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  • 倒産形態の話 ~倒産の基礎・2~

2013.11.22

[企業審査人シリーズvol.9] 

「倒産の形態が6つあるってことは、審査のプロとして知っておくべきね。次の私のレクチャーの前にテストするから、覚えておくのね」そう言って笑う中谷に、青山はしまった、という顔をした。気安く聞いたのが間違いだったか。学生時代は一夜漬けが得意だった青山だが、一夜漬けの記憶は三日で消失することを自分でもよく知っている。
 「名前だけじゃ覚えられないので、中身についても詳しく知っておきたいんですが・・・」立ち直りが早いのも青山のいいところである。
 「そうね。倒産の形態は倒産する側の経営者の置かれた状況と意志によって変わってくるんだけど・・・」中谷は学校の先生のように慣れた調子で続けた。
 「まず数として一番多いのはどれなんでしょう?」口を挟んだ青山に、中谷は即答する。
 「任意整理は正確な数の把握が難しいから何とも言えないけど、法的整理で一番多いのは破産で、圧倒的に多いわ。直近の2013年度上半期の速報でも95%弱は破産だったわね」こうなってくると青山の質問もテンポが上がる。
 「でも倒産と言ってよく聞くのは会社更生法や民事再生法ですよね」そう聞いた青山に、中谷も心地よさそうに答えた。
 「そうね。それは有名な会社の倒産がそういう形態が多いからだわ。小さな会社は圧倒的に破産が多いのよ。破産にも申し立てる人によって自己破産・準自己破産・第三者破産とあるけど、裁判所で破産手続き開始決定を受けると、倒産会社の財産を破産管財人が換金して債権者に分配するの」
 「人生ゲームを思い出しますね」青山も調子に乗ってきた。

倒産形態の数的分布

 中谷が説明したように、法的整理の大半は破産です。辞書に「財産のすべてを失うこと」とあるように、基本的に保有していた財産は、関係者の生存に最低限必要なものを除いて管財人により管理され、換金されて優先順位に沿って債権者に配当されます。この場合は当然ながら事業継続は困難になるため、こうした倒産形態を「清算型」と呼びます。
 「清算型」の法的整理としては「特別清算」がありますが、これは会社が解散していることが前提となり、大会社の不採算子会社などでこの形態で清算されることがよくあります。一方で、前回中谷が「営業できなくなったら倒産なの?」と青山に投げかけたように、会社を畳まずに再建の道に進む倒産もあります。これは「再建型」の倒産と言われ、法的整理で言えば「会社更生法」「民事再生法」がこれにあたります。ちなみに任意整理は数の把握が難しいところですが、銀行取引停止処分を受けた場合、手形取引なく会社を建て直すことは困難であることが多く、多くは清算に向かいます。内整理についても、その名前のとおり、整理・清算に向かうものが大半と言えます。

会社更生法と民事再生法

 再建型法的整理のこの2つは、細かくは法的な手続きで異なる部分がありますが、会社更生法は歴史が古く、大企業の倒産において多用されてきました。手続きが厳正・厳格であることを特徴としており、申請時点の経営者が退任することを原則としてきたことも特徴となっていました。
 一方で民事再生法の歴史は浅く、和議法に代わって2000年4月に施行されています。バブル崩壊の爪痕が残る時期に倒産法制の見直しとして施行され、株式会社のみならずすべての法人・個人に適用できるスキームとしてスタートしました。経営破綻が深刻化する前に早期再建を図ることをねらいとしており、会社更生法と異なり申し立て後も経営陣が残ることができるという特徴もありました。このため施行当初は「民事再生法は倒産ではない」という誤った認識もあり、大丈夫だと思っていた会社の経営者が突如として申請を行い、債権者を慌てさせた場面もありました。その後、2008年12月に会社更生法についても旧経営陣が一定の要件を満たした場合に会社に残り、経営に関与する「DIP型」が認められ、半導体のエルピーダメモリが2012年に申請したことは記憶に新しいところです。
 ただ、件数としては負債額が一定以上の倒産について会社更生法が年に数件に対して民事再生法は年に数十件と、民事再生法が多く用いられる傾向が続いています。

 次回は、こうした倒産形態が審査業務にどう関係してくるのかというところに触れます。

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