が見込まれる事業者も融資の対象となりました」
「これは、基本的に運転資金に対応するもの、ということで良いんですよね?」
「企業を維持する上で緊急に必要な設備資金にも対応できます。返済期限は設備資金が15年以内、運転資金が8年以内と設定されています。いずれも据置期間は3年以内となっています」
「据置期間というのは、確か元本の支払いをしなくてもよい期間ですよね」
「はい。ですが、この『セーフティネット貸付』には基準金利がかかります。利息の支払いが必要になりますので、状況に応じて他の融資制度も設けられています」
「ちょっと待ってくださいね・・・」と、熱心な谷田は電話の向こうでいつものようにメモをとっているようだ。
「いいですか?では次は2段階目にあたる無担保・別枠で設けられている『新型コロナウイルス感染症特別貸付』を紹介しましょう」
木下は融資窓口の人かと思うほど流暢だ。寡黙な在宅勤務が増えても、口はまだ錆びていないようだ。
「これは、最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している事業者が対象になり、融資後3年目までは基準金利から0.9%引き下げられます」
「融資限度額というのがあると思うのですが、これはどういう設定でしょうか?」
「日本政策金融公庫では、個人事業や小規模企業向け小口資金を支援する『国民生活事業』と、中小企業向けの長期事業資金を支援する『中小企業事業』に分かれていて、それぞれに限度額が異なります。先ほど紹介した『セーフティネット貸付』は国民生活事業では4,800万円、中小企業事業では7億2千万円となっています。『新型コロナウイルス感染症特別貸付』は、国民生活事業では別枠6,000万円、中小企業事業では別枠3億円となっています。あとで一覧表のリンクをお教えしますので、そちらを見てください」
「ありがとうございます。この感染症特別貸付にも据置期間は設けられているんですよね?」
「はい。整理すると、設備資金20年以内、運転資金15年以内の返済期間で、うち据置期間は5年以内となっています。ちなみに、これらの期間は国民生活事業、中小企業事業ともに同じです」
「なるほど、それでも、据置期間には利息を払うのも大変だ、という会社も少なくなさそうですね…」
「現預金の期末残高が月商未満の企業は全体の4割ほどと聞いたことがあります。まさに、谷田さんの言うとおりでしょうね。そこで、さらに追加の要件を満たせば、実質無利子の対象となる制度が設けられています」
「それです!無利子・無担保というのを最近耳にしたのですが、これはどのようなものですか?!」
電話口の谷田の声がなぜか大きくなって、木下は音量を少し下げた。
「これが3段階目にあたる支援策です。手法としては『特別利子補給制度』の活用となります。この対象は先ほど紹介した『新型コロナウイルス感染症特別貸付』や『新型コロナウイルス対策マル経融資』等です。債務者の利子負担を軽減するための給付金ということです」
「なるほど、借入金の金利そのものがゼロになるわけではないのですね。『実質』の意味がわかりました」
「申請の要件は事業規模によって異なります。小規模な個人事業主では要件が設けられていませんが、小規模事業者は売上高が15%減少、中小企業者は売上高が20%減少した場合となります」
「小規模事業者とはたしか、卸売業・小売業、サービス業は従業員5名以下、製造業、建設業、運輸業、その他業種は従業員数20名以下でしたね」
「さすが谷田さん、勉強していますね!この利子補給の期間は借入後当初3年間で、補給対象の上限額も設けられています。申請方法等、具体的な手続きはこれから公表されるようです」
「なるほど、資料を眺めていただけの時より、耳で聞いて理解が深まりました。ありがとうございました!」
「いや、私も最近話す機会が減っていたので、ちょっとスッキリしました。谷田さんがよければ、今晩このままオンライン飲み会をやりましょうか。レクチャーの続きをしますけど・・・」
「木下さん、ありがとうございます。今晩はちょっと予定がありまして・・・またご連絡します!」
巻き気味に電話が切れ、少し発散不良の木下の頭に、ふと審査課の青山の顔が思い浮かんだ。「元気かなあ・・・」と思った直後、(他に思い浮かべる相手はいないのか?)と、木下はひとりツッコミをしたのだった。

新型コロナウイルス関連の融資制度情報

紹介した融資制度は日本政策金融公庫のもの(4月20日時点)ですが、さらに旅館、飲食店、理美容店などの事業者向けの「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」といった別枠の制度もあります。他にも民間金融機関や信用保証協会、商工組合中央金庫等による支援制度も設けられています。多くの企業が金策に走っている中、それらの概要を理解しておくことも、顧客理解につながると言えるでしょう。

<経済産業省作成資料へのリンク>
・資金繰り支援内容一覧: https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shikinguri_list.pdf
・支援策パンフレット: https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

新型コロナウイルス関連支援情報

新型コロナウイルス感染症に関連する融資や補助金、協力金などの支援制度に関する情報を都道府県別にまとめました。
https://www.tdb.co.jp/corp/corp09_covidrelatedinfo.html

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