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  • 企業価値とは② ~アイツのお連れに青山、困惑・不安・安堵~

2019.08.29

[企業審査人シリーズvol.192]

 青山はシンガポール帰りの大学時代の友人・伊藤と帰国祝いで飲んでいた。伊藤が業務で行っている企業価値のレクチャーを受けていた青山だったが、さっきから伊藤が時計をちらちら見ているのが気になっていた。
 「会おうと言ってきたのは伊藤だから心配するようなことではないんだが、何かこのあと予定でもあるのか?」
 「いや、そういうことじゃないんだ。俺と同じ便に乗るはずの連れが乗り遅れてな。もうじき着くはずなんだ」
 「お連れさんがいたのかよ。しかもそれは放っておいちゃいけないやつだろ」
青山はあきれ顔でエイヒレをかじる。そこへ、お土産のようなものを大量に抱えた一人の女性がやってきた。
 「あぁ、疲れた。まさかお土産のマーライオンチョコレート忘れてフライトに間に合わないとは思わなかったわ」
 「おう、早かったな。青山に紹介するよ。俺のパートナーのなぎさだ」
 「初めまして!ユニバーサル貿易の七瀬ですって、えっ!青山くんじゃない!ありえなーい!」 
驚いて大きな目をさらに大きくさせながら七瀬が言うと、目をパチクリさせ2秒ほど固まっていた青山が答える。
 「ええ・・・僕も目を疑いましたよ。七瀬さんじゃないですか。こんなところで会うとは思わなかったですね。ああそうだ、この前は手紙、ありがとうございました」
 「そうだった、届いていてよかったわ!はい、マーライオンチョコレートあげる!」
 「なんだ、二人は面識があったのか。まあ、なぎさ座りな。今企業価値について青山に話していたところだ」
伊藤は七瀬を隣に座らせると、店員を呼んで追加のオーダーをした。青山が伊藤とは大学時代に友人だったことを説明し、七瀬もようやく状況を呑み込んでふたりの真ん中に座った。
 「それにしても空港の居酒屋で企業価値とか語っているなんて、なんか気色悪いわ」
 「そんな・・・僕にとっては意外な収穫だったんですよ。事業用資産と非事業用資産に分けて企業価値を求めるなんて、貸借対照表は流動と固定で区分することしか頭になかった僕には、目からうろこでした」
 「冗談よ、冗談。でも、ということは、伊藤からは運用サイドからみた企業価値のレクチャーを受けたわけね」
 「運用サイド?確かに貸借対照表の資産を見ていたけど・・・ということは、調達サイドもあるんですか?」
 そう青山が質問しているうちにジョッキが3人の前に並び、改めて乾杯となった。
 「うむ、何度飲んでも日本のビールはうまい!しかし青山は勘がいいな。調達サイド、つまり負債と純資産を使った企業価値評価はもちろんある」
 「というか企業が株主のためのものだとしたら、企業価値と同じくらい株式価値を求めたくなるでしょ?M&Aや事業承継等ではこの株式価値を算定するために企業価値評価を行うの」
 伊藤の勤め先がユニバーサル貿易だったとはさっき知ったばかりであったが、同じ会社に勤めているとここまでテンポよく言葉が出てくるものかと、青山は相性の良さに感心してうなずくばかりであった。
 「さっき俺が話した企業価値は、事業用資産を長期的なキャッシュフロー獲得能力で評価して、非事業用資産を短期的なキャッシュフローで評価し、これらを足し合わせて出来上がるものだった。ここで株式価値を求めるなら、有利子負債分を控除することで算出することができる」
 「そうか。有利子負債は支払わなければいけない最大額がその有利子負債の額面金額だから、単純に企業価値から控除するだけで、残った部分が株式価値となるわけだな」
 「そういうことだ。話を単純化するために事業用資産はそのまま資産と言ってみたが、営業債務等の事業用債務にあたるものは控除して事業用資産としなければならないな。つまり純額の事業用資産でこの考え方は成り立つ。さて、まだ時間あるな。俺は日本酒をいただくぜ」
 注文をするとすぐに店員が一升瓶を持って現れ、マスいっぱいに注いでいった。「これだよ、これ!」と満足そうに自分の世界に行ってしまった伊藤の姿を横目に、七瀬が話し始める。
 「伊藤が説明した方法は一般的な企業価値と株式価値の算定の仕方なの。でも理論的には負債純資産でも企業価値を算定できて、銀行業などの特殊業種ではこちらを採用することも少なくないわ」
 「でも負債や純資産は資産みたいに時価評価しにくいものですよね。いったいどうやって・・・」
 「詳しい計算方法は省くけど、株式価値を直接求めちゃうの。そうすれば有利子負債と足し合わせることで企業価値が算出できちゃうわけ」
 「確かに直接的な方法ですね。二人の話で企業価値評価がおぼろげに見えてきました」
 話も一段落したところで、青山は空になったことに気づかずジョッキを咥え、ふとさっきの会話を思い出した。
 「そう言えばさっき、伊藤は七瀬さんのことパートナーって言ったよな?ということは、まさか・・・!?」
 「今頃気づいたか。意外とかわいいだろ?」と伊藤が言うと、七瀬が二人の間に手刀を入れてきた。
 「そんなわけないでしょう!伊藤と?はぁ?シンガポール研修で語学に難があって、足引っ張りまくりの伊藤のフォローしていたら、そう言われただけでしょ!ただの同期入社なだけよ!絶対にありえないわ!」
 「だそうだ青山。ふられてしまったよ。慰めておくれ!」伊藤は眉をあげ、お手上げのポーズをとると、間違って反応した店員が来てしまい、場の流れで会計となった。
短期間シンガポールにいただけなのにアクションが欧米か?という伊藤に少々戸惑い、突然の七瀬との遭遇にさらに戸惑った青山だったが、(怒るとあんな顔をするのか・・・)と七瀬の新たな一面を垣間見て、ほろ酔い気分と少々ふやけた笑顔のまま、空港を後にしたのだった。
3人が去った後、居酒屋の年配の板前がカウンターを拭きながら若い店員に聞いていた。
 「今時分、希魚(キギョ)の値段ってのは、そんなに難しい計算をするのかい」

企業価値の考え方~その2~

先の話では企業価値を、事業価値と非事業用資産の価値を足し合わせて算出しました。一方、七瀬の言った株式価値を算出する方法をとれば、有利子負債と足し合わせることで企業価値を算出することができます。銀行業等は金利が主たる原価であるため、(エンタープライズ)DCF法等の方法では企業価値を正しく測定できず、このような方法を採用することがあります。

代表的な株式価値算出方法

・事業価値と非事業価値の和から有利子負債を控除する方法
(エンタープライズ)DCF法、EBITDA倍率等を使用した類似会社比較法
・直接株式価値を算出する方法
 エクイティキャッシュフロー法、PER倍率等用いた類似会社比較法

株式価値の求め方

TDBが提供する企業価値評価サービス「Value Express」では事業価値を(エンタープライズ)DCF法で算出し、非事業用資産と見なした金融資産にて企業価値を算出します。株式価値は求めた企業価値と有利子負債から算出するため、企業価値・株式価値を簡単に求めることができるようになっています。

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