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  • 男性の育休取得への取り組みと変わる働き方~景気のミカタ~

2021.08.20

女性活躍の推進のために男性の育児休業取得は欠かせない要素ですが・・・

今回の景気のミカタは、男性の育児休業取得に向けた企業の取り組み状況と、働き方にも影響を与える男性の育休取得後の行動や意識の変化について焦点をあてています。

企業の半数が男性の育休取得を推進

図表1:男性の育児休業に関する企業の取得推進状況
2021年6月、出産や育児などによる労働者の離職防止や仕事と育児の両立を目的に、改正育児・介護休業法が施行されました。なかでも2022年4月からは、男性の柔軟な育児休業取得の推進に向けた枠組みが創設される予定となっています。

そうしたなか、2020年度に育児休業制度を利用した男性は12.7%という調査結果が公表されました[1]。依然として低い水準ではありますが、前年の7.5%から5.13ポイント上昇し、男性の育休取得者割合は過去最高となっています。

帝国データバンクの調査[2]によると、企業の半数が男性の育休取得を推進または今後推進するとしています。その内訳は、自社において「積極的に推進している」企業が9.5%となっていました(図表1)。また、「利用実績が少ないが、今後取得を推進していく」(21.3%)と就業規則以外で「取得しやすいように社内規定などを整備する」(19.8%)を合わせると、男性の育休取得を『今後推進する』企業は41.1%と4割を超えています。
図表2:男性の育児休業に関する企業の取得推進状況~規模別~
また、この結果を企業規模別にみると、特に『今後推進する』企業において大きな差が表れていました。具体的には大企業では51.4%にのぼる一方で、中小企業は39.0%、小規模企業は28.8%と、大企業と比べてそれぞれ12.4ポイント、22.6ポイント下回っていたのです(図表2)。

とりわけ中小企業からは、「規模の小さい企業では育休などによる不足人員を埋めるのは、金銭的に厳しい」(一般機械器具卸売)や「育休の影響によって派遣社員の雇用など期間限定の補充も視野に入れているが、復職後の時短勤務も会社および社員にとって負担が大きい」(飲食料品・飼料製造)など、人員面に対する課題をあげる意見が多く聞かれていました。

男性の育休取得後の行動や意識の変化、企業に与えるプラスの効果

他方で、男性の約3割は育休の取得を希望しながらも利用できていません[3]。個人として取得したいという考えの一方、働いている職場との関係で、育児休業の制度利用を躊躇することもあるのではないでしょうか。こうした状況のなかで、男性の育休取得に関して非常に興味深い研究[4]があります。そこでは、男性が育休を取得する前と後で、働き方に対する行動や意識が大きく変わることが統計的に検証されています。

この研究によると、第1子誕生後に育休を取得した男性は、取得から1年後の働き方として、仕事をチームで細分化したり、共有する行動を積極的に行うようになるほか、定時で退社し勤務時間を短縮する意識を高めるという傾向が表れています。つまり、育休取得者は単に早めに帰宅するだけでなく、業務効率を上げることで、生産性を保ったままワークライフバランスを実現しようとする方向に行動が変化する傾向があるということです。また、育休中に家事・育児を積極的に行うことは仕事の進め方を改善する要因になるという結果も示されています。

また、第1子誕生後の働き方について、育休取得者と育休を取得しなかった人を比較すると、育休取得者は不要なミーティングを減らしたり、手順や手続きの簡略化を図るように行動し、効率よく仕事をするという特徴がみられています。

さらに、男性の育休取得はキャリア形成に影響を与える可能性があることも示唆されています。特に、育休取得後は、会社への帰属意識や好感度が高まる一方で、転職への関心度にはあまり影響しないという傾向もあるのです。

男性が育児休業制度を利用することで、企業は一時的に人手不足を生じることになるかもしれません。また、これらの結果には個人差があることはいうまでもないでしょう。しかし、働き方に影響を与える男性の育休取得後の行動や意識の変化は、企業にとってもプラスの効果をもたらす可能性が高いと言えるのではないでしょうか。


[1] 厚生労働省、「令和2年度雇用均等基本調査」、2021年7月30日
[2] 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2021年)」、2021年8月16日
[3] 厚生労働省、「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会報告書」、2015年8月7日
[4] 長沼裕介、中村かおり、高村静、石田絢子、「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」、New ESRI Working Paper No.39、2017年3月

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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