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2022.12.20

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」 Vol.39

決算書を読む上で、必ず注意を払わなければならない「粉飾」についてです。粉飾のよくあるパターンを把握して、今までに「財務会計のイロハのイ」で学んだ知識をアウトプットしていきましょう。
先輩社員「初心者向け連続講座『イロハのイ』もそろそろシリーズフィナーレです。少々難しい話もあったかと思いますが、ここまでよく付いてきてくれましたね」

新入社員「決算書はいくら学んでも、さらに深い論点が出てきて尻込みしそうになることもありましたが、その面白さも知ることができました。バラバラにみていたそれぞれの帳票も、つながりがあることが実感できるようになってきました」

先輩社員「確かに漢字と数字の羅列で苦手意識が強い人も少なくないでしょう。でもビジネスの現場では多くのシーンで求められる知識ですからね。今日は、改めて決算書を見るうえでは避けては通れない『粉飾』を取り上げたいと思います」

新入社員「人が作るものですから、粉飾を全くなくすのは難しいんでしょうね。これまでも、棚卸資産や売上債権が多い時は注意すべし、とお話がありましたよね」

先輩社員「そうです。よくある粉飾のパターンとして、損益計算書で架空売上を計上すると、結局は架空の売掛金といった売上債権が貸借対照表上で増えていきます。また、原価を過少計上しようとして期末の棚卸資産を増やす手法もよくあるケースです」

新入社員「期末の棚卸資産を増やす理由が、レクチャーを聞き始める前はよくわかりませんでしたが、売上に対応する経費をしっかり計算するために、売れていない商品や使っていない材料を原価計算上、差し引く仕組みを悪用しているんですよね」

先輩社員「その通りです。ただ、どの会社も本当は粉飾なんてしたくないはずです。業績が落ち込んだことを気にして、初めはちょっとした軽い気持ちで粉飾をしてしまうのかもしれませんが、それが解消せず積もり積もっていくと、決算書に異常値としてあらわれてくるわけです」

新入社員「異常値の判定としては、業界平均などと比べるのが良いんですよね」

先輩社員「できれば、そのような情報を入手してほしいですね。また、回転期間といった月商比の考え方は特に有用です。これも繰り返しの紹介にはなりますが、例えば現預金の水準が大きく月商を下回っているケースや、非常に借入金が多いケースなどは、粉飾に限らずその背景に注意すべきでしょう」

新入社員「他に着目すべき科目は何かありますか?」

先輩社員「売上債権や棚卸資産に異常が見当たらなくても、科目振替をして誤魔化そうとするケースもあります。資産科目の中で『仮払金』や『その他の資産』といった、その勘定科目名のみでは中身がわからない科目があれば気を付けましょう。過年度からどんどん増えていれば、やはり怪しいですよね」

新入社員「以前見た倒産したケースでは、『貸付金』が多額に計上されていたのを思い出しました。自社にお金がないのに、社外流出が多いのは、やはりおかしいですよね?」

先輩社員「グループ会社で経営している場合、関連会社間で資金を融通し合うキャッシュマネジメントシステムを導入していて『貸付金』が登場するケースもあります。そのため一概に悪いとは言えませんが、単独企業のみで判断せず、極力グループ会社の財政状態もチェックしておきたいですね。もちろん、決算書の情報だけに傾注しすぎず、グループ会社で何か悪い風評が立っていないか、といったところから定性情報収集も重要です」

新入社員「決算書の定量情報と、そこには載ってこない定性情報。両方とも大切だという事は、特に決算書の知識が付いてくると感じるところです」

先輩社員「決算書がわかってくると、その弱点も知ることになりますからね。粉飾しそうな会社なのか、という目線も大切です。このあたりは、営業担当に違和感がないか、話を聞くことも時に効果的です」

新入社員「もしかしたら、私も将来営業部で働くことがあるかもしれません。決算書とは別に気を付けるべきポイントがあれば教えてもらえますか?」

先輩社員「わかりました。次回、『ヒト・モノ・カネ』の中でも『ヒト・モノ』のチェックポイントについて紹介しましょう」

ポイントの整理

・粉飾の王道パターンとして、架空売上に対する売上債権回転期間の長期化、原価の過少計上に対する棚卸資産回転期間の長期化が挙げられる。
・業界平均や月商比を用いて、「現預金」水準のほか、「貸付金」「仮払金」「その他の資産」や、「有利子負債」のボリュームなど、バランスが極端に悪い科目がないかチェックすることも重要である。

◆関連コラム

企業審査人シリーズvol.71:粉飾決算~報告書の読み解き方-30~
信用調査報告書の決算書の取り扱い方について説明しています。粉飾についてどのように確認しているのかチェックしましょう。

企業審査人シリーズvol.147:虚飾・粉飾による倒産 ~情報交換会~
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企業審査人シリーズvol.206:見落とすべからず、粉飾の王道パターン
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