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  • 2024年の景気、賃上げの継続が最大のポイントに~景気のミカタ~

2023.12.22

2024年の景気回復は個人消費の改善にある

今回の景気のミカタは、2024年の景気回復のカギが個人消費の改善にあることを捉えつつ、最も重要なポイントが継続的な賃上げであることに焦点をあてています。

個人消費関連が伸び悩み、一方で宿泊業や飲食店ではインバウンドの恩恵も

図表1
日本のGDPの5割超を占める個人消費が伸び悩んでいます。

内閣府が発表した四半期別GDP速報(2次速報)によると、実質個人消費は2023年4~6月期、7~9月期と2四半期連続で前の期と比べてマイナスとなりました。2四半期連続で悪化するのは、2018年10~12月期から2019年1~3月期以来のことです。

個人消費の伸び悩みは、企業の景況感にも表れています。帝国データバンクが「TDB景気動向調査」[1]で算出している個人消費DIは、マスクの着用が各個人で判断されるようになった2023年3月に急上昇して以降、ジリジリと鈍化している様子がうかがえます(図表1)。ただし、個人向けサービス業は、インバウンド需要が活発なこともあり、旅館・ホテルや飲食店をはじめ9カ月連続で判断の分かれ目となる50を上回る水準で推移していました。

企業に迫りくる賃上げの波、ベアか賞与か選択のとき

図表2
個人消費が伸びない背景として、最大の要因は実質賃金が19カ月連続で減少していることと言えるでしょう。厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」(速報、従業員5人以上の事業所。2023年12月8日公表)によると、10月の物価を考慮した一人当たりの実質賃金は前年同月比で2.3%減少しました。食品や電気料金など生活必需品の値上げを含め物価高が続くなかで、賃金上昇がそれに追いついていない状況です。10月からは過去最大の上げ幅となった最低賃金が適用されていますが、インフレ率とのギャップは依然として大きなままです。

明るい話題としては、名目賃金が22カ月連続で増加していることでしょう。同調査によると、一人当たりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の27万9,172円となっています。そのうち、基本給にあたる所定内給与は同1.4%増となっており、賃上げの効果がある程度表れている結果と言えるのではないでしょうか。

また、冬のボーナスも昨年より一人当たりの支給額が増加した企業は24.1%と4社に1社となっています[2]。2022年の冬の一人当たりボーナス支給額が前年より増加したのが5社に1社でしたので、冬季賞与の状況は少しずつ改善していると捉えられるでしょう。賞与を増やす企業からは「受注残はバブル期以上」(鉄骨工事)や「観光客およびオフィス勤務の回復」(コンビニエンスストア)、「円安によるインバウンド需要の拡大」(旅館)などの意見が聞かれ、観光産業を中心に、少しずつボーナスを支給する企業は増えています。一方で、小規模企業が多く集積するアパレル小売や、人手不足が深刻な飲食店などでは、引き続きボーナスを支給しない企業の割合が高水準で推移しているのも現状です。

2024年の国内景気が回復に向かうかどうかは、個人消費の動向が大きなカギを握っています。同時に、人手不足が長期化するなかで、2024年問題への対応なども喫緊の課題です。自社における総人件費の増加の配分をベースアップとするか賞与の増額とするか、各社の選択が迫られています。2024年は、労働者が賃金の上昇を実感し、個人消費の回復を通じて経済が好循環のプロセスに乗るためにも、賃上げを継続的に行うことが最大の焦点になってくるでしょう。


[1] 帝国データバンク「TDB景気動向調査2023年11月」(2023年12月5日発表)
[2] 帝国データバンク「2023年冬季賞与の動向調査」(2023年12月6日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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