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  • 生活必需品の値上げとアフターコロナへの課題とは~景気のミカタ~

2023.04.21

個人消費関連が上向くなかで生活必需品の価格上昇の影響は!?

今回の景気のミカタは、4カ月ぶりに改善した国内景気において、個人消費関連が上向くなかで生活必需品の価格上昇への対処について焦点をあてています。

2023年3月の国内景気は4カ月ぶりに改善、個人消費関連が押し上げ

図表1
2023年3月の国内景気は、新型コロナの感染者数の落ち着きやマスク着用ルールの緩和にともない消費者のマインドが明るくなるなど、アフターコロナに向けた動きが加速したこともあり、4カ月ぶりに改善しました。帝国データバンクが毎月算出している国内企業の景気判断を総合した指標である景気DI[1][2]は、2月から1.8ポイント増加し43.9へと上昇しました(図表1)。1.8ポイントという増加幅は、緊急事態宣言がすべての地域で解除された2021年3月(2.2ポイント増)以来2年ぶりの大きさでした。

特に、新型コロナ流行時の年度末と異なり、旺盛な旅行需要や卒業・送別会にともなう消費活動が目立ち、季節需要も含めて個人消費関連を中心に幅広く景況感が上向きました。なかでも、3月は小売業の改善が顕著でした。
アパレル関連を表す「繊維・繊維製品・服飾品小売」の景気DIは、人出の回復により前月比4.0ポイント増と大きく改善しています。また、「マスク生活が緩和され、化粧品需要が高まってきた」(化粧品小売)とあるように「医薬品・日用雑貨品小売」(同4.4ポイント増)が2カ月連続の改善となったほか、引っ越しシーズンを迎えて「家具類小売」(同6.2ポイント増)も大きく上向きました。

さらに「飲食料品小売」(同2.1ポイント増)や総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同2.6ポイント増)は、それぞれ2ポイント以上の改善を示しています。

生活必需品の価格上昇、価格転嫁が進むものの買い控えの心配も

図表2
しかし一方で、価格高騰による買い控えを懸念する声も根強くあるのが現状です。企業の商品・サービスの販売単価の変化を示す販売単価DI[3]をみると、「各種商品小売」(66.1)、「飲食店」(64.2)、「飲食料品小売」(64.1)、インフラ関連を含む「電気・ガス・熱供給」(62.1)が60台となるなど、生活に関連する業種で大幅な上昇がみられています(図表2)。

実際に、企業からは家計負担増の影響に関して、「生活用品や食料品全体の値上げにより、客数だけでなく客単価や購買点数などの減少が見受けられる」(食肉小売)や「日常生活に必要な食品や、水道光熱費の上昇で嗜好品まで消費が回りにくくなってきている」(菓子小売)、「生活必需品の価格高騰と自社が扱う商品の価格高騰により、顧客の購買意欲が低下している」(自転車小売)といった声が寄せられています。

帝国データバンクの調査によると、2022年度の「物価高倒産」は463件判明し、前年度の136件から3.4倍に増加、初の400件超えとなりました。そのなかでも、価格転嫁を進めることが叶わなかった「価格転嫁難」倒産は、少なくとも47件確認されています。

生活必需品の価格高騰にともなう幅広い商品・サービスへの買い控えによる個人消費への悪影響が懸念される一方、新型コロナ禍で経営体力を消耗し最後の追い打ちとして物価高の影響を受けて事業継続を“あきらめる”企業もみられます。

物価が継続的に上昇するなかでは、価格転嫁率を高めるとともに、賃上げによる消費者の購買力を上昇させることが、今後の日本経済の成長にとって解決すべき最も重要な課題と言えるでしょう。


[1] 帝国データバンク「TDB景気動向調査」(2023年4月5日発表)
[2] 景気DIは、0~100の値をとり50を境にそれより上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。
[3] 販売単価について、前年同月と比べて「非常に上昇した」から「非常に低下した」までの7段階で尋ねている。販売単価DIは、0~100の値をとり50より上であれば販売単価が前年同月より「上昇」、下であれば「低下」していることを表す。
[4] 帝国データバンク「「物価高倒産」動向調査(2022年度)」(2023年4月10日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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