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  • 人手不足をもたらす長期的背景とスムーズな世代交代とは~景気のミカタ~

2023.07.21

社長の平均年齢は32年連続で上昇、スムーズな事業承継が大きな経営課題

今回の景気のミカタは、人手不足が人口動態からも長期化する背景となっていることを踏まえながら、社長年齢の推移とともにスムーズな世代交代について焦点をあてています。

人口動態から人手不足が長期化する可能性

図表1
2023年4月26日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は2070年までの「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を発表しました[1]。結果をみると、総人口は50年後(2070年)に現在(2020年1億2,615万人)の7割となる8,700万人へと約3,915万人減少する予測になっています(出生中位・死亡中位推計)。

とりわけ、現役世代である15歳~64歳人口は2,974万人と39.6%減少する見通しです。これは、ピークだった1995年から2020年への1年当たり平均減少率(0.6%)よりも早い、平均1.0%というスピードで減少していくことになります。

少子高齢化が進む日本において、現役世代の減少は経済活動においてもさまざまな影響を及ぼすことになり、すでに人手不足という形で顕在化しています。帝国データバンクの調査[2]によると、正社員の人手が不足していると感じている企業の割合は50.2%と9カ月連続で半数を超えているほか、非正社員についても企業の3割近くにのぼっています(図表1)。

ポストコロナに向けた動きが本格化するなか、企業の人手不足感は高止まりの状態にあります。さらに人口動態からみた構造的要因から人手不足は長期化する可能性も高く、これらを前提とした採用活動や人材育成に対処する必要があるでしょう。

社長の平均年齢は1990年から6.4歳上昇、時間的余裕を持ったバトンタッチも

図表2
一方で、日本企業が抱える重要な経営課題にあげられる後継者不足にも重大な影響を及ぼしかねません。後継者の不在率は減少傾向で推移するなど明るい材料もみられますが、2022年度の「後継者難倒産」は過去最多の487件を数えるなど、足下ではすでに経営リスクとして顕在化しています。

帝国データバンクの調査[3]によると、2022年時点の社長の平均年齢は60.4歳であり、前年を0.1歳上回りました(図表2)。しかし、1990年以降32年連続の上昇で過去最高を更新、当時より平均年齢が6.4歳高くなっています。50歳以上で全体の約8割を占めており、とりわけ社長の4人に1人が70歳以上の高齢層で構成されていることが分かりました。

業種別にみると、いわゆる“IT企業”が主に分類され若手起業家が多い「パッケージソフトウェア」が56.1歳となり、全体(60.4歳)を大きく下回っています。

ただし、日本の全人口の平均年齢は、1990年の37.6歳から2022年の48.2歳へと10.6歳上昇しています(図表2)。そのため、1990年に社長の平均年齢と全人口の平均年齢は16.4歳の差がありましたが、2022年には12.2歳へと縮まっています。

社会全体の高齢化スピードと比べると社長年齢の上昇は緩やかであり、少しずつ世代交代も進んでいると言えるのではないでしょうか。こうしたなかで、重要な経営課題である事業承継をスムーズに実現するためには早期の着手は欠かせません。次世代へのバトンタッチの時期を見据えながら、時間的余裕を持った事業承継を進める必要があるでしょう。


[1] 国立社会保障・人口問題研究所、「日本の将来推計人口(令和5年推計)」、2023年4月26日

[2] 帝国データバンク「TDB景気動向調査」の各月調査結果より

[3] 帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2022年)」(2023年6月15日発表)
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(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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