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  • 粉飾決算~報告書の読み解き方-30~

2015.02.13

[企業審査人シリーズvol.71]

キャッシュフローの話が終わったところで、青山が小滝に質問をした。
 「今日は決算書の話をうかがってきましたけど、決算書の難しいところは、粉飾されていることもあるからですよね。小滝さんたちは、粉飾決算についてはどのように扱っているのですか?」
 「私たちは調査員が入手した決算書をデータベースに収録していく部署にいるので、その決算書が粉飾かどうか、という問題には直接的には対処できません。ただ、倒産した後に実は粉飾決算だったとか、二通りの決算書を作成しているといった情報に基づいて、粉飾したと見られる決算書を実例として持っています」
 「粉飾決算には、いくつかパターンがあるのですよね?」
 「そうです。基本な手口は、資産の過大計上・負債の過少計上・売上の過大計上・費用の過少計上という4つですが、何をどの程度粉飾するのかは、さまざまです。以前に取込詐欺業者の決算書を見たことがありますが、この場合はすべてが粉飾なので、勘定科目がシンプルで、売上や利益が悪すぎず良すぎず、いい具合になっているのが印象的でした」
 「多い手口というのはあるんでしょうか?」と青山が聞くと、小滝は横田に救いを求める目を向けた。
 「実態の全体像が見えない話なので、あくまで経験上のことですけど、売上を水増しするとかなり大がかりなことになるので、在庫や売上債権の水増しといった小さなものが多いんじゃないでしょうか。在庫を水増ししたらどうなるか、青山さんはご存知ですよね?」
 「ええっと・・・?」と、青山は今度は江戸前お兄さんの質問に言葉が詰まった。 
 「損益計算書における原価計算は、期初の在庫に期中の仕入れを足して、期末に残った在庫を引いて計算しますよね。期末の在庫を実際より多いことにすると、最後に引く期末の在庫が増えて、その期の原価が減って利益が増える計算になります。期間損益を良く見せるための、初歩的な手口ですよ」
 「なるほど。でも、そうすると貸借対照表の在庫も実際よりも増えてしまいますね」
 「そうです。だから、売上債権回転期間が長い場合や棚卸資産回転期間が長い場合は、粉飾でなくてもよくない徴候ですが、粉飾を疑う余地も出てくるわけです」
 「わかりました。ちなみに、横田さんは調査をしていて、『これは粉飾だな』とわかることはないんですか?」
 「粉飾決算の断定はなかなか難しいですよ。決算書の中身の実態を見ているわけではありませんからね。ただ、私たちは調査の過程で『決算書が2通り存在している』とか、『相手によって公表している売上高が違う』といった場面や情報に遭遇することがあります。入手した決算書が明らかに粉飾だと判断できる場合は、その決算書を添付せずに報告することもありますし、あえて添付して、その内容の不自然さを本文で伝えることもあります」
 「決算書を複数作るケースがある、というのは僕も聞いたことがあります」
 「そうです。銀行用とか調査会社用とか、あるいは業者登録用とか。ただ、税務署に出す決算書は粉飾しづらいので、気になる場合は税務申告書を見せていただいて、そこに添付された決算書を入手できるのが一番です。まあ、税務申告書も税務署印が押してなかったり、税務署印を偽造するといった手の込んだことをしていたりするケースもあるようですが。粉飾決算については、うちで実例を紹介するセミナーをやっているので、青山さんも来てください。小滝さんたちがやっていますから」と横田が言うと、小滝がペコリと頭を下げた。 

粉飾の断定は難しい

 粉飾決算を見抜くことは、企業審査に携わる人にとって魅力的なスキルです。しかし粉飾決といっても程度や方法は実にさまざまであり、「疑わしい」と思うものには遭遇しても、その断定はとても難しいと言えます。
 実体がない収益・費用や資産を計上するのがいわゆる「粉飾」ですが、本来行うべき減価償却をせずに利益を出したり、節税対策を凝らしてあの手この手で費用計上したりといった「粉飾の手前」の類はいくらでもあります。
 「粉飾のない決算書から企業の異常を見抜くこと」と「粉飾決算を見抜くこと」は、まったく異なることではなく、ひとつの線上にあるのです。 

売上債権・在庫・「その他」科目

 そういう意味で、通常の決算書分析でチェックポイントとなる「売上債権に不良債権が含まれていないか」「在庫に不良在庫が含まれていないか」「その他○○とか雑○○とか具体的な内容がイメージしづらい科目に多額の計上がないか」といったことは、粉飾を見抜く上でも重要なポイントになります。
 「売上債権や在庫が多すぎるのは、不良資産があるからではないか」という問いは、「水増しされているからではないか」という問いにもつながるわけです。こうした異常を見つけたときに重要なことは、その推移と理由の確認、そして現地での確認です。
 売上債権や在庫の増加は、売上が増えている局面では当然ですが、売上が減っている場合は必然性ではない何か個別の理由がありますから、直接確認してみるべきです。自社への発注状況と照合して確認できるかもしれませんし、現地を訪問できる場合は、出入りする倉庫の状態などで実体をチェックしましょう。 

調査報告書での扱い

 われわれでも、入手した決算書を粉飾決算書と扱うケースはさほど多くありません。また仮に、調査員がそう見立てたとしても、報告書に直接的にそうした事実を書くことは難しいと言えます。
 したがって、添付した決算書に粉飾の疑いがある場合、調査員は間接的な表現を報告書に入れたり、それを評点に反映したりしています。気になる表現がある場合は、営業担当に問い合わせてください。また、自社で入手した決算書と報告書の決算書が異なる、という場合も、お問い合わせをいただくと、以後の報告がより実態に迫るものになります。

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