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161:青山のCF ~キャッシュフロー計算書の復習とCF分析~

2018.05.22

ウッドワーク社では今年も新人営業パーソン向けの研修が予定されている。新入社員に加え定期異動で営業部に移った総勢15名を対象とした研修である。昨年から一部の講座の講師を務める青山だが、営業部の横文字課長・八木田のリクエストにより、今年からキャッシュフロー(以下、CF)の講座も加わることになった。
この1年でかなり財務知識を蓄えた青山だが、人に教えるとなると復習が必要らしい。担当が決まるなり、経理課の木下に電話して、その日のうちに夕食を兼ねた復習レクチャーを頼んだのだった。
「木下さん、CFは調査報告書に添付されたものを見て、異常兆候の確認はしているのですが、教えるとなると少々不安なんで、今日はよろしくお願いします。まず復習ですが、CF計算書をひとことで説明するとしたら、どういう計算書だと説明できますか?」
そう言いながら、青山がメニューにある3種類のワインのうち、一番安いデキャンタを注文した。
「ひとことで説明すると、キャッシュの動きを、営業活動、投資活動、財務活動に色分けしている計算書ですね。では、ここからは私がいろいろと質問をするので、それに答えてもらう形で復習を進めましょうか」
「望むところです!」
「では、営業・投資・財務の3つの活動について、それぞれの良い状態は?」
「まず、営業CFは本業で稼いだキャッシュですので、プラスが良い状態ですよね」
「そうですね。一時的に回収や支払のタイミングのズレによってマイナスとなるケースもあるでしょうが、マイナストレンドには気をつけたいところです。投資CFはどうでしょう?」
「投資は・・・マイナス・プラスだけでは善し悪しを判断できませんね。将来につながる計画的な投資もあるし、成長期にある企業の投資CFのマイナスは規模拡大に向けた布石かもしれませんから」
「逆に投資CFが多額のプラスの場合も、キャッシュが必要な事情があって固定資産を切り売りしているというネガティブなケースがありますね。定性的な情報の収集が必要です。では、営業CFと投資CFを合算したものを何と言うでしょう?」
「そこは大丈夫ですよ、フリーCFですよね。フリーCFがマイナスなら注意せよ、と」
「そうです。フリーCFがプラスなら、たとえ投資CFがマイナスでも本業でカバーできているということですね。フリーCFが連続してマイナスのケースは要因を分析すべきです。では財務CFはどう判断していますか?」
「基本的には返済が進むマイナスが望ましいと考えられます。ただ、投資CFと同じように業容拡大期における前向きな借入増によってプラスになっていることもありますので、一概に判断できません」
「そうですね。では、財務CFには借入金以外に何が影響するでしょうか?」
「資金の調達ですから・・・増資ですか?」
「正解です。増資はそう頻繁にあるわけではありませんが、借入によるキャッシュの増加とは意味合いが異なってくるので、分析においては内訳の確認が必要です。CF、心配なさそうじゃないですか」
木下は満足そうに言うと、運ばれてきたデキャンタのワインを2人のグラスに注いだ。

「じゃあ、次はCF分析比率も説明しておきましょうか」
「分析比率・・・そこは日常的にあまり見ていないので、自信がないんですよ。営業利益率の分子部分を営業利益ではなく営業CFに変えたのがありましたね」
「キャッシュフロー・マージンですよ」
「あと、営業CFを支払利息で割る・・・そうだ、インスタント・カバレッジ・レシオ!」
「ICRですね。インスタントじゃなくて、インタレスト・カバレッジ・レシオです。借入利息の支払能力を計る指標ですが、これが1以下だと金融費用を負担しきれない、ということになります。これは簡便な計算式では(営業利益÷支払利息)で計算することもあります」
「思い出した。営業利益を営業CFに置き換えたのがCF版のICR、でしたね」
「その通り。正しくは分子の計算は(営業CF+支払利息・割引料+税金)となります。営業利益が税金支払前のため、その点を考慮するわけです。いずれにせよ、この比率が高いほど金利の支払能力があることを示しています。では、CF分析比率をもう一つ、借入の返済能力を見る指標は何だったでしょうか?」
「それはわかります。有利子負債返済能力ですね。有利子負債合計をフリーCFで割ったもので、フリーCFの何年分で返済できるかを示す指標ですね」
「そうです。ただ、フリーCFは投資額によって年ごとの変動が大きいこともあるので、経年比較でチェックしたいところです。分析指標はちょっと怪しいですが、基本はしっかり説明できそうじゃないですか」
「いい復習になりました。日常的に見ていないところはどうしても記憶が薄れていきますからね」
お墨付きをもらって安心した青山がグラスのワインをくいっと飲むと、木下が心配顔で聞いた。
「ところで青山さん、このところ歓迎会とか飲み会続きでCFが厳しいんじゃなかったですか?」
「そうなんですよ。投資CFのマイナスが続いていまして・・・今日の木下さんの財布は重いですか?」
「なるほど、飲み代は投資なんですね・・・。まさか私から財務CFを工面するつもりじゃないでしょうね?」
「いやいや、こちらから誘ったのに、さすがにそれはないですよ」と、前科のある青山が首を振った。
「そうですか。でも青山さん、レクチャー料くらいはおまかせ下さいと言ってましたが大丈夫ですか?」
「では、レクチャー料代わりのワイン代は次回に繰り越しでお願いします。僕にとっては未払の負債が増えますが、CF計算書の考えではキャッシュはプラスですから!」と青山が喜ぶと、木下が眉間に皺を寄せた。

CF計算書の見方

TDBカレッジでは2018年の1月~3月にCF計算書の見方をテーマにセミナーを開催しました。二人の会話で取り上げた各キャッシュフロー項目の良否判断は、セミナーでも説明した重要ポイントになります。補足すると、営業CFやフリーCFが2期以上連続してマイナスとなっているケースにおいては、他の財務分析指標においても異常値がないか、注意深く原因を分析する必要があります。なお、キャッシュフロー分析の基礎的な内容は、過去のカレッジコラム「13:キャッシュストック?(キャッシュフロー分析の見方)」および、「70:報告書の読み解き方-29(推定キャッシュフロー計算書)」においても取り上げていますので、あわせてご確認ください。

CF分析値の活用 

CF分析値の活用
今回取り上げたキャッシュフロー分析比率を左の通り整理しておきます。TDBでは連続2期以上の決算書を添付するケースにおいて、推定CF決算書とともに、これらのCF分析比も黒字企業の平均値である「基準比率」と「業界内ランク」といったモノサシを付す形で提供していますので、ご活用ください。

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今回の質問

【問178】次の4つの取引のうち、資産と負債が共に増加する取引はどれでしょうか?

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