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2020.12.09

[企業審査人シリーズvol.228]


日に日に気温が下がり始め、初冬を迎えると、新型コロナウイルスの感染が再び拡大を始めた。ウッドワーク社でも、全社の出社率を再び60%まで引き下げる指示が出された。ウッドワーク社では緊急事態宣言以降、感染拡大が落ち着いた後も出社率を上げながらテレワークを継続、この間にオンラインアプリの拡充や業務のペーパーレス化を進めてきたため、今回は対応がスムーズである。一方、審査課の青山と経理課の木下が職場で顔を合わせる機会も再び減ってきた。会社近くの喫茶店や居酒屋にも行きづらくなっている中、木下が青山に「オンラインで晩酌しませんか?」と誘い、青山は「それはいいですね!」と快諾した。
2人とも在宅勤務のその日、あらかじめ決めておいた「勤務時間15分後」に青山がアプリを開き、指定された場所に入ると、木下の顔がすぐに現れた。
「お疲れさまです、青山さん。こうしてモニター越しにサシでしゃべるのは初めてですね。新鮮です!」
そう言う木下の手元には日本酒の小瓶と枝豆を盛った小皿がある。
「終業15分後からこうやってお酒を飲めるというのは在宅勤務の醍醐味ですね!マスクをしていない木下さんの顔を見るのも久しぶりな気がします。しかし、“withコロナ”になってだいぶ経ちますが、このタイミングでオンライン飲み会に誘うなんて、何かあったんですか?」
そう言う青山の右手にはビールの500ml缶が握られ、ポテトチップスの長い筒も見える。
「正直に言うと、新しいタブレット端末を買いまして・・・試しに使ってみたかったんですよ。オンライン・ミーティングが増えていますし、プライベートではサブスクリプションの電子書籍読み放題サービスも使っているので、つい奮発して最新型に手を出してしまいました」
「いいですねぇ。僕も社内研修の時に会社のタブレットを貸与してもらいましたが、会社から支給してほしいですよね!社内研修は在宅での研修でしたが、グループディスカッションが意外とやりやすくて驚きました」
「ブレイクアウトルームですね。あの機能を活用すれば、オンラインでもグループワークに取り組めます。タイマーが画面に出ていたり、資料を簡単に共有できたり、良い面もたくさんありますよね」
「そういえば先日、八木田さん主催のオンライン営業勉強会にオブザーバーとして参加しましたが、当日、お子さんが乱入するハプニングがあって微笑ましかったです。八木田さんは真面目に謝罪していましたが」
「そんな面白いことがあったんですね。最近はオンライン会議や社内セミナーを動画のアーカイブとして残せるようですが、それも残しておいてほしかったですね」
「アーカイブ、そうそう、人事の同期が言っていましたが、リアルの会場で行われたセミナーを録画したデータを人事部がたくさん持っていて、それらを編集してアーカイブ化するらしいですよ。中谷課長や水田さんの若い頃の雄姿も映っているかもしれませんよ!アーカイブは当日参加できなかった人や復習に便利ですね」
「青山さん・・・、中谷課長はまだ若いでしょう。あんまり口を滑らせるとまた叱られますよ!ところで、審査の仕事でもそろそろコロナの影響が色濃い案件が出てきているんじゃないですか?」
「工務店関係が多いので、まだあまり大きな影響はありませんが、飲食業や製造業を顧客としているところは、受注が減っているところもあるようです。そういえばこの前、木下さんにコロナ関連の特別損失について話をしてもらってから、時間があるときに有報で他の業界の取り組みや方針もチェックするようにしています」
「いいですね。有報はつい決算書ばかり見てしまいますが、青山さんはどこに注目しているんですか?」
少々前置きが長くなったが、ここからが今日の本題である。
青山が2本目の缶ビールをプシュッと開けながら、木下の質問に答えた。
「有報の構成はだいたい決まっていますから、『事業等のリスク』でコロナの影響に言及しているものが大半ですよね。たまに『経営方針・・・、経営環境及び対処すべき課題等』に詳細を載せている会社もありました」
家飲みの特徴として、緊張感がないためアルコールが早く回る、ということがある。青山も「経営方針~課題等」と思い出しながら言うのに10秒ほどを要した。
「なるほど、有報の『事業の状況』のところにある項目ですね」
「投資家が期待する好開示のポイントとして、新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&Aが金融庁からリリースされていました。これを参考にしている企業が多いようです」
「調べていますね、青山さん!ところで上場企業のコロナ対策で参考になるようなものはありましたか?」
「多いのはやはり、出張の制限やテレワーク・時差出勤の拡大、従業員の分散配置などの感染症対策ですね。テレワークの規模を示す記載のほか、コロナの収束にまだまだ時間がかかると想定して在宅勤務や交替勤務、時差出勤を一時的な措置にとどめず通常の勤務体系として継続する動きもみられました。海外に拠点がある企業などは感染リスクが高い国や地域との渡航を制限しつつ、海外子会社や工場における生産活動の再開時期を案内しているものもありましたが、業績に与える影響を予測するのがなかなか難しいようです」
「確かに、この事態がどこまで続くのかも見通しづらいですからね。財務面や資金繰り面などの対策について言及しているケースはありましたか?」
「はい。不測の事態に備えるために経費や投資を抑制し、金融機関から借入枠を増やして手元流動性の確保に努めるといった記載を目にしました。実際、コミットメントラインを新たに設定したり、当面の手元流動性を確保するために借入を実施したという記載がありました。在庫調整に入った製造業も多いようです」
「やはりそうですか。検討していた大きな投資をゼロベースで見直すケースもあるでしょうね」
「悪影響ばかりに目が行ってしまいますが、支援基金を立ち上げた企業もありましたし、EC部門が好調といった話もありました。すべてにおいて悪いことばかり、ということではないとも感じますね。事業内容にもよりますけど、こういうピンチを企業体質の強化につなげられるかが企業経営の力ですよね。先日八木田さんも、デジタルトランスフォーメーションこそ、これからのキーワードだ!と言っていました」
そう勢いよく話した青山の顔が画面の中でフリーズし、それっきり動かなくなった。
数分後、木下のスマホに青山からメールが入った。
「勢い余って缶ビールをパソコンのキーボードにぶちまけてしまいました。これにより私のデジタルトランスフォーメーションは大きく後退し、損失額も多額に及ぶと予想されます。今日はこれでお開きにさせてください」
「やれやれ、彼にオススメのタブレットでも選んでおくか」と、木下は残った日本酒を飲み干したのだった。

有報における「事業等のリスク」

有価証券報告書では、企業の経営成績等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクが「事業等のリスク」に記載されます。具体的には、そのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容のほか、対応策の記載が求められています。今回のコラムでは、新型コロナウイルスによる影響に着目しましたが、会社によって抱えるリスクは様々です。この時期、半期・四半期報告も含め有報を見る機会があれば、「事業等のリスク」を確認しておきましょう。

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