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  • 脱炭素化に直面するガソリンスタンド業界~景気のミカタ~

2023.09.22

脱炭素社会に向けた動きが加速するなかでガソリンスタンドの打つ手は・・・

今回の景気のミカタは、ガソリンの販売価格が大きく上昇するなかで、買い控えや自動車の利用を控える動きに直面するガソリンスタンドの景況感について焦点をあてています。

ガソリンの販売価格が再び上昇、ガソリン補助金は12月末まで延長

図表1
ガソリンの全国平均価格が高値で推移しています。
2023年9月11日時点でレギュラーガソリンの小売価格は1リットル当たり184.8円を付けました(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」2023年9月13日公表)。16週連続で値上がりし過去最高値(186.5円)を更新した9月4日時点と比べるとわずかに値下がりしましたが、依然として180円を超える高値での推移が続いています。

また、軽油の小売価格は同165.8円で17週ぶりの値下がりとなりました。しかし、引き続き高水準となっており、バスやトラック、ダンプカーなど、ディーゼルエンジンを搭載した軽油を燃料とする自動車を使用する運送業への負担は高まったままです。

原油の輸入価格は通関ベースで見ると、2022年に急上昇しました(図表1)。そのため、政府は新型コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」(2022年4月閣議決定)に基づいて燃料油価格激変緩和補助金(以下、ガソリン補助金)を実施し、ガソリン・軽油・灯油・重油・航空機燃料の価格上昇を抑制してきたのが現状です。その後、原油価格(ドバイ原油)の落ち着きや、急速な円安からの是正などもあり、ガソリン補助金の上限額を徐々に縮小、2023年に入ってガソリン価格は小康状態が続いていました。しかし、再び円安が進むなかで、ガソリン等の小売価格が急激に上昇してきたのです。

こうした状況を踏まえて、政府は同年9月末に期限を迎える予定だったガソリン補助金について、年末まで延長する方針を決定しました。その結果、今後のガソリン価格は幾分抑えられる見通しですが、経済活動や日常生活に欠かせないだけに、これからの動向に注目が集まります。

ガソリンスタンドの景気DIが3カ月連続で低下、生き残りに向けた新たな取り組みも

図表2
ガソリンや軽油など、燃料価格の上昇はガソリンスタンドの景況感にも大きな影響を与えています。帝国データバンクの調査[1][2]によると、ガソリンスタンドの景気DIは2023年8月に34.7となり、前月から1.2ポイント減少、景況感は3カ月連続で悪化していました(図表2)。

企業からも、
・ガソリン価格高騰で販売数量が落ち込んでいる(燃料小売)
・新型コロナ後、需要は徐々に回復してきている。しかしながら、原油高騰と補助金削減で仕切り価格が急激に上昇している。今後、冬を迎えて、ガソリンや灯油の節約志向が広まり、再び需要が下がっていきそう(ガソリンスタンド)
・ガソリン価格高騰による買い控えや車の使用を控える動きもあり、出荷が減少している(ガソリンスタンド)
といった声が寄せられています。

ガソリンスタンドの景気DIを全産業の景気DIと比較すると、新型コロナ前、コロナ禍、コロナ後において、全産業を下回る状態が続いていました。そして、6月以降はその幅が拡大しています。ガソリンスタンド業界は、脱炭素社会の実現に向けたEV(電気自動車)の普及拡大や人口減少にともなう需要減退など、さらなる課題に直面しています。

一方で、宅配荷物のラストワンマイルの配送拠点化や地元農家との連携サービスなど、これまでにないサービスを提供することで生き残りの道を探ろうとする動きもみられます。産業構造が大きく変わろうとするなかで、ガソリンスタンド業界の先行きに注目が集まっています。

[1] 帝国データバンク「TDB景気動向調査」
[2] 帝国データバンク「ガソリンスタンド業界の景況感に関する動向調査」、2023年9月19日発表

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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