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2023.10.13

TDB特別企画レポート|旬の話題を掘り下げてお届け

企業の65.1%が順調に対応も、
「懸念」ありが9割

~懸念事項、「業務負担の増加」が71.5%でトップ~
インボイス制度(適格請求書等保存方式)が10月1日にスタートした。

制度の導入にあたって、消費税の仕入税額控除に必要な適格請求書を交付するためには、適格請求書発行事業者の登録を行い課税事業者になる必要がある。そこで問題となったのが、これまで消費税の申告・納付が免除されていた経営規模が小さい事業者やフリーランスなどの免税事業者の動向である。インボイスを発行できない事業者との取り引きは最終的に税負担が増すため、事業者登録を要請されることもあった。また、課税事業者の経理事務も負担が大幅に増すことが予想され、インボイスへの対応にともなう企業の混乱が一部で報じられてきた。

そこで帝国データバンクは、制度スタートから間もないタイミングで、インボイス制度への対応状況および懸念事項について企業へアンケートを行った。

※アンケート期間は2023年10月6日~11日、有効回答企業数は1,494社(インターネット調査)

アンケート結果(要旨)
1.インボイス制度に「順調に対応できている」企業は3社に2社(65.1%)。他方、「対応がやや遅れている」は3割

2.制度の導入によって、現在または今後に「懸念事項あり」の企業は9割にのぼる

3.懸念事項は、「業務負担の増加」が7割でトップ。次いで「社内での理解・連携不足」と「仕入先への対応」が続く

企業の3社に2社がインボイス制度に「順調に対応」、「やや遅れ」は3割

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が、スタートして間もない時点で、自社の対応状況を尋ねたところ、65.1%が「順調に対応できている」と回答し、企業の3社に2社が順調にスタートを切っていることが分かった。一方で「対応がやや遅れている」は28.5%、「対応が大幅に遅れている」は3.1%だった。

「社員や取引先へ早めに対処していて、何とかスタートできた」(機械製造)とする企業の声がある一方で、「インボイスの申請はしたけれども、番号の連絡等がない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)「振込手数料など、取り扱いについて手探り状態のものが多い」(運輸・倉庫)といった声が聞かれた。

規模別にみると、「順調に対応できている」企業の割合は「大企業」が71.5%に対し「中小企業」は64.2%、「対応がやや遅れている」においては「大企業」24.4%に対し「中小企業」29.1%であった。「システム変更にお金をかけられない」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)「仕入税額控除に対するルールが細かい。免税事業者対応の税区分など処理内容が増え、少ない人員で対処するには限界がある」(飲食料品・飼料製造)と、「大企業」に比べ「中小企業」で対応が遅れている様子がうかがえた。

9割の企業で制度導入にともなう「懸念事項あり」、とりわけ「業務負担の増加」が7割でトップ

インボイス制度の導入による懸念事項(現在/今後)について尋ねたところ、「懸念事項あり」の企業は91.0%と9割にのぼった。「懸念事項なし」は6.0%、「分からない」は2.9%だった。

「社内周知に力を入れてきたが、費用の都合上、システムで対応できない部分もあり運用面での不安が残るうえ、大手の販売先でも対応がギリギリまで分からない先もあったため、今後トラブルが起きないかなど、とにかく不安が多い」(機械・器具卸売))「準備は進めてきたが、後々不備が発覚するかもしれないと不安」(機械製造)と、準備を進めてスタートを切っていても、不安を抱える企業は多い。
懸念事項の内容については、「業務負担の増加(他業務への影響含む)」が71.5%で7割となり、最も高くなった。次いで「社内での理解・連携不足」(51.0%)、「仕入先への対応」(50.1%)が5割台で続いた。そのほか、「請求書の受領時のミス」(36.1%)などが上位にあがった。「作業時間が大幅に増加し、残業が増えてスタッフが疲弊している」(飲食料品小売)「仕入先などのインボイスの確認、免税事業者への対応でこれからが大変。業務量は増加する」(金融)と、事務負担の増大などに戸惑う声が聞かれた。

まとめ

本アンケートの結果、10月1日から始まったインボイス制度へ順調に対応できていると回答した企業は65.1%となり、概ね順調だということが分かった。しかし、インボイス制度の導入に懸念を抱えている企業は9割にのぼり、現在や先行きについて多くの企業で不安を抱えている結果となった。これまでとは異なる方式で行われるため経理事務の負担が大幅に増すという回答が最も多かった。
公正取引委員会は、今回の制度導入で大きな影響を受ける免税事業者に対し、課税事業所が一方的な取引価格の引き下げや取引中止などをした場合は独占禁止法違反の恐れがあると注意を促しているものの、取り引きをどう見直すかについて困惑する様子もうかがえた。

2024年1月からは新たに改正電子帳簿保存法の対応も必要になるため、事務の負担が重くなるとも言われ、インボイス制度が定着するには今しばらく時間を要するであろう。そのほか、インボイス制度に対応するなかで企業の不安や混乱が深まるケースが出てくることも十分に予想され、課題解決に向けたサポートに加え、デジタル化の推進につながる仕組みづくりが急がれる。

企業からのコメント

●インボイスの番号を取得した旨の通知はもらっているものの、9月の請求書は従来のままで、10月になって実際に受領してみないとどのように記載されているかが分からない仕入先もあり、問題が出てくるのはもう少し先の事かと思う
(建材・家具、窯業・土石製品卸売)
●インボイスの発行形式や対応が各企業で異なり、確認や保存の方法で業務負担が増す。社員のインボイス制度の理解度がまだ低い
(化学品卸売)
●領収書へ登録番号の記載確認、および記載漏れがある場合の先方確認、従業員への周知徹底といった業務負担が増えることで、通常業務が遅れて残業になり人件費が増える
(娯楽サービス)
●仕入先からは振込手数料を支払者負担としてほしいと依頼が殺到している。しかし、販売先からは従来通り振込手数料を売り手負担としてほしいと依頼されている
(機械製造)
●現場などでどうしても免税事業者にお願いしなければ進まない工事もあり、取り引きは今まで通りする方針
(建設)
●免税事業者の仕入先のなかには、このタイミングで廃業を決意したところもあり残念
(繊維・繊維製品・服飾品卸売)
●とりあえず請求書に番号を記載しているだけで、その他に何をすれば良いのか分からない
(専門サービス)
●ややこしく分かりにくい。消費税が一律8%であれば分かりやすく、そもそも必要ない制度
(建設)
●免税事業者の経過措置について間違いないか懸念がある。免税事業者をなくし一律の消費税にするのが良い
(機械製造)

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